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2017年11月 8日 (水)

「世界をゆるがした十日間」

 昨日11月7日は、世界で初めての社会主義国家が誕生したロシア革命100周年でした。

 新聞記者を目指していた学生時代に勧められて読んだのは、革命の現場を克明に綴ったルポルタージュ「世界をゆるがした十日間」(岩波文庫)。ペトログラードでレーニン率いるボリシェヴィキが帝政を武力制圧する過程を目撃した米国の特派員、ジョン・リードによる古典的ルポです。後に英語でも読みました。

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 ソ連はこの70年後に崩壊してしまうわけですが、このようなルポがあるからこそ、100年前の人々が「富が公平に分配される社会」を目指していたことが伝わって来ます。日々、人の揚げ足をとって、世間の話題づくりをするのも、それはそれで世相を炙り出すことで意味があると思いますが、本当のジャーナリズムの仕事というのは、歴史的事件を克明に記録していくことではないかと、このような古典を振り返ると改めて感じます。

2017年11月 5日 (日)

映画「禅と骨」

 遅くなりましたが、ポレポレ東中野で公開中のドキュメンタリー映画「禅と骨」を観てきました。監督は傑作「ヨコハマメリー」の中村高寛さんなので、期待して行ったわけですが、期待を超える素晴らしい作品でした。


 主人公は1918年に横浜で生まれた日系米国人の禅僧・ヘンリ・ミトワ。晩年の彼を撮り続けた作品ですが、作品中には若い頃のヘンリを描く劇映画が挿入され、さらにはアニメも加えた多層的な作りになっています。虚構も交えて描き出した人物像は、枯淡の境地に達した禅僧のイメージとはほど遠く、一筋縄でいかない人間臭さを感じさせるものでした。

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 青年期を過ごした日本では、特高刑事からスパイ容疑をかけられ、渡米後には日系人収容所で過ごしたヘンリの人生は、まさに運命に翻弄され、常に「他者」としてみなされて来たと言えます。そして禅の道に進み、茶道や陶芸で才能を発揮していくのですが、これほどまでに波乱万丈な一代記はなかなかないでしょう。


 後半では、病で倒れ、衰えていくヘンリが、ドキュメンタリーの撮影を拒み、取材者とぶつかる場面があります。最も悲哀を感じさせるところですが、中村さんはここをしっかり伝えてこそ人物像が浮き彫りになると思ったのでしょう。ドキュメンタリストの魂を感じさせる場面でした。


 私がもう一つ、印象に残ったのは、ヘンリが作家の水上勉を慕っていたということ。水上勉は10歳の時に京都の禅寺の徒弟となり、僧籍にあったことが知られています。その代表作は室町時代の破戒僧の伝記文学「一休」です。


 ヘンリの波乱万丈、壮絶な人生を映像で追いながら、私は風狂の精神に生きた一休禅師とヘンリを重ね合わせて観ていました。禅僧でありながらも、奔放で、奇行を繰り返しながらも、その生涯そのものが作品であるかのような人生。ずっと心に残っていきそうなドキュメンタリーでした。

http://www.transformer.co.jp/m/zenandbones/

2017年10月31日 (火)

「Black Box」を読んで

 元TBS記者、山口敬之氏による性的暴行被害を告発したジャーナリスト・伊藤詩織さんの「Black Box」(文芸春秋)を読みました。一人の被害者としての告発本ではなく、諸外国と日本の性犯罪への認識や対策への取り組みの違いを考察した上での問題提起がなされており、ノンフィクション作品として読むべき一冊です。


 司法記者クラブで、記者会見を開くまでには、私も敬愛するジャーナリストの清水潔さんからのアドバイスを受けていたことは、本書を読んで初めて知りました。伊藤さんは、清水さんのアドバイスを聞きながらも、会見では自分なりのスタイルを貫きました。並々ならぬ決意をもって表に出てきたことが伝わって来ました。


 山口さんは雑誌に反論を載せて、自己弁護をされていますが、比べてみればどちらが真実を語っているかは明確です。ジャーナリストであるならば、レイプ事件についての日本国内での認識・対策の後進性にこそ問題意識を持つべきなのに、司法判断を拠り所として自己弁護に終始している山口さんの姿勢には疑問を感じざるを得ません。

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2017年10月23日 (月)

「新聞記者」(角川新書)

