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2016年9月

2016年9月27日 (火)

「御嶽山噴火生還者の証言」

  63人が命を落とした2014年9月27日の御嶽山の噴火から今日で2年です。絶好の登山日和だったあの日、頂上付近で被災した日本山岳ガイド協会認定ガイド、小川さゆりさんの「御嶽山噴火生還者の証言 あれから2年、伝え繋ぐ共生への試み」(ヤマケイ新書)は、運命の一日の詳細をつづり、そこで得た教訓を盛り込んだノンフィクションです。また繰り返されないとは限らない噴火がもたらす悲劇を忘れぬため、読んでおきたい一冊だと思います。

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2016年9月26日 (月)

「超現代語訳戦国時代」

 歴史好きで知られるお笑いコンビ「ブロードキャスト!!」の房野史典さんが書いた「笑って泣いてドラマチックに学ぶ超現代語訳戦国時代」(幻冬舎)を読みました。日本史の中でもドラマチックでありながらも複雑で頭に入りにくい戦国時代を面白おかしく噛み砕いたエンタメ歴史本。「東大卒も唸った」という触れ込みですが、大学受験では世界史を選択し、20年以上日本史コンプレックスを克服できないスポーツ紙記者も唸りましたよ。

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 せっかくの機会なので高校の授業で使った山川出版の教科書と図説の該当箇所を参照しながら通読。本は「関ヶ原の戦い」と「真田三代」の二部構成ですが、時代背景もイメージしやすく書かれているので、戦国時代に関しては得点できそう(いまから受けることはないと思うけど)という自信が沸いて来ます。できればNHK大河ドラマの「真田丸」の放映中に一読すれば、相乗効果で両方楽しめると思うのでお勧めです。

 お笑いは頭のいい人でないとできないと思いますが、房野さんはきっと地頭がいい人なんでしょうね。細かいところは、思い切りざっくり切り捨てて大筋が分かるようにするのが、いかなる学科でも理解を高めるための鉄則だと思いますが、見事に成功していると思います。

 特に戦国武将がお好きなそうですが、是非、縄文時代から近現代までシリーズ化して通史を完成させて欲しいところです。次作を楽しみにしています!

 

2016年9月24日 (土)

映画「怒り」

 先週公開された映画「怒り」を観てきました。

 八王子で夫婦を殺害し、顔を整形して逃亡する殺人犯。東京、千葉、沖縄と3つの舞台が並行して進みます。そしてその3か所にはそれぞれ経歴不詳の男が現れる。何よりも構成が特異で独創的。そして豪華キャストによる迫真の演技が際立ち、素晴らしい映画に仕上がっていると思います。

 迫真の演技と言えば、ゲイの恋人同士を演じる妻夫木聡と綾野剛のラブシーン。その気がない私は「うぎぁあー」と声を出しそうになりましたが、役者魂を感じました。

http://www.ikari-movie.com/

2016年9月17日 (土)

「芸能人寛容論」(武田砂鉄 著)

  昨年「紋切型社会 言葉で固まる現代を解きほぐす」(朝日出版)でデビューしたライター、武田砂鉄さんの単行本第2弾「芸能人寛容論 テレビの中のわだかまり」(青弓社)を読みました。

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 「紋切型」の言葉に突っ込みを入れまくっているだけに、武田さんの文章は「○○みたいな感じ」という類型化がしにくい。しかし、学生時代だった1990年頃から廃刊となった2004年まで月刊「噂の眞相」を欠かさず愛読していた者としては、ナンシー関の「顔面至上主義」をはじめとする往年の人気連載を連想してしまいます(武田さん本人もあとがきの中で『ナンシー関のエピゴーネンじゃん』という指摘をネット上で受けていることをどちらかというと肯定的にとらえて記しています。視点が一点に定まらないという立ち位置は、小田嶋隆さんと重なるようにも私には思えます)。


  「能年玲奈民営化問題」「池上彰依存社会」「黒柳徹子は若者に苦言を呈さない」「広瀬すずに謝らせようとする仕組み」。例に挙げたこんなタイトルに惹かれてしまった方は是非手にとってみることをお勧めします。テレビで観る面々をバッサリ斬るわけでもなく、持ち上げるわけでもなく、いじくりまわした末の落としどころが「寛容」というのがなんとも滋味深い。


  私なんかはテレビを観るときにはだいたい思考を停止していますが、少しは頭を働かせて観るべきではないかという気持ちに初めてさせられました。そんな啓蒙的効果もある一冊です。

2016年9月12日 (月)

「鬼畜」の家 わが子を殺す親たち

 ノンフィクション作家、石井光太さんの最新刊「『鬼畜』の家 わが子を殺す親たち」(新潮社)を読み終えました。

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  2012年以降に発覚した3件の子ども虐待死事件にある背景を詳細に取材したルポです。

