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2016年3月23日 (水)

ドキュメンタリー映画「FAKE」

  聴覚障害者の作曲家として「現代のベートーベン」などと呼ばれていた佐村河内守さん(52)のゴーストライター騒動後の素顔に迫ったドキュメンタリー映画「FAKE」(森達也監督、109分、6月4日から東京・渋谷のユーロスペースで公開)を試写会で観てきました。

 森さんが佐村河内さんの自宅でカメラを回したのは2014年9月から今年1月までの1年4か月の間。佐村河内さんは、音楽家の新垣隆さんが週刊文春誌上で、佐村河内さんのゴーストライターを務めていたことなどを告白したことを受けて14年3月、長髪を切り、ヒゲをそり、サングラスを外して謝罪・釈明会見を行って以降は、ほとんどマスコミの取材を受けず、沈黙を守り続けていました。騒動後の素顔が公になるのは、これが初めてとなります。

Photo


 

 思わず作品の内容を書いてしまいたくなりますが、内容に触れれば触れるほど作品の価値を下げてしまうことになるので、ここはぐっとこらえます。一言で言えばすごく面白い。そして考えさせられる映画です。難しいことは考えず、好奇心だけで観にいって良いと思います。是非お勧めしたい作品です。


 森さんのドキュメンタリー映画の代表作はオウム真理教(現・アーレフ)の信者の日常を内部から撮影した「A」「A2」です。社会から袋だたきにされた側を内部から撮るという視点では「FAKE」も共通します。某紙に出た「佐村河内氏への見方が180度変わる」という森監督のコメントが一人歩きしましたが、森監督がそんな発言をするはずはありません。作品を観てもちろん180度変わる人もいるでしょうが、90度変わる人、45度変わる人もいるでしょう。受け止め方はそれぞれのはずだ。中にはまったく変わらない人だっていると思います。森監督は「様々な解釈と視点があるからこそ、この世界は自由で豊かで素晴らしい」として作品をどう解釈するかは観る人に委ねています。


 作品が公開されれば、賛否の声が上がり、話題になるのは間違いないでしょう。その中で「カメラを向けられたことで、佐村河内は普段とは違うように装っているのではないか」という声が出てくると思います。


 この点について、森さんは自覚的です。「ドキュメンタリーは嘘をつく」(草思社)という自著の中で、森さんは、人はカメラを向けられた時点で無意識的に演じてしまうというドキュメンタリーには不可避の宿命について触れています。完璧に演じさせないためには隠し撮りする以外にはないはずです。


 映されているのはあくまでカメラを向けられた佐村河内さんであり、カメラを向けられたことで変化する佐村河内さんとして観るべきでしょう。


 観賞後はその前提で多くのことを考えさせられました。では本当にだましているのは誰なのか。告発した新垣さんなのか、佐村河内さんなのか。もしくは映像を撮った森さんなのか。そもそも自分を含めて人をだましたことがない人がいるのだろうか。そしてだました人が再挑戦のチャンスを与えられない世の中でいいのだろうか、と。


 多くの人が観るべき作品です。「ペテン師と天才 佐村河内事件の全貌」で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した神山典士さんや新垣さんも観るべきだと思います。そして是非感想を聞いてみたいと思います。

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甲斐毅彦

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