 官邸会見で菅義偉官房長官を質問攻めにして、手こずらせることで 有名になった東京新聞の望月衣朔子記者の著書「新聞記者」(角川新書)を読了。記者魂を具現したかのような熱い思いが伝わり、本を閉じた時には拍手を送りたい気持ちになりました。

 文字通り新聞記者が書いたものだけに、話は非常に具体的で、ほとんどの人物が実名で登場します。本題ではないですが、お子さんを預けたという子育てサポートの女性は、私の自宅にも訪問したことがある方でちょっとびっくり

 一般紙の政治部だろうと社会部だろうと、スポーツ紙だろうと、フリーだろうと記者がやるべきことは、それぞれの立ち位置でできることを全力で取材して、知られざる事実を掘り起こすということ。それはとてつもなく骨の折れることですが、成果が出た時の喜びは、かけがえのないものです。私も記者の端くれになって22年目ですが、原点を思い出しました。

  これも余談ですが、前日まで私が取材に追われていた山尾志桜里さんは、初代「アニー」を演じたことが有名。なんと望月さんも幼少の頃、演劇をやっていらして「アニー」を演じられたとのこと。アニーには「質問力」を高める力があるのでしょうか。

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 山尾氏、深夜の勝利

 愛知7区、無所属で出馬した山尾志桜里さんの当確をNHKが出したのは午前0時46分。自民党・鈴木淳司氏とは834票差の大接戦でした。不倫疑惑の真相は私には分かりませんが、無所属でこれだけの人に応援される人間力には凄まじいものを感じました。有権者の信託を得た以上、国会でしっかり安倍首相と対峙していただきたいと思います。選挙戦の模様は23日付のスポーツ報知でお伝えします。

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2017年10月14日 (土)

「矢内原忠雄 戦争と知識人の使命」を読む

 今年6月に出版された岩波新書の「矢内原忠雄 戦争と知識人の使命」(赤江達也著)を読みました。矢内原は、東大総長を務めたキリスト教知識人。戦前、盧溝橋事件(1937年)を契機に中国との戦争になだれ込んだイケイケムードの時節に反戦を訴えた人物です。

 なぜ、この本を読もうと思ったか。矢内原が、在野のキリスト者として無教会主義を唱えた内村鑑三の門下生であったことに興味を持ったからです。

 もう27年も前のことですが、私が立教大の学生時代、宗教に関心があったことから鈴木範久先生の「宗教学」の講義をとりました。講義は親鸞聖人の「歎異抄」がテーマだったのですが、鈴木先生の専門は内村鑑三の研究でした。教派主義に異議を唱えた内村が提唱した「無教会主義」を、私は宗派や教会を超えたものであるべきという意味にとらえ、共感していたのですが、その後「無教会主義」がどのように受け継がれていったのかについては、全く知識がありませんでした。

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 この本を読んでまず感じたのは、軍国主義が強まり、日本のほとんどの宗教家が治安維持法での検挙を恐れて「反戦」の声を潜めてしまった中で、矢内原忠雄は本物の宗教家であったのではないかということ。ですが、この本はその「良心的知識人」という側面を賛美しているわけではなく、さらに矢内原自身が「キリスト教的な意味での『神の国』の到来を国民に告げる預言者だと考えていた」という、あまり知られていない側面にも光を当てた評伝になっています。

2017年9月13日 (水)

さようなら友鵬さん

  8日に急逝した日本相撲協会の世話人、友鵬さん(享年60)の告別式に参列させて頂きました。親方衆、関取衆をはじめとするたくさんの関係者で、大鵬道場は溢れていました。友鵬さんは本当に皆さんから愛されていたんだなあ、とつくづく感じました。

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 私も大嶽親方のむせび泣きながらのお別れの挨拶を聞くと涙が堪えられなくなってしまいました。 また11日、私が書かせて頂いた友鵬さんの追悼コラムは、大変たくさんの方々にお読みいただくことができました。懐かしい方やご面識のない方からも、温かいお言葉を頂き、これも友鵬さんの人徳の表れだとしみじみ思っております。ふだんあまり接する機会がない気難しい親方と会うときにも、友鵬さんが一緒にいてくれると、会話がスムーズになる。こんな人物はめったにいないと思います。

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 相撲の世界は土俵の上で光を浴びる力士たちだけでなく、友鵬さんのように裏方として支えていらっしゃる方がいてこそ成り立っていることをお伝えしたい一心でしたが、記事にして本当に良かったと思います。

 相撲漫画家・琴剣さんが描いた友鵬さんの似顔絵。本当にやさしいお人柄が表れており、大鵬道場に飾られているのをみて涙が出てきました。

 友鵬さん、またいつか一緒に泡盛でも飲みましょう!

