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映画

2017年3月17日 (金)

ドキュメンタリー映画「新地町の漁師たち」

ポレポレ東中野で上映中のドキュメンタリー映画「新地町の漁師たち」(山田徹監督)を観て来ました。 

 東日本大震災で被災し、原発事故による放射能汚染水の排出に悩まされる福島県新地町の漁師たちを、3年半記録したドキュメンタリー作品です。

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 映像作家の山田さんが新地町でカメラを回し始めたのは震災から3か月の2011年6月から。震災の取材対象となる町を探しているときに詩人の和合亮一さんがツイッターに綴った新地町の被災状況を知り、人口8251人の小さな猟師町の人々を被写体とすることを決めたそうです。漁師という家業と暮らしぶり、漁業組合、地下水バイパスで汚染水を垂れ流そうとする東電との闘いを町の伝統祭、安波祭を柱に描いています。

 やはり一番賛辞を送りたいのは、3年半にも渡って、被災した一つの小さい町を取り続けたという点です。エンディングでは震災よりもはるか前の1983年の安波祭の様子が映されます。海の中で御輿を担ぐ男たち。そして最後は、御輿を担ぐ男たちの映像がかぶせるように2016年の安波祭のものにスイッチします。これはプロの映像作家だからこそなせる技術でしょう。

 鑑賞した14日には監督の山田さんも会場にいらしていたので「すばらしい作品でした」とお声掛けさせていただきました。

https://www.yamadatoru.com/

2016年12月 4日 (日)

映画「東柱」

 母校の立教大学へ。異文化コミュニケーション学部主催のシネマ・シンポジウム「70年の時を経て出会った尹東柱と立教生」に出席して参りました。

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  尹東柱(ユン・ドンチュ)は、日本統治時代の朝鮮から日本に渡って立教大学(後に同志社大学に編入)で学んだ伝説的な人物。1943年に治安維持法違反容疑で官憲に捕らえられ、福岡刑務所で獄死した悲劇の詩人です。 シンポジウムでは今年韓国で公開されて120万人が観た映画「東柱」が日本で初めて上映されました。

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 映画上映後のトークセッションには、映画の中で特高警察役として出演し、尹東柱を絞め上げた俳優(大悪役ですが)がサプライズ登場。当たり前ながら流暢な日本語で出演していたので日本の俳優かと思いましたが、金仁友という在日の俳優でした。韓国人でありながら韓国人を弾圧する役回りをすることに葛藤がなかったのか気になるところでしたが「是非やりたい役だった。日本という国が悪いのではなく、軍国主義が起こしたことが悪い」と話していたのが印象に残りました。

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 映画はよくできた作品で感動しましたが、事実を基にしているとはいえ、だいぶ脚色がなされているとのこと。例えば、立教大留学中、尹東柱に恋慕する日本女性が登場しますが、これは創作の人物だそうです。

 ともあれ、密度の濃い素晴らしいシンポジウムでした。このようなイベントを無料で開催してくれた立教大を誇りに思います。舞台進行などで活躍した異文化コミュニケーション学部の学生の皆さんも皆、自分の在学中の立大生よりも優秀そうでした。

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 ちなみに尹東柱の詩集「空と風と星と詩」は、岩波文庫からも出ています。巻末にはハングルの原詩もついています。原詩を暗唱できるようになるぐらい読み込みたいものです。

2016年9月24日 (土)

映画「怒り」

 先週公開された映画「怒り」を観てきました。

 八王子で夫婦を殺害し、顔を整形して逃亡する殺人犯。東京、千葉、沖縄と3つの舞台が並行して進みます。そしてその3か所にはそれぞれ経歴不詳の男が現れる。何よりも構成が特異で独創的。そして豪華キャストによる迫真の演技が際立ち、素晴らしい映画に仕上がっていると思います。

 迫真の演技と言えば、ゲイの恋人同士を演じる妻夫木聡と綾野剛のラブシーン。その気がない私は「うぎぁあー」と声を出しそうになりましたが、役者魂を感じました。

http://www.ikari-movie.com/

2016年8月24日 (水)

「海峡を越えた野球少年」

  ポレポレ東中野で公開されている韓国のドキュメンタリー映画「海峡を越えた野球少年」(キム・ミョンジュン監督)を観てきました。

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 1956年から1997年までの42年間、在日コリアンの球児たちが、海峡を渡り、祖国・韓国の高校野球大会に出場していました。この作品は決勝戦で惜敗した1982年の在日同胞チームのメンバーたちを探し出し、韓国プロ野球の始球式で登板してもらうまでを企画・撮影したドキュメンタリーです。

