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2014年1月

2014年1月25日 (土)

「クラウド 増殖する悪意」

 ドキュメンタリー映画「A」「A2」でオウム真理教を内部から撮影し、ノンフィクション「A3」で教祖、麻原彰晃(松本智津夫死刑囚)の本質に迫った映画監督・作家、森達也さんの最新刊「クラウド 増殖する悪意」(dZERO、1575円)。

 クラウド(集団)が敵を求め「正義」を振りかざし、一人をたたきのめす。著書でその傾向が強まる日本社会を危惧する森さん著者インタビューをさせていただきました。

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 阪神大震災の後、地下鉄サリン事件が起き、教祖・麻原が逮捕されたのが1995年。「マイクロソフトが『Windows95』を世界同時発売したのが1995年です。一般市民にとってのインターネット元年。オウムの事件によって刺激された恐怖と不安がネットを通じてどんどん広がっていったのが、この19年間だと思うんです」。


 ネット上で攻撃の対象となる「敵」は殺人事件などの容疑者や北朝鮮、最近では領土問題や歴史認識の違いで関係が悪化する中国と韓国。匿名の誹謗中傷はエスカレートする一方です。民族差別的な言葉を使うヘイトスピーチによる街宣活動は社会問題化しつつありま。「攻撃している本人たちは『悪意』を『悪意』と思っていない。『正義』『善意』と思っているわけです。『悪意』だと自覚してやっているならばブレーキがかかるけど、無自覚なのが怖い。人間の最大の過ちはそういうことで起こると思うんです」。


 オウム信者たちが毒ガスサリンを散布したのも「悪意」ではなく「正義」と信じたからではないでしょうか。正しいと思うからこそブレーキがかからず、暴走する。そして善良な市民は「正義」を振りかざし、大勢で「敵」をたたきのめしにかかる。森さんは「今まで何か変だな、と思っていた方には、読んでやっと腑に落ちた、と思ってもらえれば」と期待しています。


 今月、元信者の平田信(まこと)被告の裁判員裁判が始まり、オウムの事件への関心が久々に高まっています。森さんは証言台に立った中川智正死刑囚と2010年に面会し取材しています。その話は「A3」のエピローグに収録されています。しかし、この裁判には全く関心がないそうです。傍聴にも行っていません。


 「事件の実行犯でもない平田の裁判が何でこんな大きなニュースになるのか。オウムの事件で解明されていない最大の闇は、麻原がサリンを撒くように命じた動機です。麻原の裁判こそ一審だけで終わらせず、真相を語らせるべきだった。動機が分からないからいまだに恐怖や不安がくすぶっている。監視カメラが増え、管理統制へと向かう時代の流れは、麻原の裁判をちゃんとやらなかったツケですよ」

 私は先日、平田被告の公判を傍聴して来ました。中川死刑囚が証言台に立ちましたが、衝立に阻まれ、その表情をうかがい知ることができませんでした。防弾パネルを設置し、顔を隠したのは「不測の事態を防ぐため」だそうですが、不測の事態とは具体的にどんなことでしょうか。今から中川死刑囚を狙撃する人物がいるとは私には思えません。

 衝立で顔を隠したのは、恐らく死刑囚への同情の念が広がることを防ぐため、だと私は考えています。死刑囚は憎らしい風貌をしていないといけない。しかし、面会した森さんは「不二屋のポコちゃんのようだった」と著書に記しています。

 解明されていないから不安や恐怖が無闇に広がる。森さんが指摘する一端は今回の裁判にも表れているように私には思えます。

 

 

甲斐毅彦

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