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2019年5月 8日 (水)

「スッポンの河さん 伝説のスカウト河西俊雄」

 ノンフィクションライター、澤宮優さんの文庫本新刊「スッポンの河さん 伝説のスカウト河西俊雄」(集英社文庫)を読みました。


 江夏豊、掛布雅之、野茂英雄、福留孝介…。野球に興味がない人でも、名前は知っている名選手たちを発掘し、次々に獲得して世に送り出した伝説的スカウトの評伝。一人のスカウトを追う視点で描かれた、遠くなりゆく「昭和球界史」と言える一冊です。

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  日中戦争の最中の1939年に明大に進学し、卒業後は陸軍に入隊して、乗っていた船が東シナ海で潜水艦により撃沈された経験を持つ河西は、南海ホークスや大阪タイガースで外野手として活躍。盗塁王になるなどの実績がありましたが、本領を発揮したのは、指導者を経てスカウトに転進した引退後でした。


 食いついたら離れないことから「スッポンの河さん」と呼ばれたが、「仏の河さん」とも呼ばれた。本書では、スッポンにして仏でもあった河西の人間性が選手たちとのエピソードを交えてつづられています。感銘を受けたのは、昭和という時代にあって、河西が自分の息子ほどの若い選手たちに対する態度が「上から目線」ではなく、常に対等に接していたという点です。スカウト歴40年で入団させた選手は約300人に及ぶといいます。


 昔のスカウトと言えば、強引なイメージも付きまといますが、河西が大切にしたのは「誠意」だったと言います。駆け引きが付きものの世界で「誠意」を貫くのは容易なことではなく、人柄があってこそなし得たことなのかもしれません。


 河西がスカウトだった時代に比べれば、インターネットなどでの情報化が進み、名選手情報を均一化して来ています。河西のように目が効くスカウトが、隠れた逸材を発掘して来るというケースは減ってきているようです。そんな背景を踏まえつつ、本書の最終章ではスカウトの現況に触れ、金足農から日本ハムに入った吉田輝星や大阪桐蔭から中日に進んだ根尾昂を河西だったらどう見るか、という視点で結ばれています。

 AIの時代に突入して、どんなに情報化が進んでも、最終的に「人を見抜く目」というのは人間の目に他ならない。一人のプロ野球スカウトの人生を通じてここで描かれたことは、人間が生きる社会の中で、普遍的なテーマだと言えるのではないでしょうか。

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甲斐毅彦

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