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2011年5月24日 (火)

【再録】「加藤が見た」我慢の男・武田勝に負けは似合わない

   きょう5月24日の本紙に掲載された原稿です。23日のハマスタで日本ハムは横浜に0-2で完封負け。武田勝はプロ野球史上、1943年(戦中!)の内藤幸三(朝日)以来、68年ぶり2人目となる「味方が5試合連続完封負けで敗戦投手」になったのでした。

 あちゃー。思わず目を疑った。日本ハムが0-2で迎えた9回2死一塁。小谷野の鋭い打球は右翼フェンスを直撃した。おお、武田勝の登板試合に、ようやく打線の援護が! 次は稲葉。こりゃあ逆転3ランもあるぞ~と妄想が膨らんだ瞬間、一塁走者・糸井がまさかの三塁オーバーランでタッチアウト。昨季の14勝左腕は「5試合連続完封負けで敗戦投手」という悲劇の主人公になってしまった。

 チーム5度の完封負けは、すべて武田勝の登板した試合。防御率1・88は誇るべき数字なのだが、なぜか打線が沈黙してしまう。ふざけんなコノヤロー!とロッカールームで暴れてもおかしくないのに、サウスポーは悔しさを胸の奥にしまい込み、口を真一文字に結んでベンチを後にした。

 試合後、ハマスタの駐車場では冷静沈着に、取材へと応じてくれた。

 「考えすぎても良くないですし。与えられた仕事をやるしかない。自分の投球を最後まで貫く気持ちで、これからもやれればいい。自分で打開するしかないんで」

 愚痴は言うまい、こぼすまい。話を聞きながら、タケちゃんらしいな、と思った。彼は昔から我慢の男なのだ。

 初めて取材したのは8年前。野村克也監督率いるシダックスの若手だった。エースはプロ注目の剛腕・野間口貴彦(現巨人)。知将の元で才能を開花させた技巧派左腕にも、スカウトは熱視線を送ることになる。
 
 2004年秋。巨人は武田勝の指名方針を固めた。だが、思わぬところからNGが出た。シダックスのオーナーが「野間口も武田もいなくなっては困る」と残留要請を出したのだ。

 「あの時は泣きましたよ」とタケちゃんは言う。それでも腐らなかった。野間口なきチームの大黒柱として活躍し、翌年のドラフトで日本ハムに入団。北の大地でレベルアップを遂げ、今の彼がある。

 ノムさんは「負けに不思議の負けなし」との名言を残したけど、今のタケちゃんは「ノムラの考え」でも説明できない超常現象の渦中にある。それでも「どうせなら100年、200年と抜かれない記録の方がいいですしね」と前を向き、球場を去った。

 耐え忍んだ後には、それ以上の幸運が返ってくると信じたい。彼に負けは似合わない。生まれた時から「勝」つ男なんだから。(2011年5月24日付「スポーツ報知」東京本社版掲載)

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