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2017年4月18日 (火)

ともにがんばりましょう

 「罪の声」で本屋大賞3位となった塩田武士さんの「ともにがんばりましょう」(講談社文庫)を読みました。これは傑作です! 巻末の角田龍平弁護士による「解説」もまた秀逸。

 地方新聞社の労使交渉を題材にした労働組合小説。新聞労組の話をエンタメ小説にしてしまうとは。塩田さん自身が、神戸新聞記者時代に労組の執行委員を務めていた経験が投影されていることは明らかですが、さらに高校漫才師時代の笑いのセンスが織り交ぜられています。

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 実は私自身が現在、労組の執行委員を務めているのですが、労使交渉でのやりとりの描き方があまりにリアルで、自分自身の経験と重なり合い、一人で大受けしてしまいました。これは一人で読むのはもったいない。新聞労連の必読書とし、我が報知労組でも新任の執行委員のテキストにしていくべきだと思いました。労働組合の仕組みもよく分かるようになっているのです。

 そしてインターネット時代における新聞業界の状況や記者という職業の悲喜こもごもが余すところなく描かれています。

 末端で張り込みや聞き込み取材をしている駆け出し記者も、新聞業界の偉い方々も皆に薦めたい一冊です。

 皆で読んで、笑って、そして、ともにがんばりましょう。

2017年3月19日 (日)

教養としてのプロレス

 先日インタビューした時事芸人、プチ鹿島さんの処女作「教養としてのプロレス」(双葉新書)を読む。これは、プロレスファンのみならず、現代を生きる国民必読の教養書です。

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 プロレスラーはロープに振られるとなぜわざわざ戻って来て、相手の技を真っ向から受けるのか。プロレスに夢中になっていた小学校高学年頃に芽生えた、この大きな謎は12歳のガキには簡単に答えが出せず、延々と自問自答したことを思い出します。そしてこの本を読み「ロープにに振られて戻る」に悩み続けた少年時代を肯定された気持ちになり、一人感涙を流しそうになりました。

 それにしてもNHKドラマの「あまちゃん」と越中詩郎とをシンクロさせてしまう眼力は圧巻。プチ鹿島さんはやはりタダ者ではないです。

2017年3月11日 (土)

「魂でもいいから、そばにいて」

3・11に是非お勧めしたい本をご紹介させてください。「魂でもいいから、そばにいて 3・11後の霊体験を聞く」(奥野修司、新潮社)

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 東日本大震災の被災地で、死別した人と再会できたような不思議でかけがえのない体験をした遺族は少なくありません。「ナツコ 沖縄密貿易の女王」で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した奥野さんが3年半にわたって毎月のように被災地へ通い、その一つひとつの体験を聞いて、検証した感動のノンフィクションです。体験には「霊」が連想させるようなしらじらしさ、胡散臭さが全くありません。

2017年2月12日 (日)

「沈黙ーサイレンスー」の原作を読んで

カトリック信徒の作家・故遠藤周作の代表作「沈黙」(1966年)は、ユーモラスな狐狸庵先生とマンボウ先生の対談などを愛読していた高校時代に読みましたが、映画化の影響で現在は文庫本の売上ナンバー1になっているとのことで、読み返してみました。

島原の乱後の切支丹弾圧が題材。日本へ潜入したポルトガル人の若い司祭が、捕らえられて棄教するまでの内面を描いた宗教文学です。

もう30年前なので詳細は忘れていましたが、司祭が踏み絵を迫られ、棄教するシーンだけはしっかり覚えていました。

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 次々と殉教者が出ても「沈黙」し続けていたあの人(イエス)の声が、司祭の耳に届きます。

 「踏むがいい。お前の足の痛さをこの私が一番よく知っている。踏むがいい。私はお前たちに踏まれるため、この世に生まれ、お前たちの痛さを分かつため十字架を背負ったのだ」と。

 私自身は中学時代にプロテスタントの塾の先生にお世話になり、聖公会の大学に通い、そしてカトリックの妻と結婚したわけですが、度々聖書に触れ、共感しながらも結局はクリスチャンにはなりませんでした。 そんな私でもこの本を読んで考えさせられるのは、人間にとって信仰とは何か。また、価値観の異なる人とどう向いあうべきかということでした。

