「ドキュメント 豪雨災害」
津波や地震は、ノンフィクションやルポといった形で語り継がれやすいですが、土砂崩れや洪水を対象としたノンフィクションは極めて少ない。取材対象として「地味」だからであり、文献を探すとなると専門書になってしまいます。
そんな中で、大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した稲泉連さんの「ドキュメント 豪雨災害」(岩波新書)は貴重なリポートです。2011年9月に紀伊半島の十津川村、那智勝浦町を襲った土砂災害を生々しく報告しています。
広島の土砂災害を上回る規模の土砂災害だったにもかかわ...らず、東日本大震災と同じ年であったが故に、報道の扱いも比較的小さく、もう忘れてしまっている方も多いのではないでしょうか。
災害についても「地味」なものと、その反対のものの2種類があるでしょう。災害報道においては「地味」で忘れられていく災害から埋もれてしまっている事実を掘り起こすのが重要なのではないか。そんなことを感じさせる1冊でした。
実は東京都民にとっても水害は他人事ではなく、敗戦直後の1947年にはカスリーン台風により、荒川が氾濫し、甚大な被害が出ています。この本の終章「首都水没への警告」は特に東京で暮らす方々にとって一読の価値があります。
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