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2012年4月18日 (水)

桜庭和志、牧田和久。救世主にはあのメロディーがよく似合う

 音楽と記憶はどうしてこんなに密接不可分なのだろう。昨夜の西武ドームで、あらためてそう感じた。西武のサブマリン・牧田和久が9回2死から右ふくらはぎをつるアクシデント。1点差に迫られ、なおも一、三塁のピンチを招いたが、小谷野栄一を空振り三振に斬り、今季初勝利を2失点完投で飾った。西武は本拠地7戦目でようやく初白星。チームの危機を救ったのは、牧やんだった。

 ヒーローインタビューを終えた牧田を、万雷の拍手が包み込む。牧田の入場曲でもある「SPEED2 TK RE-MIX」が大音量で流され、ビクトリーロードを駆け上がるヒーローを彩った。小室サウンドといえば哲哉より小室等さんを愛するフォーク野郎のわたしではあるが(特に「雨が空から降れば」は泣ける)、この曲の高揚感は凄まじい。格闘技ファンからは桜庭和志のテーマ曲としての印象が強いかもしれない。西武ドームで聴くと条件反射的に、あの「真夏の夜の夢」を思い出す。

 2000年8月27日、PRIDE10の西武ドーム大会。所沢には異様な熱気が渦巻いていた。新日本プロレスが誇る若手の実力派・石沢常光がハイアン・グレイシーとセミファイナルで激突。プロレスラーの威信をかけて「グレイシー狩り」に臨むのだ。「プロレスラー最強」を証明する瞬間を、わたしも客席から待ちわびていた(今年2月の南郷キャンプで石井一久投手と話したところ、ヤクルト時代の左腕もこの日、リングサイドに駆けつけていたという。「あの日は蒸し暑かったですね」と回想してくれた)。

 ところが、現実は厳しかった。試合開始のゴング早々、コーナーに追い詰められた石沢は、ハイアンのパンチを浴びまくった。1ラウンド2分16秒。レフェリーストップで石沢は敗れた。惨敗だった。超満員のファンは振り上げた拳を、そっと降ろすしかなかった。

 すべてを救ったのは桜庭だった。直後のメインイベント、ヘンゾグレイシーとの大一番。2ラウンド9分43秒、チキンウイングアームロックでヘンゾに勝利し、自身対グレイシー3連勝を飾った。ため息で満たされた西武ドームに「SPEED2 TK RE-MIX」が流れる。「ありがとう、桜庭!」。場内が一気に祝祭の空間へと変わった。

 今季、西武ファンは開幕から本拠地6連敗という悪夢を味わってきた。その分、この日の牧田の力投は、溜飲が下がる思いだったのではないか。まさに救世主。12年前の桜庭と、この日の牧田がダブって見える夜だった。

  ところで以前、牧田に「何でこの曲なの?格闘技、好きなんだっけ?」と聞いたことがある。「格闘技はまあまあ見ますけど、この曲に決めたのは平尾さんなんですよ。盛り上がる曲の方がいいだろうって」。そういや、秋山翔吾の出囃子を同じ理由で、ブルーハーツの「人にやさしく」に決めたのも、平尾だったと聞いた。名プロデューサーなのだろうか?

 ちなみに12年前のあの晩、ハイアン・グレイシーはなぜか小柳ゆきの「be alive」をBGMに入場してきた。違和感はハンパなかったが、初の西武ドーム開催ということで、小柳が埼玉県出身であることからスタッフが選曲したと言われている。だったら高山久のテーマ曲「所沢音頭」でも良かったのに…。

 試合後、ボンヤリそんなことを考えていたら、締め切り時間まであと数分に迫り、思わず焦った。頭の中に「SPEED2」を鳴り響かせながら、わたしは筆のスピードを上げ、一気に原稿を書き上げた。

【参考】「牧やん、完投!チームは本拠地7戦目でやっと1勝…西武
http://hochi.yomiuri.co.jp/baseball/npb/news/20120418-OHT1T00022.htm

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