声が人間の心身に与える影響を研究する音楽ジャーナリストの山崎広子さんの「8割の人は自分の声が嫌い 心に届く声、伝わる声」(角川SSC新書、836円)を23日付スポーツ報知の著者インタビュー欄で紹介させて頂きました。この本を読むと今までいかに声に無頓着のまま日常生活を送っていたかに気づかされます。日々、声を発する度に自分をさらけ出していたにも関わらず…。言葉はウソをつくけれど、声の真実は隠しようがない。声が変われば精神も身体も変わっていくそうです。
こうしてインタビューをする度に、録音テープを聞き返しますが、確かに聞き手である自分の声を聞くのは好きではないですね。山崎さんによれば話しのプロであるアナウンサーでさえ、けっこう嫌いな人は多いらしいです。 「自分の声がどんな情報を出しているかを意識できるようになれば、ほぼ成功。テープで自分の声を聞いても嫌にならなくなった時が効果が出たときなんです」。山崎さんによれば、自分で自分を肯定できる「オーセンティック・ボイス|真実性のある声」は、自分でなくては見つけられないといいます。
発する人の情報が全て含まれているという声。山崎さんが、国会中継を聞いていて、一番説得力を感じさせる力があるのは、自民党の石破茂氏だそうです。「素朴さもあり、やわらかさもある。何を言っても説得力を持ってしまうので、ある意味で危険なんですが(笑)」。一方で安倍晋三首相については「声自体は若々しさもあり、悪くない。第2次安倍内閣の頃が一番よい声でした。ですが今は硬質な金属的な声。相手に伝えようと言うよりも、自分の考えを通そうという『俺様』的な人に多い声です」
山崎さんは政治家を追及する記者たちの声についてもひと言。「テレビで記者会見を見ていてがっかりするのは質問者の声。例えば(大阪市長の)橋下徹さんの囲み取材では声の時点で負けてしまっている。記者にも『一筋縄ではいかないぞ』という声を身に着けて欲しいです」
最近では、イスラム国の事件に巻き込まれ、殺害されたとされるジャーナリスト、後藤健二さんの最後の音声メッセージが耳に残っているとおっしゃっていました。「いつ録音されたかは分からないけど心身状態もよく、2、3日後には殺されるという人の声ではなかった。今でも元気でいるような気がしてしょうがないんです」
今、芥川・直木賞(日本文学振興会主催)の授賞式で帝国ホテルに来ています。 「九年前の祈り」(「群像」9月号)で芥川賞を受賞した小野正嗣さん「サラバ!」(小学館)で直木賞受賞の西加奈子さんがが出席。それぞれ正賞の懐中時計と副賞の100万円を受け取りました。
小野さんは、これまでに影響を受けてきた文学者や受賞作の執筆中に重篤な病気を患って歳で亡くなった兄・忠敬さんへの思いを語り「この賞は兄にささげます」と締めくくりました。 直木賞選考委員の作家、浅田次郎さんは西さんの作品を選んだ理由を「小説になくてはいけないのは個性。(受賞作は)以前の作品に比べて少し丸くなってしまったかもしれないが、他の人が書かない作品だった」と説明。西さんの作品は個性的なのですね。
着物姿で壇上に上がった西さんは、緊張気味に「控室でお会いした選考委員の皆さんはキュートでステキで恐ろしいほどオーラが出ていました。勇気を出して言いますが、皆さんが妖怪に見えました」と笑わせ「私も皆さんのようなかっこいい妖怪になりたい」と独特の言い回しで抱負を語っていました。
以前から思想家で武道家でもある内田樹さんの本を読んでみたいと思っていました。初めて読んだのが「街場の戦争論」(ミシマ社)という本。期待以上に面白い本でした。ちょっと大げさに言えば、ふだんの風景が変わって見えるような気がします。
