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2019年9月

2019年9月30日 (月)

映画「帰れない二人」

渋谷のル・シネマで中国映画「帰れない二人」(ジャ・ジャンクー監督)を観ました。

 山東省の裏社会で生きるヤクザ者の男とその恋人の物語なんですが、舞台が2001年から始まり、北京五輪開催、三峡ダムの完成、経済の急成長など現代の中国の姿が映し出されています。

 ストーリーそのものよりも、私にはその情景の方が興味深く感じられましたし、制作者の意図もそこにあるようです。中国の映画にはいまだに検閲があり、表現者にとっては締め付けをどうすり抜けるかという努力を常にしなくてはならないようです。

 それにしてもモウモウと煙る喫煙のシーンが非常に多く、画面を観ているだけで煙たく感じるほど。ある意味で「コミュニケーションは煙草でとる」という従来の中国の姿を映し出しているのだな、と思いました。

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2019年9月16日 (月)

「戦国廃城紀行」

ノンフィクション作家・澤宮優さんの「戦国廃城紀行 敗者の城を探る」(河出文庫)を読みました。

 城巡りですが、大坂城、姫路城、熊本城といった天守閣を見物できる名城はまったく登場しません。徳川家康の敵となった石田三成の佐和山城、織田信長を討った反逆者たる明智光秀の坂本城、秀吉に仕えた加藤清正が勝者から敗者に転じたことを物語る鷹ノ原城…。登場する12の城は戦国時代に疎い私には、すべて初耳のものでした。

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  しかし、それも無理はないでしょう。これらの城址は歴史上の「負け組」が遺していったもの。私たちがこれまで学んできた歴史は、勝者の歴史であり、ここで綴られている敗者たちの物語は、めくるめく知られざる世界なのです。

 かつて、戦死した巨人軍捕手、吉原正喜の生涯を描いた「巨人軍最強の捕手」(晶文社)でミズノスポーツライター賞を受賞した澤宮さんの主分野は、野球をはじめとするスポーツです。廃城というテーマは、あまりにもかけ離れているようにも感じますが、時空を超えて貫いているのは「光が当たらない者への眼差し」でしょう。

 「負け組への応援歌」をモットーとしている澤宮さんがスポーツノンフィクションで描く対象はヒーローやエースといった第一線のアスリートよりも、脚光を浴びたとは言えない選手の方が多い。「負け組」に視点を置いてこそ、初めて見えてくる世界を描くのが、澤宮さんの真骨頂でしょう。

 大学時代に考古学を専攻されたことを考えれば、歴史上の「負け組」に視点を向けることにも合点がいきます。

 若者は就職難、高齢者は貯蓄がなければ生きられない社会になり、自殺者は増加の一方。弱者にとって優しいとは言えない今の世の中で生きる私たちにとって、敗者の城から時空を超えて聞こえて来るメッセージに耳を傾けることは、決して無駄なことではないと思います。

甲斐毅彦

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