 しかし、日本でも、祖国・韓国でもよそ者扱いをされる在日同胞にとって祖国で野球をするということは必ずしもいい思い出ではありませんでした。しかし懐かしいメンバーが約30年ぶりに集う中で、徐々に彼らの気持ちは高揚していきます。そのラストは何と清々しいことか。

 映画には「韓国野球の源流」(新幹社)の著者でスポーツライターの大島裕史さんもインタビューに答える形で出演されています。韓国野球は在日コリアンという存在なくして語ることができないとあらためて認識できました。大島さんには2002年のサッカー日韓W杯取材の時にいろいろとご教示いただきました。ご活躍の姿をみて嬉しくなりました。

2016年7月 3日 (日)

映画「日本で一番悪い奴ら」

 2002年7月、北海道警の警部が、覚醒剤取締法違反と銃砲刀剣類所持取締法違反で逮捕された日本警察史上、最大の不祥事「稲葉事件」を題材にした綾野剛主演の映画「日本で一番悪い奴ら」(白石和彌監督)を新宿バルト9で観て来ました。

 主人公は大学柔道部で活躍して道警に拝命し、機動捜査隊に配属された諸星(綾野剛)。先輩刑事から「犯人を挙げて点数を稼げ」と諭された諸星は、裏社会に入り込みS(スパイ)を得ることで、目覚しい拳銃摘発の成果を挙げていきます。しかし、上司からの無理な要請に応えるため、暴力団との癒着、違法捜査、覚醒剤密売へと手を染め、ドツボにはまっていきます。

 諸星のモデルとなったのは、元道警警部で、本作の原作「恥さらし」の著者、稲葉圭昭さん。映画化する上で「味付け」はされていると思いますが、事実に基づいて描かれています。主演の綾野剛は、1970年代後半の探偵ドラマ「俺たちは天使だ!」に主演していた沖雅也をきな臭くしたような感じで、味わい深い好演を見せています。 

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 私は2011年に「恥さらし」が発売されたときに札幌で稲葉さんを取材。直接ご本人から壮絶な物語の背景をお聞きしました。まさに事実は小説より奇なり。これまで見てきた刑事ドラマが安っぽく感じるほどの話を聞き、衝撃を受けました。これまでにも警察の実態を知るためにはまずノンフィクション作品としての「恥さらし」を読むべきだと勧めてきましたが、まさか5年後にエンターティメント映画になるとは想像していませんでした。

 稲葉さんも映画化には全面協力されて、綾野剛さんともお会いしたそうです。不覚にも私は気がつかなかったのですが、実は稲葉さんご本人も映画の中で一瞬だけ出演されています。

 上映後には白石監督と高級クラブのホステス役を演じた矢吹春菜さんのトークショーがありました。綾野さんとの大胆な濡れ場があるのですが、白石監督によればトークショーの中で台本にはセックスシーンはなかったとのこと。「綾野君とどうするか話していたら『俺、セックスしたい』と」。上映後の暴露話は映画に劣らぬほどの衝撃でした。

http://www.nichiwaru.com/

2016年5月 9日 (月)

「カルテル・ランド」

 渋谷のシアターイメージフォーラムでメキシコ麻薬戦争を取材したドキュメンタリー映画「カルテル・ランド」を鑑賞。月並みな言い方ですが、これは衝撃の作品です。本当にこれがドキュメンタリーなのかと疑ってしまうほどの激しい銃撃戦。これぞ危険地取材です。撮影した監督のマシュー・ハイネマン氏に拍手を送りたいと思います。 http://cartelland-movie.com/

 メキシコ麻薬戦争とは、無法地帯の下、麻薬カルテルの縄張り争いや、政府との武力紛争を言います。この10年で12万人以上の死者が出ているとのことなので「戦争」と言っても何かの比喩ではありません。まさに戦争ドキュメンタリー映画です。

