柏原に見る勝者のメンタリティー
2010年。年明け早々、日本サッカー協会の犬飼基昭会長(67)、田嶋幸三専務理事(52)をはじめ、多くの方に祝福の言葉をかけてもらった。
私事で、しかも、自慢話で大変に恐縮だが、母校の東洋大が、箱根駅伝で連覇を達成した。5区で柏原竜二(2年)が首位を奪い、往路優勝。復路は一度も首位を譲ることはなかった。約20年前、私の在籍時代と比べると雲泥の差である。1991年大会、私が3区を走った時、最下位でタスキをもらい、そのまま、最下位でタスキを渡したものだったが…。
「2日目(復路)は、ずっとトップを走っていたから大したものだ」犬飼会長の言葉に、先輩として誇らしく感じたが、同時に自分の成績を考えると本当に恐縮するばかり。「私はずっとビリを走っていました」もちろん、正直に答えました。
しょっぱい先輩ランナーとは対照的に、今の後輩たちは実に強い。特に、5区で2年連続で区間新記録を出した柏原には驚かされるばかりだ。
箱根駅伝の直前、OB会主催の激励会の時のことだ。東洋大は、前哨戦の出雲駅伝(昨年10月)は3位、全日本大学駅伝(昨年11月)は2位だった。柏原は、いずれも1区を走り、第一工大のケニア人留学生キラグ・ジュグナ(2年)に次いで区間2位だった。「日本人選手では断トツだったから良かったね」と私が言うと、彼は「2位は悔しいですよ」とポツリと話した。
この時、私は、日本代表コーチ、磐田監督を歴任した山本昌邦さん(現本紙評論家)が常々、話していることを思い出した。
「Jリーグ得点ランク日本人首位とか日本人2位とか平気で言うFWが多すぎる。中山雅史や高原直泰は、そんな情けないことを言ったことは一度もない」
09年のJ1得点王はFW前田遼一(28)=磐田=。日本人選手として7年ぶりのJ1得点王であり、それまでは得点ランクの上位は軒並み外国人FWだった。そのような状況が続いていた時、確かに山本さんが苦言を呈するコメントをする日本人FWは多く存在した。柏原に「日本人選手では断トツだったから良かったね」と言ってしまった私は、その選手たちの心境が何となく分かるが…。
「日本人首位とか小さいことを口にしなかった中山、高原は、外国人FWに競り勝って得点王になっている」と山本さんは強調する。中山、高原ともに磐田時代に得点王に輝いた。前田は、彼らのプライドを受け継いだのだろうと思う。
山本さんに柏原の発言を伝えると「いいね。そういう選手でなければ世界で戦えないんだ」と、うなずきながら話した。
競技は、まるで違うが、勝者のメンタリティーとは何か。私は、少しだけ分かった気がした。毎日、20キロも30キロも走っていた学生時代には、全く分からなかったことである。(日本サッカー協会担当・竹内 達朗)

コメント