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2013年8月25日 (日)

深作健太監督の新作

 東京・渋谷TOEIでは8月30日まで深作健太監督がメガホンを執った「夏休みの地図」という作品が上映されている。

 健太監督の父は、深作欣二監督だ。

 これまでずっとその親の名前の重みを感じながら、迷いながら歩んできたように見受けられた。今作ではそれが消え、監督が本当に撮りたいものが見えてきたのではないかと思えた。

 たくさん登場する子供たちの豊かな表情がいい。

 主人公の子供の両親を参議院議員になった山本太郎と奥菜恵が演じている。

 ひょうひょうとした演技でいい味を出している。

 広島を舞台に、小学校では夏休みの宿題に自分たちの目で見て感じた地図を描くという大きなテーマが与えられる。

 正確なマップを求めているわけではなく、子供たちが一夏で経験する出会いや発見を、思い思いの地図にしていくというものだ。

 それまで何気なく見ていた景色や人物が、このテーマを与えられたことを機に違って見え始める。その延長上には広島で生まれ育つ、ということを幼いながらも見つめ始めることにもつながっていく。

 おそらく、撮影現場は健太監督の持ち味の柔らかさと優しさがあふれていたのではないかと想像する。演技に見えない子供たちの伸び伸びとした芝居が、それを物語る。これまでの監督はどこか気を使い過ぎていて、本来もっとばっさりカットできるようなシーンも残したままになっていたり、無数の迷いを引きずってきたように思う。

 8年くらい前になるが「同じ月を見ている」(2005年)の冒頭でエディソン・チャンが刑務所を脱走するシーンで、鳥肌が立つほど圧倒させられたことを思い出す。しかし後半では持続せず作品の力が失速していく印象を受けた。

 毎作、才能の片りんをのぞかせながら、作品全体に表れるまでに至っていなかった。それが今回、子供たちをこんなにも巧みに撮ることのできる人だと分かった。

 広島が舞台と聞いて、気づいた人もいるだろう。

 欣二監督の出世作は「仁義なき戦い」。戦後の広島で実際に起こった暴力団の広島抗争を題材にしていた。1973年1月の公開時、健太監督は生まれてまだ5か月の赤ちゃんだった。約40年の時を経て、息子は広島の地で父とはまったくタイプの異なる内容の映画を送り出した。父が2003年に旅立って10年。

 本人は心外かもしれないが、健太監督はようやく本当のスタートラインに立ったのではないか、と思えた。

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