「誰も戦争を教えてくれなかった」
1985年生まれの論客、古市憲寿さん(28)の戦争論、「誰も戦争を教えてくれなかった」(講談社、1890円)を読み、ご本人にインタビューさせていただきました。戦争といえば日本人は「暗く、悲惨な太平洋戦争」を連想しがちですが、米国、欧州、中国、韓国と世界中の戦争博物館を巡った古市さんには、従来と違う戦争像がみえてきました。中世の関ヶ原の合戦から近未来のサイバー戦争まで展開し、アイドルグループ、ももいろクローバーZとの対談で結んでいます。
はじまりはハワイの真珠湾にあるアリゾナ・メモリアルの訪問でした。戦勝国の誇りに満ち「さわやか」で「楽しい」展示館。そこには日本のように繰り返してはならない戦争への教訓や暗さはない。「戦争の描かれ方が日本とはまるで違うのが印象的でした。犠牲は悲しいが、ヒーローでもあるという物語が徹底されているんです」
では他の国はどうなのか。古市さんは、世界界中の戦争博物館を回ってみることにしました。万博のように戦争博物館が集まったポーランドのアウシュビッツ、日本軍の残虐性と中国の寛大さを強調する中国の南京大虐殺紀念館、戦争の疑似体験が出来る韓国・天安の独立紀念館…。戦争の記憶の残し方には、それぞれの国の流儀があります。
世界を歩き、古市さんが感じ取ったのは海外では進展しつつある「戦争博物館のディズニーランド化」が、良くも悪くも日本にはないということ。巻末の「戦争博物館ミシュラン」は古市さんの独断で採点。日本の施設は「エンタメ性」の評価が低いのです。「ある程度歴史を知っている意識の高い人でないと楽しめない博物館では、もったいない。多くの犠牲者を産んだ戦争のエンタメ化なんてとんでもない、という意見もあると思いますが、一方で戦争のことは風化していきます」。
巻末で年代生まれのももクロのメンバーたちと対談したのには、実は狙いがありました。「日本が最も長く戦った相手国は?」「日本と同盟国関係にあった国は?」。1931年の満州事変から太平洋戦争終戦までの20問のテストで彼女たちは珍回答を繰り返します。「彼女たちが特殊なのではなく10代の女の子の平均だと思います。調査をしてみると実は中高年、戦中派の方でも意外と正答率は高くないんです」。
戦争論からはそれますが、若者論の論客として、若者のツイッターへの悪ふざけ投稿をどう見ているのか聞いてみました。「擁護するつもりはないですけど、目くじらを立ててバッシングして何になるんだ、とも思います。店の冷蔵庫に入ることと労基法を守らずに若者を搾取することのどちからが国の損失になるかといえば後者。比較の問題ですが、かわいいものだと思います」
コメント