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2013年9月

2013年9月19日 (木)

「成長戦略のまやかし」

アベノミクスに警鐘を鳴らしている行動派経済学者、小幡績先生の新刊「成長戦略のまやかし」(PHP新書)を読みました。既存の経済構造のままでの成長戦略は理論的に破綻している、と指摘する小幡先生は、真の活力を生み出す原動力は人を成長させるしかない、と説いています。

 

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 本書の9終章では、その具体的な提言がなされています。新経済理論から導き出される成長メカニズムは労働力、資本、人の知識の3つを増やすこと。しかし労働も資本も、物量を投入しただけでは規模の拡大にしかならず、経済を質的に向上させることはできない。国民一人ひとりの所得を上げるために必要なのは、質的な向上。となれば、残るは人を育てるしかない。


 当然なことのようにも思えますが、実は国を挙げて本気で人を育てるというような取り組みはやっているようで、あまりやっていないように思います。小幡先生は人の成長を軸に、基礎から再構築する必要性を説いた上で、こう指摘しています。「日本経済から失われたのは、新しいものを生み出す力だ。イノベーションをお越し、新しいものを生み出すためには、供給サイドの能力をアップさせることが必要だ。力がないものどうしが競争しても何も生まれない」
 

 失速しつつある日本に不安を感じている方には一読をお薦めしたいと思います。 

2013年9月16日 (月)

「誰も戦争を教えてくれなかった」

 1985年生まれの論客、古市憲寿さん(28)の戦争論、「誰も戦争を教えてくれなかった」(講談社、1890円)を読み、ご本人にインタビューさせていただきました。戦争といえば日本人は「暗く、悲惨な太平洋戦争」を連想しがちですが、米国、欧州、中国、韓国と世界中の戦争博物館を巡った古市さんには、従来と違う戦争像がみえてきました。中世の関ヶ原の合戦から近未来のサイバー戦争まで展開し、アイドルグループ、ももいろクローバーZとの対談で結んでいます。

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 はじまりはハワイの真珠湾にあるアリゾナ・メモリアルの訪問でした。戦勝国の誇りに満ち「さわやか」で「楽しい」展示館。そこには日本のように繰り返してはならない戦争への教訓や暗さはない。「戦争の描かれ方が日本とはまるで違うのが印象的でした。犠牲は悲しいが、ヒーローでもあるという物語が徹底されているんです」

  では他の国はどうなのか。古市さんは、世界界中の戦争博物館を回ってみることにしました。万博のように戦争博物館が集まったポーランドのアウシュビッツ、日本軍の残虐性と中国の寛大さを強調する中国の南京大虐殺紀念館、戦争の疑似体験が出来る韓国・天安の独立紀念館…。戦争の記憶の残し方には、それぞれの国の流儀があります。


 世界を歩き、古市さんが感じ取ったのは海外では進展しつつある「戦争博物館のディズニーランド化」が、良くも悪くも日本にはないということ。巻末の「戦争博物館ミシュラン」は古市さんの独断で採点。日本の施設は「エンタメ性」の評価が低いのです。「ある程度歴史を知っている意識の高い人でないと楽しめない博物館では、もったいない。多くの犠牲者を産んだ戦争のエンタメ化なんてとんでもない、という意見もあると思いますが、一方で戦争のことは風化していきます」。


 巻末で年代生まれのももクロのメンバーたちと対談したのには、実は狙いがありました。「日本が最も長く戦った相手国は?」「日本と同盟国関係にあった国は?」。1931年の満州事変から太平洋戦争終戦までの20問のテストで彼女たちは珍回答を繰り返します。「彼女たちが特殊なのではなく10代の女の子の平均だと思います。調査をしてみると実は中高年、戦中派の方でも意外と正答率は高くないんです」。


 戦争論からはそれますが、若者論の論客として、若者のツイッターへの悪ふざけ投稿をどう見ているのか聞いてみました。「擁護するつもりはないですけど、目くじらを立ててバッシングして何になるんだ、とも思います。店の冷蔵庫に入ることと労基法を守らずに若者を搾取することのどちからが国の損失になるかといえば後者。比較の問題ですが、かわいいものだと思います」

 

2013年9月 6日 (金)

「血盟団事件」

1975年生まれの保守リベラリスト、中島岳志さんの新刊ノンフィクション「血盟団事件」(文藝春秋)は大変面白い本だと思います。血盟団事件は1932年(昭和7年)に、日蓮主義の僧侶、井上日召が首謀し財界人を狙った戦前のテロ事件として日本史の教科書にも登場します。

 井上日召は「八紘一宇」などの標語を生んだ日蓮系新宗教、国柱会の会員でした。国柱会の信者には童話作家の宮沢賢治や満州事変を首謀した関東軍参謀の石原莞爾がいました。宮沢賢治と石原莞爾は全く共通点がないように見えますが「ユートピア思想」を思い描いていたという点では共通します。法華経に基づく信仰のもと、ユートピアを思想を童話で描いたのが宮沢賢治、満州という「新天地」において西洋の覇道に対抗する東洋の王道でユートピアを具現化しようとしたのが石原莞爾です。

 そして井上日召は、既得権益にしがみつく財界人を暗殺するテロによって、理想社会を実現しようとしたと言えるでしょう。本書では、そこに至るまでキリスト教や禅に触れた宗教遍歴がつぶさに描かれており、大変興味深いです。

 中島さんは現代日本の格差社会、就職難、ワーキングプアなどの諸問題に通底するものが、血盟団事件にはあると論じています。日本史の教科書では一行でしか触れられない一つの事件を題材に現代社会を照らし出す手法は圧巻の一言です。

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甲斐毅彦

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