安部政権はなぜ、「戦争のできる国」を目指しているのか。改憲、特定秘密保護法、集団的自衛権、グローバリズム、就職活動などをふだんとは違う視点から論じられ、多くのことに気づかされました。中国や韓国・朝鮮を蔑視しながらも、米国には戦後一貫して従順に従属しているこの国の現状をちょっと違う角度から見つめなおしてみませんか。この本が出たのは昨年ですが、内田さんが「リーダー論」という観点から指摘していた安倍政権の問題点は、年明けに起きた「イスラーム国」人質事件での政府の対応のまずさを如実に予見していたように私には思えます。
内田さんは合気道七段の武道家でもあります。力をぶつけ合わず、他者と一体になり、宇宙と一体になり、万物との和合を目指す合気道という武道は、内田さんの思想の根底にあるように感じました。今後は内田さんの著作を読むのが楽しみです。
公開中の台湾・日本合作映画「KANO 1931海の向こうの甲子園」を観てきました。スクリーンに惹きこまれ、気づいた時には自然と落涙していました。こんな映画を観たのはいつ以来でしょうか。
1931年(昭和6年)、日本統治下時代に台湾代表として甲子園に出場し、決勝戦まで勝ち進んだ嘉儀農林学校の実話に基づいた作品です。 台湾の中でも1試合も勝ったことがない嘉農に、名門・松山商の元監督、近藤兵太郎が赴任。ゼロから甲子園を目指していきます。しかし、これはスポ根ドラマとしてだけ見ても、相当な完成度ですが、それだけでは終わらない多層性があります。日本人、漢人、台湾原住民で混成されたチームが一体となって一つの目標に突き進む姿には魂を揺さぶられます。 懐の深さを感じさせられる作品です。
記者会見のため六本木のテレビ朝日へ。1月28日に本社スタジオ内で、BS朝日で放送している「3Bjuniorの星くず商事」の収録中に3Bjuniorの歳の女性メンバーが倒れ、意識不明となったため、救急搬送されていたことを公表しました。
倒れたメンバーは病院で現在も専門医の治療を受けているとのこと。専門医によると、脳の血管に空気が入り、血流を妨げられている状態で「脳空気塞栓抜症」と診断されました。
このグループは10歳から16歳でももクロの妹分なんですね。テレビ朝日によると、収録時、26人のメンバーが5人1組で、ヘリウムが入った声を変える市販のパーティーグッズを使ったゲームを行っていました。
メンバーの1人が意識不明となったのは、ガスを一気に吸ったことによるものとみられています。パーティーグッズには「大人用」と記載されていましたが、番組スタッフが見落としていました。「吸うと声が変わる」というガスが入っていた缶は5000㏄。ヘリウムが80%で酸素が20%。商品は日本製で簡単に手の入るものですが、商品に異常があったのでしょうか。警視庁も原因を捜査しています。
武田徹常務取締役は「当初は早い回復が見込まれ、容体の推移を見守っていたことなどから公表を控えていたが、専門医の診断結果を得ることができ、新たな治療によって回復の兆しも見られ始めたことから、ご家族のご了解もいただき、皆さまにお知らせすることにした」と説明。専門医の説明によれば、4日には食事をすることもできるようになりましたが、意識は十分には戻っていない状態だそうです。
年明けから隙間時間を利用して読み始めた「21世紀の資本」(トマ・ピケティ)をやっと第1部「所得と資本」(~P116)まで読みました。
冒頭から「格差拡大の根本的な力」という命題から入り、産業革命以降の西欧の経済を膨大なデータを駆使して俯瞰していきます。ふだん経済学を勉強する上で100年以上昔の数値的データを検討することはあまりなかったので、私には斬新な視点に感じられました。バルザックなどの19世紀の小説にお金がどのように描かれてきたか、という文化的背景も検討しながら論理を進めていくので、なかなか興味深いです。最後のP608にたどり着くまでまだ先は長いですが、焦らずゆっくり読み進めようと思います。
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