「坂の上の雲」で思い浮かぶ顔
NHKでスタートした大型ドラマ「坂の上の雲」が、プロボクシングの注目カード・内藤大助vs亀田興毅戦の裏(表?)で視聴率17・7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録した。変則スタイルが衰えたチャンピオンと、積極性を欠いたチャレンジャーでは、元ボクシング記者は「ダウンシーンはないな」と序盤で確信し、その後はNHKに集中した。正解だった。数字は次週から跳ね上がるに違いない。
原作者・司馬遼太郎さんの了解が得られず、これまで映像化されなかった「坂の上の雲」では、リタイアされた先輩記者の顔がすぐに思い浮かぶ。司馬さんの存命中から「もしもドラマ化されたら、あの箇所はどう描かれるのだろう」と楽しそうに話していたからだ。このコラムでも触れたことがあるが、あの箇所とは軍神・広瀬中佐と杉野兵曹長の有名な下りだ。
日露戦争の旅順港口での作戦で戦死した、広瀬中佐の「杉野はいずこ」で知られる杉野兵曹長については「生存説」が絶えないようで、硬派の月刊誌もずいぶん以前に生存を確認したかのような記事を掲載した。ある日、その古い切り抜きを引っ張り出した先輩は、ドラマ化も決まっていない段階から、前述の「もしも」。記事を鵜呑みにしたというより想像を楽しんでいたのだろう。映画担当であり、芸能人のゴシップ、スキャンダルにも強かった先輩の、ニュースを嗅ぎつける感性、遊び心を知った気がする。
ドラマ「坂の上の雲」の語りは今年の報知映画賞の主演男優賞を獲得した渡辺謙。対象作品は、これも映像化には様々なハードルがあった「沈まぬ太陽」だ。選考経過によると「ディア・ドクター」の笑福亭鶴瓶との一騎打ちで、選考委員のリリー・フランキーさんは「どちらが受賞しても納得」だったという。初日に「ディア」を見た元ボクシング(後に芸能)担当記者は、「今年は鶴瓶で決まり!」と社内で触れ回ったのだが、「沈まぬ」を見終えると、難なく「どちら」派になっていた。


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