「永山則夫 封印された鑑定記録」
ジャーナリスト、堀川恵子さんの「永山則夫 封印された鑑定記録」(岩波書店 2013年)を読み終えました。優れたノンフィクション作品が持ちうる力を感じ、思わず涙が出てきました。 1968年に起きたピストルによる連続射殺事件で4人の命を奪った永山則夫の精神鑑定記録。数十年間、封印されていた100時間を超える録音テープ入手した堀川さんは、射殺犯の背景にあったものを浮かび上がらせています。掘り起こさなければ永遠に埋もれたままだったの事実が綴られています。 永山事件後も無差別殺人事件は繰り返されています。厳罰化が凶悪犯罪抑止に役立っているかは単純に判断できかねると思いますが、殺人に至る犯罪者の心的背景を明らかにしていくという点では、まだまだ不足しているように私には思えます。
堀川さんは本書のあとがきにこう書いています。「日本の司法は、人々が納得する応報的な刑罰を科すことばかりに主眼を置かれ、被告人を事件に向かわせた根本的な問題に向き合ったり、同じ苦悩を抱える人々に示唆を与えるような機能はほとんど果たしていません」。まさに同感です。
繰り返される凄惨な殺人事件に胸を痛める方には是非一度この本を手に取ってみて欲しいです。永山事件から半世紀近くたった今、私たちは経験から何を学んできたか。考えさせられると思います。
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