 作品の中では切支丹でありながら、弾圧に負けてあっけなく棄教し、役人に司祭の居場所を密告してしまうキチジローという男が出てくるのですが、遠藤さんはこの醜いはずの男までも愛情をもって描いています。遠藤さん自身は旧制灘中学を卒業して慶応大に進みますが、なんと3浪の末。エリートの中の「落ちこぼれ」という意識がご本人にあったことが反映されているのだと思いますが、作品の中では「ダメな人間」へのやさしい眼差しを感じることができます。

 思えば私が立教大2年生のときに、遠藤さんが講演にいらっしゃいました。「偏差値教育の無意味さ、入学試験のバカバカしさ」をテーマにお話されていましたが、その時の話と作品が今になってつながったように感じられます。

2017年1月 9日 (月)

「五〇年目の日韓つながり直し」

「父・金正日と私 金正男独占告白」の著者で、東京新聞編集員の五味洋治さんから「五〇年目の日韓つながり直し~日韓請求権協定から考える~」(吉澤文寿編著、社会評論社)をご献本して頂きました。

1965年に締結され、良くも悪くも現在の日韓関係の礎となっている日韓基本条約・日韓請求権協定について50年の節目に多角的な視点から検証した硬派な書物。五味さんは1965年当時の新聞が、どのように報じたかを検証しています。

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 私が興味深かったのは、当時、日本側の代表だった外務省参与の久保田貫一郎が、植民地支配には韓国側にとって恩恵があったという趣旨で発言した「久保田発言」についての日本のメディアの反応。現在ならば責任追及されるのは間違いない発言ですが、当時の新聞では、これを問題発言ととらえる報道が皆無だったそうなのです。また、当時の世論調査では、国民の多くが日韓基本条約に無関心だったということ、当時の新聞は日韓両政府の言い分を報じるだけで、あるべき日韓の未来像を提言するような報道がほとんど見受けられなかったという点です。

   大雑把な言い方をしてしまえば、日韓基本条約について日本国民は、未来像を持たず無関心のまま50年が過ぎてしまったようにも思います。日韓問題は是々非々で議論すべきだと思いますが、この条約を踏まえていない意見がほとんどのようにも思います。まずは礎となっているものについて知ること。それが建設的な議論の第一歩となるのではないでしょうか。

2016年12月31日 (土)

「探検家、40歳の事情」

お正月に何も考えずに笑える1冊を読みたいという方には、探検家でノンフィクション作家の角幡唯介さんの新刊「探検家、40歳の事情」(文藝春秋)をお勧めします。

 前作「探検家、36歳の憂鬱」から4年。結婚し、第1子の長女を授かった探検家の生活はどのように変化したのか。チベットの秘境や北極を旅するという「非日常」をライフワークとする探検家には、「非日常」に身を投じることを可能とするために「小市民的な日常」も生きなくてはいけない。この本は「日常」「非日常」の狭間で生きる葛藤を活写した珠玉のエッセイ集です。

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 収録作の中では「人間とイヌ」が非常に文学的ですが、それ以外は噴き出してしまうバカバカしい話。とくに「無賃乗車」にはたまげた。活字でメシを食う職業作家が、この話を活字にし得るのか!?中には本気で怒り出す人がいることも角幡さんは想定内なんでしょう。それにしてもつい最近まで天下の朝日新聞にこんな不逞な輩がいたとは・・・(笑)。今すぐ最寄のJRの駅に行って「駅員さん、こんな男がいますよぉ!」と突き出したくなる衝動にかられる人もいるのではないか。

 かくいう私も「無賃乗車」の四文字には、若かりし日に様々な思い出があり、批判できる立場にはありません。聖書の中にも「あなたたちの中で罪を犯したことのない者が、まず、この女に石を投げなさい」という言葉がありましたよね(ヨハネの福音書)。

 ちなみに著者の角幡さんは現在、北極で越冬中のはず。

2016年12月 1日 (木)

「未来国家ブータン」

 敬愛する辺境ノンフィクション作家、高野秀行さんの「未来国家ブータン」(集英社文庫)を読みました。

 エンターティメントノンフィクションの旗手による「世界一幸せな国」の探訪紀。幻獣ムベンベ以来、未確認生物探しをライフワークとしている高野さんのブータンでの狙いは「雪男(イエティ)」。現地の研究者の証言はあるものの、やはりそう簡単に未確認生物は姿を現してくれません。いわば「雪男をめぐる探検」。そんな珍道中の中で見えてきたブータンは「伝統的な知恵や信仰と最先端の環境・人権優先主義がミックスされた未来国家」でした。