厚木市幼児餓死白骨化事件、下田市嬰児連続殺人事件、足立区ウサギ用ケージ監禁殺人事件。

 

 石井さんは、3件の凄惨な事件を起こした当事者の生育環境、家族構成などを「ここまで調べたか」という圧巻の取材力で明らかにしていきます。見えてくるのは3件に共通する日本社会の病巣。絶望的な気持ちにさせられますが、石井さんはエピローグの中で、現時点で考えうる解決への糸口を示しています。

 

 すべての犯罪事件の報道に言えることですが、人間とは思えない「鬼畜」の行為をしてしまった人物の生育環境を調べ、どのような生活をしていたのかを明らかにしていくことは、事件の真相に迫るためには欠かせないことです。この3件の事件はスポーツ報知でも報じましたが、弊紙を含めてあらゆるメディアは表層的な事実のみの報道しかできていなかったと言えます。

 

 児童虐待事件については2000年に起きた真奈ちゃん事件をテーマとした「ネグレクト」や2010年に起きた2人の子どもの餓死事件をテーマとした「ルポ虐待-大阪二児置き去り事件」の著書があるルポライターの杉山春さんも取り組んできました。石井さんが取材した事件の背景と照らし合わせれば、ややはりその共通性を見出すことができるように思います。

 

 つまり、子どもが犠牲となっていく事件は特殊なことではなく、日々生活している私たちの周辺にも潜んでいる病理が露顕したものなのではないか。私自身も3歳児の父親ですが、「鬼畜」を読んで、これを他者の問題と考えてはいけないという思いを強くしました。是非お勧めしたいノンフィクションです。

2016年9月 3日 (土)

「漂流」(角幡唯介著)

 探検家・ノンフィクション作家、角幡唯介さんの最新刊「漂流」(新潮社)を読み終えました。

  1994年、37日間の漂流の末、奇跡的な生還を遂げた沖縄のマグロ漁師・本村実の生き様を追ったノンフィクション。角幡さんはこれまでチベットの空白地帯・ツァンポー峡谷、ヒマラヤの雪男探し、北極探検中に消えたフランクリン隊の足跡を辿る冒険など、自身が主体となった探検・冒険記で数々のノンフィクション賞を受賞して来ましたが、最新作は聞き書きを中心とした作品です。新聞記者出身であることを感じさせる粘り強い調査報道の結晶とも言える秀作だと感じました。

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 聞き書き中心とは言え、角幡さんらしい体を張った取材力が十分に発揮されています。まずは沖縄で本村実の家族の話を聞き、その足跡を辿ってフィリピンやグァムへも足を運んで本村実を知る人から話を聞きだし、その人物像を浮かび上がらせていく。さらに自身のマグロ漁船に乗船して追体験する。数々の過酷な探検活動をしてきた角幡さんですら弱ってしまうほど過酷な船上での生活は、私たちの想像を絶するほど厳しいものであることが伝わってきます。

 先日、もう一つの新刊「旅人の表現術」(集英社)の著者インタビューさせて頂いたときに角幡さんは、現代の探検について地理上の空白よりも「時代や社会のシステムの外側を目指すこと」とおっしゃっていました。角幡さんがマグロ漁師の世界に惹かれたのは、やはり「社会の外側」=「他界概念」への好奇心だったのでしょう。著書の終盤では、以下のように書かれていて合点がいきました。

 「いくらマグロ漁船に衛星による自動追尾システムやらGPSやらが搭載されて、管理されたシステムの領界線がテクノロジーによってかつてないほど地球規模でひろがっているとしても、海はしばしばそのニライカナイ性(沖縄で現代まで信仰されて来た他界概念)をむき出しにする」

 「旅人の表現術」のインタビューの中では「自分の探検だけだと行き詰まり、他の人のことも書きたくなる」と言っていました。北極にしてもジャングルにしても探検の日々というのは、実は変化に乏しく単調で、フィリピンへ猿人バーゴンを探しに行った川口浩探検隊のように、ヘビの束が頭上に振ってきたり、隊員が罠にかかって宙吊りにされるという場面にはなかなか遭遇しないわけですね。「漂流」はまさに極限の状態に置かれる自身の体験を他者の経験に投影してみたかったのではないか、とも感じさせられました。

  海外などの慣れない地での取材では、有能なコーディネーターや協力者、通訳を見つけられるかも取材力の一つで、大きな成功のカギとなりますが、非常に多くの取材協力者を得て一冊の本にまとめられたのも、著者の能力の高さだと思います。今後は自身の探検記のみならず、聞き書きルポでも素晴らしいものを読ませてくれそうな期待が高まる作品でした。

甲斐毅彦

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