高校山岳部で顧問の先生に雪山の素晴らしさを教えて頂き、大学でも山岳部で四季の山を登っていたものとして、今回の栃木・那須での雪崩事故に胸を痛めています。教職員の皆様は純粋に積雪期登山の素晴らしさを10代の若者に伝えた伝えたかったのでしょう。それが裏目に出たと思うと残念でなりません。

講習の責任者だった栃木県県高等学校体育連盟登山専門部委員長の記者会見を聞き、事故現場の俯瞰図や地形図を見ましたが、どうしても理解できないことが何点かあります。
1つ目はなぜラッセル訓練の場所としてあの急斜面を選んだのか。
積雪時の歩行訓練が必要なのは当然ですが、なぜ尾根筋へと続く急斜面を選んだのでしょうか。樹林帯を選択したのは雪崩の危険を回避するためだったのかもしれませんが、あの斜面は高校生の登山訓練に適しているとはとても思えない。管理されたスキー場付近も30センチ程度の積雪があったそうなので、その近辺で十分だったのではないでしょうか。
2つ目は樹林帯を登りきって、尾根筋まで出てしまったのはなぜなのか。
茶臼岳山頂へと続く尾根筋まで出てしまったということは、茶臼岳登山を中止した意味がほとんどなくなる。事故当時は吹雪いており、司視界が悪かったとの情報もあり、樹林帯を抜けきったということに引率者が気づいていなかった可能性もありますが、位置確認すらできない状態だったのならば、それこそ即座に引き返すべきだったのではないでしょうか。
ラッセル訓練の1班を先導していたのは、登山経験のある真岡高校の教諭でした。事故当時の状況はこの方が一番良く知っているはずです。栃木県教委に問い合わせたところ、事故で負傷されて入院されたとのことですが、是非上記の2点については、きちんと説明をして頂きたい。事故当時現場にいなかった委員長の話だけでは全く解明されていません。
登山を経験した者として思うのは、雪山に来れば気持ちが高揚し、本能的に少しでも上に登ってみたいと思ってしまうということ。ましてや講習会の主役は体力のある高校生たちです。引率した教員が、登山は中止になってしまったが、少しでも茶臼岳の近くまで登らせてやりたい、という気持ちになってしまったのは想像に難くありません。
栃木県教委は引率教員は「登山経験が豊富だった」としていますが、この事故状況からみて私は指導者に相応しい経験を積んでいたという点が疑わしいと思っています。
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