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2013年6月20日 (木)

おかえりなさい、クリス・カーター

 「マジ、アツイ!」

 昨秋の別れから8か月。6月18日、クリス・カーターが西武ドームに帰ってきた。背広姿であいさつに訪れたカーターに、キャプテンの栗山巧が、すぐさまツッコミを入れた。「これ、去年のスーツやん!」。練習前、輪になったナインがドッと沸き、誰もが笑顔になった。「タダイマ。ヨロシクオネガイシマス」。勝負服はニューヨーカー製、移動や行事の際に着用する昨季のチームスーツだった。中にはライオンズのロゴマークが入っていた。

Kata

 来日1年目の昨季は左膝痛に苦しみ、59試合の出場にとどまったが、DHや代打の切り札として勝負強さを発揮。打率2割9分4厘、4本塁打、27打点をマークした。それでも夏から秋にかけて、カーターの左膝は悪化の一途を辿っていった。グラウンドからクラブハウスへと行き来する108段の階段を上ることも、苦しそうに見えるほどだった。

 悲しいけれど、寂しいけれど、球団からの戦力外通告はやむをえなかったのだと思う。

 帰国後、カーターはグラウンドから離れた。スタンフォード大で人間生物学を専攻し、飛び級で卒業した頭脳の持ち主。仕事はすぐに見つかった。ジョージア州アトランタで、マーケティングの業務に従事することになった。

 「2ヶ月間ぐらいでしたね。1日に12時間は働いていましたよ」

 それでも、野球への情熱は消えなかった。仕事を終えると打撃練習やウエートトレに没頭した。もう一度、所沢のあの地に舞い戻りたい。ライオンズで野球がやりたいんだ-。

 オファーは日本の独立リーグから届いた。BCリーグの石川ミリオンスターズ。再度、異国の地でのチャレンジを決断した。米国に住むエミリー夫人と離れ、単身赴任になった。NPBに比べ、設備や環境が劣るのは否めない。それでもカーターは、自らを温かく迎えてくれたBC石川への感謝を、何度も口にした。

 「アウェーの球場への移動や、グラウンドの状況は確かに、NPBの方が上です。でも、選手の野球に対する思いは、独立リーグでもNPBでも変わらなかった。石川は本当に穏やかで、いいところでした」

 BC石川のトレーナーによる必死のケアもあって、左膝の状態は良くなったという。西武の鈴木球団本部長が自ら福井での試合に足を運び、状態を見定め、再獲得にGOサインを出した。

 渡辺久信監督はこう言って、カーターの復帰を歓迎した。

 「起用はDHか代打。今のチームの状況を考えたら、彼は必要な戦力だよ。外国人はこれから、競争になる」

 鈴木球団本部長の言葉は、こうだ。

 「去年よりも力強さは感じている。何かチームを変える、打線を変えるものがなくてはいけないと、私も監督も思っていた。彼の獲得は、そこからの発想だ。彼にはチームを変える力がある。とにかく、打ってもらう」

 わたしにとってもカーターと会うのは、8か月ぶりだった。夏になったら休みをとって、金沢に会いに行こうと思っていた。ファンはみんな、カーターのことを、忘れていなかった。その証拠に、BC石川での退団会見を報じた「スポーツ報知」の記事のウェブアクセス数は、サッカーなども含めたヤフー全体のスポーツニュース内で一時、1位を記録した。信じられる?

 「僕も気になって、ライオンズのニュースはチェックしていたよ。キムラは打者に転向して、ホームランを放っていたよね!投手から打者になってあんまり時間が経ってないのに、凄いよ。タカヤマさんはタイガースで活躍しているんだね!そうそう。ユーセイは本当にグレートなピッチャーになった。本当にアメイジングで、アンビリーバブルだ!」

 レギュラーシーズンが再開するあす21日のオリックス戦で、カーターは再び、西武ドームでの公式戦に臨むことになる。チームは交流戦で11勝13敗の借金2と失速した。打線は「タイムリー欠乏症」に苦しみ、競り負け、ベンチの空気が重苦しくなることも、多々あった。カーターには現状打破へ、起爆剤としての役割が求められる。それは本人も、百も承知だろう。

 「ライオンズからの再オファーは、自分の人生にとって、最もうれしい出来事の一つだった。わたしの野球人生は、ライオンズで変わった。ファンに会えるのが、オウエンダンに会えるのが、本当にうれしい。ライオンズはチャンピオンになれるチーム。先発投手がしっかりしている。100%の力を出して、全力でプレーしたい」

 ウェルカム・バック、カーター。石川の地で奮闘した日々や、金沢のファンとの出会いも、あなたの人生にとって素晴らしい財産になっていくのだろう。目標に向かって、あきらめず、全力を尽くしていけば夢は叶うのだと、あなたはわたしに教えてくれた。

 「マジアツイ」プレー、頼むぜ。

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【参考】
西武を演説で奮起させたクリス・カーター。熱パに轟く“文武両道”助っ人の咆哮(2012年8月30日「Number Web」)
http://number.bunshun.jp/articles/-/272296

また逢う日まで。GOOD-BYE、クリス・カーター(2012年11月12日「スポーツ紙バカ一代」)
http://www.mishimaga.com/spobaka/065.html

(ともに筆者は加藤)

コメント

ライオンズファンですがとても嬉しいニュースです。
昨年加藤さんのまた逢う日まで。GOOD-BYE、クリス・カーターの記事を見て、目頭が熱くなったのを覚えています。
カーター選手に熱くプレーしてもらうために大応援団の一部として応援したいです。

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