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2009年11月12日 (木)

厳格な記録員

 鹿島が8日の山形戦で相手のシュートを0本に抑える“完全試合”を達成した。野球で言う完全試合は、9回で許した走者がゼロ。サッカーでその表現が適し ているかは別にして、相手に得点機を与えなかったこと、リーグ創設17年目で初めて刻まれた記録という実現性を考慮しても、完ぺきな守備だったと言ってい いのではないか。

 それでも、記録員を務めた鹿島の大久保さん(総務部担当課長)は意外な感想を口にした。「シュート0本と打ち込んだのは初めてでしたが、仕事をこなしたという感じで」。試合後はレフェリーから公式記録にサインをもらうため、スタジアム4階から1階へと全速力で駆け下りた。感慨にふける時間も、そのつもりもなかった。

 鹿島主催試合の場合、4人で記録をつける。試合を見る担当が2人。コンピューター入力担当が2人。1人が「〇番、シュート」「〇番、ファウル」と声かけをしながら記録を積み重ねていく。シュートか否かを判断する場合、Jリーグの基準に沿う。ペナルティーエリア内、外側で違い、相手DFに当たった場合も、シュートから何メートルで当たったかでカウントするか、しないかが決まる。

 山形戦でも、1度だけシュートと数えてもおかしくないシーンがあったが、エリア内からのヘディングシュートがゴール枠から規定以上にそれたため、カウントはしなかった。クラブによってはイメージ付けや、観戦していない人に好印象を与える目的かと疑いたくなるようなシュートの「水増し」が散見される。原稿にシュート本数を記す時、記録員によっては避ける場合もある。

 大久保さんは、鹿島の前身である住友金属サッカー部に在籍し、GKを務めていた。業務では荷物の運び出しなど1分単位で時間を管理する「工程管理」についた。ともに小さなミスを許されない仕事。「典型的なA型。はっきり言って几帳面。振り返れば、自分に向いている仕事ばかりだよね」。

 鹿島の事務所内にある机は常に整理されており、社内では敬意を込めて「頑固者」「厳格な方」「融通が利かない」と言われる。GK曽ケ端は「うれしいですね」と笑い、DF岩政は「0本は失点する可能性がないので、悪い気はしないですね」と喜んだ。決して横のものを縦にしない人が、刻んだ完全試合。よく知る選手は素直に喜んだ。

 その大久保さんにも心配が1つ。「10年くらい前かな。自分が記録員になった時、Jリーグで記録員研修会をやっていたが、今は行われていません。全クラブで基準を整える意味でも、これからやっていく必要があると思う。是非、やってほしいです。統一された基準があってこそ、初めて記録と言えるものになりますから」。

 最後に記録員でもっとも大事なことを尋ねると「ニュートラルな立場」と返ってきた。「ゴールしてくれ、と思っていたら記録はつけられない」。07年のリーグ最終節清水戦。奇跡と言われる大逆転優勝を達成した時ですら「喜ぶことはできなかった。すぐに記録の確認だった」。ただ、非常階段で1階へ向かう足が軽やかになったという。

 90分間+αの間、人間であることをこらえ、迎える勝利、優勝、そして今回の完全試合。厳格な記録員は、暗い非常階段を駆け下りながら、ようやく喜びに浸れる。(鹿島担当・内田知宏)

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コメント

厳格な試合には、厳格な眼が必要だということ。
たいへん面白い記事ですね。
鹿島サポとしては嬉しい記録でしたが、
Jの質を高めるため、縁の下の質も高めていってほしいです。

今更ですが、本当に面白い記事だと思います。
こういう様々な立場から携わる方がいて、エンターテイメントは成り立つんですものね。

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