映画「タクシー運転手 約束は海を越えて」
韓国で大ヒットした映画「タクシー運転手 約束は海を越えて」を新宿で観てきました。1980年5月の光州事件をテーマにした作品。とても楽しみにしていったのですが、期待以上の面白さでした。絶対お勧めです。
何よりもエンタメ作品としての出来が秀逸なのですが、民間人168人が犠牲になり、鎮圧した側の軍人、警察官も27人が死亡した大騒乱を圧倒的な迫力でリアルに描いています。
光州事件とはざっくり言えば、民衆運動の拠点となっていた全羅南道光州で、学生・労働者の民主化運動を戒厳軍が武力弾圧し、多数の死傷者が出た事件です。朴正煕(박정희)大統領暗殺後の1979年12月、全斗煥を中心とする軍部が実権を掌握し、非常戒厳令を全国に拡大したことへの市民の反発が発端でした。
名優、ソン・ガンホが演じる主人公は純朴で人間味あふれるソウルのタクシー運転手。学生デモのとばっちりで商売上がったりだ、と嘆いているところで、光州への潜入取材を試みるドイツ人ジャーナリストを乗せて光州へ向かうことになります。
政治などまったく関心がなかったタクシー運転手が、この騒乱に巻き込まれてしまうハチャメチャな話。ですが、視点は一貫して民衆の側から描かれており、また弾圧があるところにこそ、報道する者の使命があるということを強く感じさせる作品でした。
まだ当事者がたくさん生きているこの騒乱をエンタメ作品にしてしまうことだけでも、日本との国情の違いを感じさせられます。ただ、現在の文在寅大統領は「今の政権は光州民衆運動の延長線上にある」と宣言していますし、ある意味では作品化の機が熟したと言えるのかもしれません。
http://klockworx-asia.com/taxi-driver/
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