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2019年10月

2019年10月30日 (水)

「辺境メシ」

ちょうど1年前に出版されたノンフィクション作家、高野秀行さんの「辺境メシ」(文芸春秋)を今さらながら読み終えました。読了が大幅に遅れたのには2つ理由があります。

 一つは2016年から18年にかけて「週刊文春」で連載していた時から毎回楽しみにしていて、すでに読んでしまっていたためです。

 もう一つは、あまりにも面白いので読み進めるのが惜しいと思っていたためです。本当に好きな小説には、こういう感覚がありますよね。

 巻頭のカラー写真を見ながら改めて読んでみると、連載の時以上に一つひとつの「辺境メシ」が強烈に感じられます。ヒキガエルジュース、サルの燻製脳味噌、胎盤餃子、アマゾンのおばさんによる口噛み酒…。

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 私も比較的「ゲテモノ」には挑戦してみるタイプなのですが、「さすがにこれはちょっと…」と腰が引けてしまうものも。高野さんの未知のものへの好奇心、探求心が、やはり筋金入りのホンモノであることを思い知らされます。

 同じように食べるのが無理であっても、この本を読めば、「食」の可動域を広げてみようという勇気が湧いてくること請け合いです。

 高野さん自身が書いているように、ここに挙げられたのは地球上にある「変な食べ物」のごく一部でしょう。これから訪れる初めての土地で、「辺境メシ」を自分で発見する歓びを是非、味わってみたいと思います。

2019年10月13日 (日)

「序列を超えて。ラグビーワールドカップ全史」

 ラグビーW杯観戦をお楽しみの方にお勧めしたい一冊が、スポーツライターでラグビー解説者の藤島大さんの「序列を超えて。 ラグビーワールドカップ全史 1987―2015」(鉄筆文庫、960円)です。

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 藤島大さんは数多いスポーツライターの中でも際立っ て文章が粋で、屈指の名文家の一人だと思います。東京新聞夕刊で連載されていた頃は毎回記事を切り抜いて勉強させて頂いていました。
    早大ラグビー部出身でいらっしゃるということもあり、やはり「本職」はラグビーです。本書は1987年の第1回W杯からジャパンの南アフリカ撃破に沸いた第8回W杯までを現地取材して発表して来た文章を再構成したものです。
     何よりもこれまでの流れがよく分かりますし、ジャパンはよくぞここまで強くなったものだ、と改めて感心してしまいます。思わず「へー」と声が出るエピソードも満載です。
    いよいよ決勝トーナメント直前ですが、この1冊を読んで観戦すれば楽しさは何倍にも膨らむと思います。

2019年10月12日 (土)

「ロウソクの科学」

ノーベル化学賞を受賞した吉野彰さんが、小4の時に先生に勧められて読み、科学者になるきっかけとなったという19世紀英国の科学者、ファラデーの「ロウソクの科学」を読みました。

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 私が中野の明屋書店でこの本を買ったのは、中1だった1983年。「秋だから読書を」という以外には、平積みになっており、160円という廉価だったというぐらいしか理由はありませんでした。

 ロウソクを使っての科学実験の話なのですが、そもそも理科が苦手な私は、まったく引き込まれず、10ページぐらいで挫折。その後も読まないまま眠り続けていました。

 この度、吉野さんが小4の時に読んだと聞いて、36年ぶりに再読。中学生の時の私が挫折したのは無理もありません。今読み返してもけっこう難しいのです。ただ、この1冊が科学の世界への開眼のきっかけとなるというのはなんとなく分かる気がしました。

 この本は1860年にファラデーが英国王位研究所で、少年少女向けに、燃焼時の物理・化学現象についてロウソクを題材にして行った講演を書籍化したものです。

 ロウソクを使って炎の源・構造について説明するところから始まり、燃焼のための空気の必要性、水の性質、空気の中の酸素、大気の性質・・・と展開していきます。現在、教育テレビなどの科学教育番組になじんでいる私たちにとっては、あまり斬新さはありませんが、19世紀の子どもたちは、生活の中でも必需品だったロウソクを使って展開する講義には知的好奇心をそそられたことでしょう。その生き生きとした様子は、この講演録から感じ取ることができました。

 吉野さんの受賞後、「ロウソクの科学」は品薄になっているそうです。もっとも一般的な岩波文庫や、角川文庫も売り切れ状態。ちなみに私が持っている京大名誉教授・吉田光邦訳の講談社文庫はすでに絶版。アマゾンで調べたら10014円という高額がついていました。購入時160円でしたが、36年で60倍以上、価値が跳ね上がったことになります。中1の時にこの1冊を買った自分を初めて褒めてやりたい気持ちになりました。

 

2019年10月 7日 (月)

「国境を越えたスクラム」

 9月22日付の読売新聞書評欄でジャーナリストの森健さんが紹介されていた「国境を越えたスクラム」(山川徹、中央公論新社)を読みました。 
 W杯3連勝中でいよいよ決勝トーナメント進出が見えてきた日本代表のメンバーは31人中15人が外国出身選手。「ガイジンばっかり」などと冷めている方には、是非お勧めしたいノンフィクションです。

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  彼らはなぜ国境を越えて、日本でスクラムを組むことを決めたのか。本書では海外組黎明期のトンガ人留学生選手たちへの取材でその経緯を丁寧に描いていきます。1987年の第1回W杯で日本代表初トライを決めたノフォムリは、当初ソロバンを学ぶためにトンガから大東文化大に留学したのが、そのきっかけだったというエピソードは特に印象に残りました。
 筆者の山川さん自身も山形中央高校ラグビー出身で、2、3年時に花園に出場している元選手。当時、高校ラグビー初の留学生として仙台育英で注目されていたニュージーランド出身のブレンデン・ニールソン(ニールソン・武蓮傳)については、フィールド上で交わった選手目線での印象を描いた上で、現在の本人にインタビューをしています。彼らが海を越えて日本でラグビーに取り組んだ思いが、こんなに熱いものだったとは。屈強な留学生を集めての「勝利至上主義」という批判が、偏った見方であることに読者は気づかされると思います。
 海を越えて桜のジャージを着るようになったのは、トンガやニュージーランドなどのラグビーが盛んな国の出身者だけではありません。本書の最終章では日本代表になった韓国出身の選手たちにスポットを当てています。
 私は以前からサッカーのようにラグビーも日韓の実力が拮抗するようになったら面白いだろうな、と想像して来ましたが、ラグビーに関しては日本の競技人口18万人に対して、韓国は2000人にも満たない。つまり100分の1程度しかいないわけです。純粋に高いレベルを目指す韓国のラグビー選手が、頗る環境が整った日本代表に憧れるというのは、むしろ当然なのかもしれません。
 現在の日本代表で活躍しているプロップの具智元もその一人。ラグビーを通じて日韓の架け橋になりたい、という思いには、心から拍手を送りたいと思います。
 今年4月に改正入管法が施行され、外国人労働者の受け入れを拡大しました。差別を助長しかねないこの政策には疑問がありますが、日本社会は益々外国出身者との共生を目指すべき環境になっていくことは間違いありません。異国から来た能力を日本社会でどう生かしていくか。
 勝利という一つの目標へと向かう国境を越えたスクラムには、偏狭なナショナリズムを超えた崇高とも言えるスピリットがあるのではないか。これからの日本社会が、そこから学び取るべき智慧は、汲みつくせぬほどあるように思います。

甲斐毅彦

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