「なぜ私は韓国に勝てたか」
2014年10月、朴槿惠大統領への名誉毀損罪で起訴された産経新聞前ソウル支局長の裁判闘争記「なぜ私は韓国に勝てたか 朴槿惠政権との500日闘争」(加藤達也著、産経新聞出版)を読みました。
1つのネットコラムをきっかけに朴大統領への名誉毀損罪でソウル中央地検に起訴された加藤さんが、2015年12月に「無罪判決」を勝ち取るまでの法廷闘争の表と裏をつづった闘争記です。
加藤さんは新聞記者として私の5年先輩ですが、学生時代には私と全く同じ時期の1990年夏に韓国を自由旅行されていることを本を読んで知りました。フェリーで釜山に渡り、北上してソウルを訪れたルートも似ていてびっくり。それだけに「是々非々」の姿勢で、これまで韓国人を見つめて来られたということを自分の体験とダブらせて感じることができました。
この言論弾圧事件は、韓国国内で、「嫌韓」の急先鋒メディアと捉えられている産経新聞を韓国が狙い撃ちしたものだと私は思っています。私自身、産経新聞の韓国に対する論調に100%同調するつもりは全くありませんが、起訴したこと自体が、韓国社会の未成熟さをさらけ出す事件となってしまいました。
さらけ出す結果を導いたのは、加藤さん自身が起訴された後も言論人であることを貫いたからではないでしょうか。当事者でありながらも加藤さんは、韓国の司法、メディアの実態や国民性を冷静に取材・分析し続けました。このノンフィクション作品は、まさにその結晶と言ってよいと思います。
私は、この判決後に韓国メディアの受け止め方に最も注目していましたが、本書の中では、韓国各紙の社説(当然歯切れの悪いものが多いけど)も紹介されています。
加藤さんは「おわりに」でこう書かれています。
「韓国に対してかなり辛辣なことも書きましたが、決して韓国人一人ひとりが嫌いなわけではありません。韓国が成熟した民主主義国家になることこそが、新しい日韓関係が生まれる第一歩だとも思っています」
隣国との間に存在する溝を埋めるためには、両国民が事実を客観的にとらえ、共通認識できる幅を少しでも広げていくことだと私は思っています。
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