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2015年11月

2015年11月21日 (土)

北の湖理事長急逝

 日本相撲協会の北の湖理事長が亡くなりました。お体の具合はだいぶ悪いとはお聞きしていましたが、こんなに急に亡くなられるとは本当に残念です。スポーツ報知では長らく専属評論家をお務めいただき、私も相撲担当時代(2001~2006年)には大変お世話になりました。

 理事長は午前中、サウナに行くのが日課だったので、時間を見計らってよく押しかけました。サウナでくつろいでいるところを若造に直撃されて、さぞ迷惑だったことでしょう。「帰れ」と言われるわけでもないので、ずうずうしくも協会では聞けないような話をよく聞きだしたものです。

 お酒の席でもよくご一緒させていただきました。理事長の酒豪ぶりは有名で横に座るときには覚悟が必要でした。

 「甲斐、酒の飲み方を知っているか」

 「いえ、教えてください」

 「口から飲むんだ」

 「なるほど簡単なんですね」

 こんな言葉を交わして限界を超えるほど飲んで記憶をなくしたことが何度もありました。

 カラオケがお嫌いだったことも印象に残っています。ご自分で歌うことはまずありませんでした。一度だけ理事長がマイクを握って歌うマネだけしたのは「鳩ぽっぽ」。理由は「一番短い曲ですぐに終わるから」でした。 レコードを出して歌手デビューする関取がいるように、力士は歌好きな人が多いですが、理事長は「俺は歌の稽古したことがないから」といつも断っていたのを覚えています。史上最速で横綱になった理事長には、歌の練習をする暇はなかったのでしょう。

 人間味のある理事長の思い出は尽きません。まだ亡くなったことが信じられないです。

 

2015年11月16日 (月)

「他人を非難してばかりいる人たち」

異質なものを忌み嫌う国民性は今に始まったことではありませんが、インターネットが普及してからの匿名による他人へのバッシングのしつこさ、程度の低さにはうんざりします。

 幻冬舎新書の新刊「他人を非難してばかりいる人たち バッシング・いじめ・ネット私刑」は、精神科医の岩波明さんが、他者に対して不寛容になってしまった私たちを分析した最新の「日本人論」です。

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 岩波さんは、2004年のイラク人質事件、バッシングで自殺に追い込まれた議員や大臣などの実例を挙げ、一度バッシングの火がつくこと過剰に炎上してしまうパターンを分析しています。私自身も、佐村河内さんや小保方さんを「血祭り」に上げたのは、ある意味で「善意」の暴走だったのではないかと考えていますが、本書を読み、あらためて気づかされる点が多かったです。

 私たちはいつ、どうしてこんなに不寛容になってしまったのか。自戒の気持ちを込めて、一度考えてみても良いのではないでしょうか。

2015年11月15日 (日)

「パリ市民の安全と平和を願う」

 パリでの同時多発テロ以降、Facebook上では「パリ市民の安全と平和を願うプロフィール写真」という設定ができるようになり、プロフィールの顔写真にフランス国旗のトリコロールをかぶせる方が急増しています。

 もちろん全く悪いことだとは思わないのですが、それならば英米仏軍の空爆でシリアやアフガニスタンの子どもや女性が亡くなったときにも是非、シリア国旗やアフガニスタン国旗をかぶせるべきではないでしょうか。

 まさか「トリコロールのようにシャレオツじゃないからやらない」なんて言わない欲しいと思います。

2015年11月 7日 (土)

「動物翻訳家」

「ゼロ! 熊本市動物愛護センター10年の闘い」などの著書があるノンフィクション作家、片野ゆかさんの新刊「動物翻訳家」(集英社)を読みました。動物園で暮らす動物たちの行動からその心を読み取る飼育員たちを取材した作品。引き込まれて一気に読んでしまいました。

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  これまでに私が読んだ動物を題材にした作品で印象に残っているものは、小学校高学年の頃に教科書に出ていた椋鳩十の「大造じいさんとガン」や本多勝一の「きたぐにの動物たち」ぐらい。印象に残るのは動物を通じて、いずれも人間のあり方を描いているからだと思います。

 その点では「動物翻訳家」も同じでしょう。登場するのはペンギン、チンパンジー、アフリカハゲコウ、キリンの4者ですが、作品では彼らが「イイタイコト」を読み取ろうとする飼育員の姿が描かれています。最初は、動物たちとの心が通い合うストーリーなのかと思いましたが、現実は生易しいものではないようです。動物たちは世話をする人に対しても、凶暴であったり、無関心であったりすることもある。そんな彼らの心も翻訳しようとする飼育員たちの姿に心が打たれます。

...

 作品のキーワードとなっている「環境エンリッチメント」という言葉は、動物の福祉と健康のために、飼育動物に刺激や選択の余地を与え、動物の望ましい行動を引き出すことを言うそうです。動物本来のエネルギーを引き出すことによって、動物も生き生きとして、それを観る人間も生き生きできるということでしょうか。

 昔、サザエさんの四コマ漫画にこんなのがありました。波平がカツオを連れて、動物園に行くが、シロクマなどの動物はぐったりと寝てばかり。波平が「つまらん」とつぶやきながら帰宅すると、サザエさんたちも昼寝をしていたというオチ。この漫画が描かれたころには動物園の運営者に「環境エンリッチメント」という意識はほとんどなかったのかもしれません。

 片野さんの旦那様は「謎の独立国家ソマリランド」「西南シルクロードは密林に消える」などの名作で知られるノンフィクション作家の高野秀行さんです。「動物」と「辺境」で主テーマは異なるご夫婦ですが「動物翻訳家」のエピローグを読み、作品の芯の部分には共有されているものがあるように感じました。

 人間とはまったく世界観の中で生きる動物たちは「究極の他者」。違った世界観を持つもの同士が、共存共生していくにはどうするべきか。思わず吹き出してしまう話が散りばめられている高野さんの作品にも、実はそんな思いが込められているように思うのです。

 実は「動物翻訳家」を読む直前に私もまったく別のところで「環境エンリッチメント」という言葉を聞きました。東京で売り出している東京産の豚ブランド「TOKYO X」を取材したときです。

 「豚たちが暮らしやすい環境で育てる『動物福祉』にこだわった豚なのです」と担当者。うーん、どうせ食べられてしまうのに「福祉」とは・・・。と思いましたが、これでようやく合点がいったような気がします。

2015年11月 1日 (日)

佐木隆三さん逝去

 ノンフィクション作家の佐木隆三さんが、下咽頭がんのため、78歳で亡くなりました。地下鉄サリン事件などの取材でも知られていますが、なんといっても直木賞受賞作の「復讐するは我にあり」(講談社文庫)が白眉です。1963年から翌年にかけて、大学教授や弁護士を偽りながら5人を殺害した西口彰の事件を題材としたノンフィクション・ノベル。「事実は小説より奇なり」と言いますが、事実に基づいて小説にした成功例です。佐木さんはトルーマン・カポーティーの名作「冷血」を意識して書かれたと言われています。

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 原作はもちろんですが、1979年に公開された今村昌平監督、緒形拳主演の映画も素晴らしい作品でした。そして倍賞美津子の美しいこと。今村監督、緒方拳、三國連太郎が亡くなり、佐木さんも亡くなった。月並みな言葉ですが、昭和がまた遠くなりました。

甲斐毅彦

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