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2015年9月

2015年9月30日 (水)

「移民の宴」

  9月に文庫化されたノンフィクション作家、高野秀行さんの「移民の宴」(講談社文庫)を読みました。誰も行かないところを取材し、面白おかしく書くことをモットーとする高野さんが、日本に住む外国人たちの日常的な食生活を取材したエンターティメントルポ。辺境に行かなくても、身近なところに未知の世界があることを再認識させてくれる名著です。

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 「成田のタイ寺院」「イラン人のベリーダンサー」「南三陸町のフィリピン女性」「神楽坂のフランス人」「群馬県館林のモスク」「朝鮮族中国人の手作りキムチ」など12章。東日本大震災のときにも在日外国人にスポットを当てているところが高野さんらしいと感じました。読めば、近所の外国人が「何を食べているのか」と気になりだすかもしれません。

 私は今月、埼玉県熊谷市で起きた連続殺人事件で、容疑者となったペルー人の男の背景を知るために、ペルー人コミュニティーがある群馬県伊勢崎市などを取材しました。ペルー料理店を経営している方々などは皆「ペルー人の印象が悪くなる」と悲しんでいました。

...

 そんな中で、水害に見舞われた常総市で支援物資の集積地として自身が営むブラジル・ペルーの食品店を提供しているペルー人男性を見つけ、話を聞かせてもらいに行きました。フェルナンデスさん(48)という方で日系ブラジル人の25歳の女性と結婚し、常総市のブラジル人コミュニティーで暮らしているのですが、自身の店舗にも約50センチ浸水して商品の大半は台無しになってしまったとのこと。

 そんな中でも「ペルー人もいい人ばかりじゃない。悪いヤツだっている。どこの国も同じだよ」などと話しながら、まかないのペルー風チャーハンと辛いサラダを勧めてくれました。私もはからずも「移民の宴」にありつけたのですが、何か勝手に高野さんの取材の追体験をしているような気持ちになりました。フェルナンデスさんが「国籍なんか関係なく、災害のときは助け合うものだ」と話していたのが印象的でした。

 高野さんの本の内容に戻りますが、読めば日本で暮らす外国出身の方々に親近感を持てるようになるのは請け合いです。「おわりに」と「文庫版へのあとがき」で高野さんは「これから日本が外国の人たちにとって、もっともっと住みやすい国になることを祈って止まない。なぜなら、そういう国は明るく気さくであるはずで、日本人にとっても住みやすいはずだからだ」と繰り返しています。私も全く同感です。

2015年9月13日 (日)

「現代暴力論『あばれる力』を取り戻す」

  先日、「紋切型社会」の著者、武田砂鉄さんをインタビューさせていただいた時にお薦めいただいた1冊がこちら。アナキズム研究を専門とする政治学者、栗原康氏の「現代暴力論『あばれる力』を取り戻す」(角川新書)です。

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 私たちは「暴力」をふるってはいけないと教わってきた。なのに一方的に国家などから「暴力」をふるわれ続けてはいないか。やられてもただ我慢しているしかないのか。そこで「あばれる力」ついて見つめ直してみようという一冊です。

 むやみやたらな暴力すべてを肯定している本ではありません。栗原氏は大正時代のアナキスト、大杉栄の思想、行動をなぞりながら、現代の私たちが自律的に生きていくための「あばれる力」の必要性を再考しています。

  筆者は、例えば警察に規制されながら秩序を守り、終わったら皆で仲良く撤収していくような「よい子たちのデモ」を嫌い、疑問を投げかけています。主張にそのまま賛同することはできないにしても、再考してみる価値のある考え方が示されていると思います。

2015年9月 1日 (火)

世界の辺境とハードボイルド室町時代

敬愛するノンフィクション作家、高野秀行さんと日本中世史専門の明大教授、清水克行さんの語りおろし対談本「世界の辺境とハードボイルド室町時代」(集英社インターナショナル)を読みました。

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 室町時代の日本と現代のソマリランドが驚くほど似ているという超時空比較文明論。奇をてらっただけの企画と思うなかれ。膨大な古文書を読み込んできた実力派の歴史学者とソマリ社会の奥の奥まで現地取材してきたノンフィクション作家の「魔球」キャッチボールは、帯で直木賞作家の中島京子さんが評しているとおり、まさに「目から鱗ボロボロ」なのです。こんな魔球対を間近で見られるのならば、喜んで球拾いでもやりますよ。とにかく一読をお薦めします。

 それにしても「謎の独立国家ソマリランド」に感銘を受け、「恋するソマリア」でさらに引きずり込まれ、まさかその次に室町時代に話が飛ぶとは。まさに奇想天外な展開です。

   私は未知のものを探り、それを面白おかしく書く「エンターティンメントノンフィクション」という高野さんのスタンスが大好きなんですが、改めてこの対談本を読んで感じたのは「エンタメノンフ」のテーマは、まだまだ無限にあるということです。

 異質なものの組み合わせはかみ合わないことのほうが多いのでしょうけども、かみ合ってしまったら新たな視点が生まれます。まさにこの本はその成功例ではないでしょうか。

 高野さんの対談相手となった清水さんは、立教大(史学科)のご出身で、なんと私の1学年下。同時期に立教のキャンパスで、こんなにも素晴らしい知性が育まれていたとは。これもまた新たな驚きでした。蛇足かもしれませんが、この本を読むときには日本史の教科書を横に置いて参照しながら楽しまれることをお薦めします。

甲斐毅彦

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