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2017年7月20日 (木)

世界でいちばん美しい村

 ポレポレ東中野でドキュメンタリー映画「世界でいちばん美しい村」(監督・撮影、石川梵、ナレーター・倍賞千恵子)を観てきました。

 2015年4月25日に発生し、約9000人が亡くなったネパール大地震の震源地となったヒマラヤ山岳地帯の村の被災後を追った作品。

 現地取材でこそ伝えられる村の現状は壊滅状態。いつ地すべりでの2次災害が起きてもおかしくない状態。近くの村には避難キャンプができ、 識者たちは村人に移住を勧告しますが、村の老人たちは腰を上げようとしません。その理由には「先祖から受け継いだ地だ」という土着の信仰の基づく精神的要素と「畑を手放しては食べていく手段がなくなる」という物質的要素の両面があるわけです。

 

 観ながら否が応にも想起させられたのが2011年の3・11であることは私だけではないでしょう。原子力災害により、移住を迫られながらも拒み続けた福島県在住の高齢者たちと重ね合わさずにはいられませんでした。

 上映後には撮影を敢行した石川梵さんが登壇。エンドロールを担当した花巻市出身の2人組「はなおと」さんのミニ生ライブもありました。

 災害は地球上どこに住んでいても起こりうる。その時、人間は災害とどう向かい合うべきかを考えさせられました。是非お勧めしたい作品です。

https://himalaya-laprak.com/

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2017年7月 4日 (火)

立大隊、ヒマラヤに挑む

 1936年(昭和11年)、日本初のヒマラヤ遠征でインドの秘峰、ナンダ・コート(6867m)に初登頂した立教大が今秋、山岳OBを中心とした5人で同峰に挑みます。

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 4日、東京・池袋の同校で、隊長となる登山家の大蔵喜福さん(66)ほかメンバーが記者会見した後、チャペルで壮行礼拝、記録映画「ヒマラヤの聖峰 ナンダ・コット征服」の上映会、 アルピニスト・野口健さんの激励講演会が行われました。

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 昭和11年は二・二六事件が起き、戦時色が濃くなっていった年。立教大の快挙は、戦争へと突き進む時代の中で忘れ去られてしまったのです。

 今秋の遠征隊は、当時の登山隊が登頂を記念して頂上に埋めてきたと伝えられている旗を探してきます。登頂するのも大変ですが、果たして見つけ出すことができるでしょうか。

 校内には81年前の遠征隊が使用した天幕も展示されました。野口健さんには、壮行レセプションにもご参加いただきました。死と背中合わせになるヒマラヤ登山になぜ挑むのか。周囲をどうすれば説得できるのか。自身の経験を踏まえての講演のお話は素晴らしかったです。現役の山岳部員たちは大きな刺激を得たようでした。

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2017年6月 1日 (木)

「集団就職 高度成長期を支えた金の卵たち」

  2日付のスポーツ報知BOOKセレクトの新刊レビューでノンフィクション作家・澤宮優さんの新刊「集団就職 高度経済成長を支えた金の卵たち」(弦書房、2160円)をご紹介させて頂きました。

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  NHK連続テレビ小説「ひよっこ」でも題材となっている高度成長期の集団就職。澤宮さんは、経験者たちへの聞き書きで、その知られざる一面に光を当てることで、暗いイメージがある集団就職について新たな視点を見出しています。スポーツノンフィションでも、光が当たらない選手を描く澤宮さんの手法が生かされている硬派なさ作品です。

 考えさせられたのは憲法22条1項で保障されている「職業選択の自由」の意味です。適職探しが当たり前となっている現代社会の仕事選びが、果たして本当に正しいと言い切れるのでしょうか。逆に高度成長期をとっくに終え、低成長期の中で暮らす私たちが見落としてしまっていることはないでしょうか。

  第7章で澤宮さんがつづっているこの一文に私は深く共感しました。

 「今の社会は即効性や成果主義を求めているが、そんな時代だからすぐに役立つ資格取得や学びをするだけでなく、働くことの本質を理解することが必要なのだと思う」。

 すぐに役立つ知識や技術は、すぐに役立たなくなる。私はそう思っています。

甲斐毅彦

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