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2010年4月13日 (火)

書評「初代 竹内洋岳に聞く」

 日本人初の8000メートル峰14座完全制覇まで、あと2座と迫った登山家の竹内洋岳さん(39)。今年秋には13座目のチョー・オユー(8201メートル)に挑み、王手がかかる見通しですが、快挙達成を待たずにこれまでの歩みをつづった「初代 竹内洋岳に聞く」(聞き書き 塩野米松、アートオフィスプリズム、1995円)が出版され、13日付け紙面で書評インタビューを掲載しました。聞き書きの名手、塩野米松さん(63)による2年間、200時間弱のインタビューで、気づいた時には夢を追っていた男の生き様が浮かび上がってきました。

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 何で「初代」なんだろう? 竹内さん本人も分からなかったようです。読み終えてみた竹内さんの自分自身への感想は「この人って変な人だなあ」。山好きな祖父に連れられ、幼少の頃から山に親しみ、高校・大学も山岳部に入部。8年間在籍した大学時代に活動をヒマラヤに集中していきますが、目標を14座完全制覇に定めたのは意外と遅く、7座に成功した35歳の時でした。「読むと、どこにも一大決心とか転機になるものがないんですよ。自然に社会からはみ出していったという感じです」。
 537ページに及ぶ語りは、常に淡々としています。結婚や就職のことを語る時も、エベレスト登頂中に脳血栓で倒れた話も、ガッシャブルムⅡ峰で雪崩に巻き込まれて、腰椎破裂骨折の重傷を負って死にかけ、奇跡的に救出された経緯も、同じ調子。雪崩のシーンでは目を開いているのに「真っ暗なんですよ。で、流されるのではなくて落ちているという感覚なんですよ。自分の体のどこにも圧力がないわけです」。脚色をしないからこそ、生々しい体験は伝わってきます。

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 命を落とした山仲間は1人や2人ではありません。自身も2、3度生死をさまよっています。「それでもなぜ登るのか」。問われ続けるのが、登山家の宿命ですが、竹内さんの答えはきわめて簡単。「楽しいからやってるんです。死は間近にあるが故に。それを避けるし、それが可能だと思っています」。夢、希望、達成感…。考えて気の利いた言葉をひねり出そうとしても、登らない人にはなかなか伝わるものではありません。
 14座完全制覇は、1986年にラインホルト・メスナー(イタリア)が無酸素で達成して以来すでに世界で18人が成功。アジアでも、すでに韓国人3人が制覇しています。「日本人初」となる以外に記録的な意味は少ないことは竹内さん自身が一番よく分かっています。残すはチョー・オユー(8021メートル)とダウラギリ(8167メートル)の2座。「ノーマルルートで素直に登ることを、自分でも簡単に許したくはないですね」。考えついたのは、パートナー一般公募することでした。
 11人に絞った候補者の中に竹内さんは「高尾山しか登ったことがない」という男性も残しました。「新たな可能性を見つけたいからあえて登山経験は問わなかったんです」。そこには14座達成後、日本のスポーツとしての登山普及への思いも込められているようです。
 様々な伝統文化を取材した聞き手の塩野さんに言わせれば6代目、7代目でも「初代」なのだそうです。「師匠から受け継いだのりしろとピッタリ同じでは一歩も前に進めない。常に自分で考えて登ってきた竹内さんの登山には前例はないのです」。山に限らない。何かの目標を目指しているあなた自身も「初代」なのでしょう。

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甲斐毅彦

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