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2015年11月 7日 (土)

「動物翻訳家」

「ゼロ! 熊本市動物愛護センター10年の闘い」などの著書があるノンフィクション作家、片野ゆかさんの新刊「動物翻訳家」(集英社)を読みました。動物園で暮らす動物たちの行動からその心を読み取る飼育員たちを取材した作品。引き込まれて一気に読んでしまいました。

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  これまでに私が読んだ動物を題材にした作品で印象に残っているものは、小学校高学年の頃に教科書に出ていた椋鳩十の「大造じいさんとガン」や本多勝一の「きたぐにの動物たち」ぐらい。印象に残るのは動物を通じて、いずれも人間のあり方を描いているからだと思います。

 その点では「動物翻訳家」も同じでしょう。登場するのはペンギン、チンパンジー、アフリカハゲコウ、キリンの4者ですが、作品では彼らが「イイタイコト」を読み取ろうとする飼育員の姿が描かれています。最初は、動物たちとの心が通い合うストーリーなのかと思いましたが、現実は生易しいものではないようです。動物たちは世話をする人に対しても、凶暴であったり、無関心であったりすることもある。そんな彼らの心も翻訳しようとする飼育員たちの姿に心が打たれます。

...

 作品のキーワードとなっている「環境エンリッチメント」という言葉は、動物の福祉と健康のために、飼育動物に刺激や選択の余地を与え、動物の望ましい行動を引き出すことを言うそうです。動物本来のエネルギーを引き出すことによって、動物も生き生きとして、それを観る人間も生き生きできるということでしょうか。

 昔、サザエさんの四コマ漫画にこんなのがありました。波平がカツオを連れて、動物園に行くが、シロクマなどの動物はぐったりと寝てばかり。波平が「つまらん」とつぶやきながら帰宅すると、サザエさんたちも昼寝をしていたというオチ。この漫画が描かれたころには動物園の運営者に「環境エンリッチメント」という意識はほとんどなかったのかもしれません。

 片野さんの旦那様は「謎の独立国家ソマリランド」「西南シルクロードは密林に消える」などの名作で知られるノンフィクション作家の高野秀行さんです。「動物」と「辺境」で主テーマは異なるご夫婦ですが「動物翻訳家」のエピローグを読み、作品の芯の部分には共有されているものがあるように感じました。

 人間とはまったく世界観の中で生きる動物たちは「究極の他者」。違った世界観を持つもの同士が、共存共生していくにはどうするべきか。思わず吹き出してしまう話が散りばめられている高野さんの作品にも、実はそんな思いが込められているように思うのです。

 実は「動物翻訳家」を読む直前に私もまったく別のところで「環境エンリッチメント」という言葉を聞きました。東京で売り出している東京産の豚ブランド「TOKYO X」を取材したときです。

 「豚たちが暮らしやすい環境で育てる『動物福祉』にこだわった豚なのです」と担当者。うーん、どうせ食べられてしまうのに「福祉」とは・・・。と思いましたが、これでようやく合点がいったような気がします。

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コメント

 先輩、お久しぶりです。
 コメントに気づくのが遅くなり、すみません。片足ダチョウのエルフですか。思い出しました。けなげでとても哀しいお話でした。

 久しぶり!
 動物物といえば、小学生の頃国語の教科書に載っていた「片足ダチョウのエルフ」これです! ちょっと悲しい結末の話ですが、今でも強烈な印象を残しています。
 いすゞ自動車のトラックに「エルフ」というトラックがありますが、これを街で見る度「片足ダチョウのエルフ」を思い出します…。教科書に載っていたので印象に残っている方も多いと思います…。

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甲斐毅彦

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