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2009年11月29日 (日)

マウアーMVPで思い出したプライアー(第506回)

 1週間休んでいる間に、前回書いたコラムがぴったりの出来事が起こった。コメントでマウアー・ファンさんが指摘したように、元共同通信在籍でマリナーズ担当9年目のフリーライター小西慶三記者がア・リーグMVPの1位にタイガースのミゲール・カブレラ一塁手と記入。ツインズ地区優勝の立役者で2年連続首位打者のジョー・マウアー捕手が、ナ・リーグのアルバート・プホルス一塁手のような投票者全員1位の“満票受賞”を逃した。ニューヨーク・タイムズ紙のタイラー・ケプナー記者は、1位票にした理由が知りたくて、小西記者にEメールを送ったが返事が返ってこなかったという。ここはマウアー・ファンさんの言うとおり、日米メディア向けにカブレラ1位選出の理由を発信するべきである。

カブレラはリーグ4位の打率3割2分4厘(マウアーは3割6分5厘)、6位の34本塁打(同28本)、8位の103打点(同96打点)をマーク。2年前の首位打者マグリオ・オルドネス外野手の不振をカバーしてタイガース躍進の立役者でもあった。9月30日、チーム158試合時点で首位タイガースは2位ツインズに3ゲーム差を付けていた。ところが、10月3日の未明にカブレラは夫人と口論し暴力を振るった上に飲酒運転も引き起こしたことが判明。その日のホワイトソックス戦に4打数ノーヒットでチームはツインズに並ばれ、優勝決定戦で敗れた。小西記者はマウアーに2位票を投じているだけに、私の勝手な推測だが、公式戦終了を待たずに早めの投票をしたのでないだろうか。

さて、今年のマウアーの受賞理由の一つには、ア・リーグでは1980年のジョージ・ブレット三塁手(ロイヤルズ)以来という、打率、出塁率(4割4分4厘)、長打率(5割8分7厘)と3部門1位の快挙を成し遂げた事が挙げられる。WBC米国代表候補でもあったが、昨年末の腎臓手術で出場を辞退。それに加え、シーズン前に背中を痛めて4月は全休だった。しかし、5月に復帰すると月間球団新記録の32打点。6月16日には打率を4割2分9厘まで引き上げた。

主砲のジャステキン・モーノー一塁手が終盤戦列離脱したこともあって、6月19日以降は96試合連続出場し続けた。ダブルヘッダーでは通常、2試合とも捕手出場させないのが大リーグだが、9月29日タイガースとの首位攻防のダブルヘッダーでは、第2試合での捕手出場をロン・ガーデンハイアー監督が打診してきた際にも「私がマスクをかぶります」と出場を直訴している。もし、私に投票権があれば、地区優勝を逃したとしてもマウアーに入れていた。

私が初めてマウアーの名前を知ったのはイチロー取材で米国を訪れていた2001年6月6日付けのUSAトゥデー紙のスポーツ面トップの写真だった。半分が野球、半分がフットボールのユニホームを着けたマウアーの姿が脳裏に焼き付いている。ツインズの地元クレティン・ダーラム・ホール髙で、野球だけでなくバスケットボール、そしてアメリカン・フットボールのクォーターバックとして活躍。2000年にはフットボールでもミネソタ州王者に導き、野球とともにフットボールでも全米最優秀選手に選ばれた。その素質に注目した名門フロリダ州立大の奨学生として勧誘、入学が内定していた。しかし、ドラフト1位の指名権を持っていたツインズが、南カリフォルニア大のエース右腕だったマーク・プライアー投手が、総額で1000万ドルを越える法外な要求(代理人はスコット・ボラス)をしていたと言われ、獲得を断念、地元の天才打者マウアーを指名した。

ドラフト指名選手では当時歴代2位となる契約金515万ドルで入団したマウアーは最初の3年間はマイナー暮らしだったが2004年に昇格。今や大リーグを代表するスーパースターに成長した。一方のプライアーは指名順2位のカブスと当時の新記録である総額1050万ドルでプロ入り。2年後の2003年に18勝し地区優勝に貢献したものの2005年にヒジ、翌年には肩を痛め、結局通算42勝29敗の成績を残しただけで、2006年限りで大リーグの舞台から消えていった。今季もパドレスとマイナー契約を結びながら8月に解雇されている。もし、ツインズがプライアーを指名し獲得したら、どんな大リーグ人生を歩んでいたのか。またマウアーがフットボールで大成しNFL入りしていたらどうだったろう。ドラフトは近年のプロスポーツ選手が通らなくてはならない道。プレーヤーには悔いのない競技人生を送って欲しいものだ。

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