「移民の宴」
9月に文庫化されたノンフィクション作家、高野秀行さんの「移民の宴」(講談社文庫)を読みました。誰も行かないところを取材し、面白おかしく書くことをモットーとする高野さんが、日本に住む外国人たちの日常的な食生活を取材したエンターティメントルポ。辺境に行かなくても、身近なところに未知の世界があることを再認識させてくれる名著です。
「成田のタイ寺院」「イラン人のベリーダンサー」「南三陸町のフィリピン女性」「神楽坂のフランス人」「群馬県館林のモスク」「朝鮮族中国人の手作りキムチ」など12章。東日本大震災のときにも在日外国人にスポットを当てているところが高野さんらしいと感じました。読めば、近所の外国人が「何を食べているのか」と気になりだすかもしれません。
私は今月、埼玉県熊谷市で起きた連続殺人事件で、容疑者となったペルー人の男の背景を知るために、ペルー人コミュニティーがある群馬県伊勢崎市などを取材しました。ペルー料理店を経営している方々などは皆「ペルー人の印象が悪くなる」と悲しんでいました。
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そんな中で、水害に見舞われた常総市で支援物資の集積地として自身が営むブラジル・ペルーの食品店を提供しているペルー人男性を見つけ、話を聞かせてもらいに行きました。フェルナンデスさん(48)という方で日系ブラジル人の25歳の女性と結婚し、常総市のブラジル人コミュニティーで暮らしているのですが、自身の店舗にも約50センチ浸水して商品の大半は台無しになってしまったとのこと。
そんな中でも「ペルー人もいい人ばかりじゃない。悪いヤツだっている。どこの国も同じだよ」などと話しながら、まかないのペルー風チャーハンと辛いサラダを勧めてくれました。私もはからずも「移民の宴」にありつけたのですが、何か勝手に高野さんの取材の追体験をしているような気持ちになりました。フェルナンデスさんが「国籍なんか関係なく、災害のときは助け合うものだ」と話していたのが印象的でした。
高野さんの本の内容に戻りますが、読めば日本で暮らす外国出身の方々に親近感を持てるようになるのは請け合いです。「おわりに」と「文庫版へのあとがき」で高野さんは「これから日本が外国の人たちにとって、もっともっと住みやすい国になることを祈って止まない。なぜなら、そういう国は明るく気さくであるはずで、日本人にとっても住みやすいはずだからだ」と繰り返しています。私も全く同感です。
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