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 未知の世界を探り、それを面白おかしく書くのが高野さんの真骨頂ですが、ブータン探訪においてもその精神が十分に発揮されています。その「面白さ」はちゃんと本質を突いており、読者を裏切ることがありません。実は私も11月にブータン旅行を計画したのですが、ビザが間に合わずにケニアのナイロビへ行きました。

  本書を読み、次回のブータン訪問のチャンスへ夢を膨らませておくことにします。

2016年11月12日 (土)

四国をお遍路する韓国人女性

 四国お遍路で外国人女性初の「先達」となった韓国の旅行作家、崔象喜(チェ・サンヒ)さんの韓国語新刊「四国を歩く女(시코쿠를 걷는 여자)」をお送り頂きました。

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 サンヒさんは父を事故で亡くし、お店が倒産するなどの辛い経験が続く中で「四国八十八か所巡り」を知り、お遍路をしようと思い立ちます。弘法大師の足跡を辿る霊場巡りの中で人々と触れ合い「お接待」を受け、サンヒさんは人は一人で生きるのではなく、国籍や民族などは関係なく「生かされて生きる」という仏教の真髄を感得していったようです。サンヒさんはお遍路を6回まわり、2013年には外国人女性では初めての「先達」(巡礼道案内者)として認められました。

 私がサンヒさんとお会いしたのは2014年10月。香川県三豊市に建設された「日韓友好のお遍路小屋」の上棟式の取材でした。

サンヒさんは大変な努力家でこの後、日本語検定試験1級に合格。ソウル在住で日本に留学していたわけでもないことを考えれば、驚くべきことです。 日韓友好への思いを共有できるサンヒさんとの出会いは私にとって幸せなことでした。

ご著書は妻と一緒にゆっくり拝読していきます。ちなみに光栄にも私が四国へ取材に行ったときの小さな写真がワンカット載っています(笑)

2016年9月27日 (火)

「御嶽山噴火生還者の証言」

  63人が命を落とした2014年9月27日の御嶽山の噴火から今日で2年です。絶好の登山日和だったあの日、頂上付近で被災した日本山岳ガイド協会認定ガイド、小川さゆりさんの「御嶽山噴火生還者の証言 あれから2年、伝え繋ぐ共生への試み」(ヤマケイ新書)は、運命の一日の詳細をつづり、そこで得た教訓を盛り込んだノンフィクションです。また繰り返されないとは限らない噴火がもたらす悲劇を忘れぬため、読んでおきたい一冊だと思います。

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2016年9月26日 (月)

「超現代語訳戦国時代」

 歴史好きで知られるお笑いコンビ「ブロードキャスト!!」の房野史典さんが書いた「笑って泣いてドラマチックに学ぶ超現代語訳戦国時代」(幻冬舎)を読みました。日本史の中でもドラマチックでありながらも複雑で頭に入りにくい戦国時代を面白おかしく噛み砕いたエンタメ歴史本。「東大卒も唸った」という触れ込みですが、大学受験では世界史を選択し、20年以上日本史コンプレックスを克服できないスポーツ紙記者も唸りましたよ。

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 せっかくの機会なので高校の授業で使った山川出版の教科書と図説の該当箇所を参照しながら通読。本は「関ヶ原の戦い」と「真田三代」の二部構成ですが、時代背景もイメージしやすく書かれているので、戦国時代に関しては得点できそう(いまから受けることはないと思うけど)という自信が沸いて来ます。できればNHK大河ドラマの「真田丸」の放映中に一読すれば、相乗効果で両方楽しめると思うのでお勧めです。

 お笑いは頭のいい人でないとできないと思いますが、房野さんはきっと地頭がいい人なんでしょうね。細かいところは、思い切りざっくり切り捨てて大筋が分かるようにするのが、いかなる学科でも理解を高めるための鉄則だと思いますが、見事に成功していると思います。

 特に戦国武将がお好きなそうですが、是非、縄文時代から近現代までシリーズ化して通史を完成させて欲しいところです。次作を楽しみにしています!

 

甲斐毅彦

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