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  監督はこの麻薬戦争の最前線であるメキシコ、ミチョアカン州に乗り込み、麻薬を製造している「テンプル騎士団」のメンバー、自警団、翻弄される市井の人々、腐敗した警察・政府を直接取材しています。一般市民を巻き込んでの殺戮が横行。警察などあてにできるわけがなく、あるインテリの町医者が市民たちとともに自警団を結成します。ドキュメンタリーはこの男性医師を中心に展開するのですが、無法地帯の現実とはかくもむごいのか、と唖然としてしまいます。正義とは一体どこにあるのか。深い余韻に浸ってしまいました。ドキュメンタリー映画が好きな方には絶対にお勧めです。

2016年4月28日 (木)

「オマールの壁」

  4月16日から上映されているパレスチナ映画「オマールの壁」(ハニ・アブ・アサド監督)を渋谷アップリンクで観てきました。  パレスチナのパン職人の青年オマールと分離壁の向こう側に住む美女ナディアとの「パレスチナ版ロミオとジュリエット」。占領下での暮らしを打開しようと行動に出たオマールは、イスラエル兵殺害容疑で捕えられ、終身刑かスパイになるかの選択を迫られるというストーリーです。もちろんフィクションですが、今のパレスチナを生きる若者たちの描き方にリアリティーを感じられました。100%パレスチナ資本で作製されたとのこと。主人公の心理描写も見事で、完成度の高い作品でした。複雑なパレスチナ問題について考えるきっかけとなるかもしれません。お勧めです。

http://www.uplink.co.jp/omar/

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2016年4月27日 (水)

山河ノスタルジア

  渋谷のル・シネマで中・日・仏の合作映画「山河ノスタルジア」(ジャ・ジャンクー監督)を観ました。

 急速に経済が発展し、格差が生まれ、拝金主義が蔓延る中国の現在を山西省のある一家を通じて描いた秀作でした。 過去(1999年)、現在(2014年)、未来(2025年)の三部構成。

 小学校教師の女性タオは、炭鉱労働者と実業家2人の男性の求愛を受け、実業家と結婚し、息子をもうけるが、離婚。タオは息子の将来を思って財力がある前夫に息子を渡す。離れ離れになた息子とは父親の葬儀で一度だけ再会を果たす。そして2025年。前夫に連れられ、オーストラリアに移住した息子は英語を話し、中国語は忘れてしまっていた。激流にもまれる中国で暮らす人々にとっての家族、アイデンティティー、郷愁を見事に描いているように思えました。世界中どこへ行っても出会う中華民族。彼らはいったい何を考えて暮らしているのか、と素朴な疑問を感じることが今までもありましたが、この作品はひとつの視点を示していると思います。 http://www.bitters.co.jp/sanga/

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2016年4月22日 (金)

映画「スポットライト 世紀のスクープ」

  4月15日に公開された米映画「スポットライト 世紀のスクープ」を観てきました。
 2002年1月、ボストンの地方紙がものにした一大スクープ(2003年度のピュリツァー賞)を題材とした作品です。


 ボストンとその周辺で連続して起きていたカトリック司祭による児童性的虐待。4人の取材班が、権威を頼みに教会が組織的に隠蔽していたことを暴きだすストーリーです。
当事者から話を聞きだす困難さやウラが取れてパッと視界が開けるような展開にはリアリティーが十分にあり、新聞の存在感を感じさせる作品でした。
 ただし、私は新聞記者の原動力はあくまでも好奇心であり、必ずしも正義ではない(正義ならそれにこしたことはないけど)と思っています。映画だけに大分かっこよく描かれているなとは思いましたが、お勧めできる映画でした。

http://spotlight-scoop.com/

2016年3月13日 (日)

袴田巌 夢の間の世の中

 死刑囚として48年の獄中生活を経て、2014年3月27日に再審が決定し、即日釈放された袴田巌さんを追ったドキュメンタリー映画「夢の間の世の中」(金聖雄監督)をポレポレ東中野で観て来ました。

 「袴田事件」は長らく私にとっても関心事だったので、再審決定後に取材しましたが、長い月日をかけてありのままの袴田さんを映した本作品を観て、今まで見えていなかったものが見えてきました。途轍もなく長い獄中生活の中で袴田さんの頭の中には現実ではないもう一つの世界が出来上がってしまった。失われた時間は戻らず、きれい事だけでは語れない現実。是非観るベき作品だと思います。そして、袴田さんには、毅然として闘い抜いた姉の秀子さんという存在がついていたことが奇跡のようにも感じられます。

http://www.hakamada-movie.com/

甲斐毅彦

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