ブログ報知

スポーツ報知ブログ一覧

« 2020年5月 | メイン | 2020年7月 »

2020年6月

2020年6月27日 (土)

「国家と移民」

集英社新書の最新刊「国家と移民 外国人労働者と日本の未来」(鳥井一平著)を読みました。

 外国人労働者なしでは成り立たない今の日本社会。昨年4月には入管法が改正され、「特定技能」による受け入れが国策として始まりました。しかし、いまだに「時給300円」などのあり得ぬ待遇で彼らを使い捨てることがまかり通っている日本は、受け入れるだけの成熟した社会になっているのでしょうか。

Photo


 
 

  著者の鳥井一平さんは「移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)」の代表理事として、長きにわたって外国人労働者たちを支えている人物。私はジャーナリスト安田浩一さんの著書「ルポ 差別と貧困の外国人労働者」(光文社新書)を読んで鳥井さんの存在を知り「こんなすごい人がいたのか」と感銘を受けていたのですが、著書を読んで益々尊敬の念が高まりました。

 目指すのは、労使対等の原則が担保される多民族多文化共生社会。これまで人権侵害に遭ってきた外国人の立場で支援をしてきても、労使双方の立場を「正義」と「悪」では二分できないと鳥井さんは言います。40歳の時には未払いの賃金債権を差し押さえに立ち会った時には経営者からガソリンをかけられ、火を放たれ、全身に大やけどを負うということもありました。

 そこで鳥井さんは「使」側も弱い立場であることに気がつきます。文字通り全身で外国人たちの労働争議に向かい合ってきた体験には並々ならぬ説得力を感じました。

2020年6月20日 (土)

「女帝」

小池百合子東京都知事の評伝「女帝」(石井妙子著、文藝春秋)を読み終えました。評判に違わぬ読み応え。とても面白いのですが、小池さんによって数々の人々が翻弄されてきたことや、現在は都民の生命、生活がこの人に委ねられているという事実を考えれば決して笑うことはできません。

 安っぽい暴露本ではなく、小池さんを生い立ちから非常に深く、丁寧にしらべあげた本格的な人物ノンフィクションです。最大の読みどころはカイロ大学時代に塗り込んだ虚飾。そこに至る経緯とその後の歩みをみれば半端ではない説得力があります。私は政治の取材をしていた2009~2018年の取材メモと照らし合わせながら読み進めました。

Photo

 

 まだ格闘技担当をしていた2007年頃、ボクシングの亀田興毅然の試合を取材に行った時、リングサイド最前列に小池さんがいたをよく覚えています。取りあえず、著名人のコメントを集める役割だったので、談話を取りにいったのですが、なんで環境大臣が亀田の試合を観ているのだろう、という謎は残りました。10年以上前のそんな些細な疑問まで本書を読んで、やっと合点がいきました。

 都知事選の真っただ中で話題になっている小池さんの学歴詐称疑惑は、確かに、さほど重要ではないかもしれません。学歴は政治家の手腕とは全く無関係です。ただ、筆者の石井さんが指摘しているように、この学歴疑惑には小池さんの人としての在り様を考える上で、外せない問題だと思います。それは本書を読めば感じられることでしょう。

 都知事選の前に、有力候補者の素顔を伝えてくれた石井さんには、ノンフィクションファンとしてだけではなく、都民の一人としても感謝をしたいと思います。小池さんの支援を決めている自民・公明党の支持者の方も是非、これを読んで小池さんが都知事にふさわしいかをもう一度考えてみて頂きたいです。

 私は2017年の都議選で都民ファーストの候補者の方々も取材しましたが、多くは誠実な方々で、都民の生活を向上させようという意欲に燃えた方々でした。小池さんはそのリーダーとして本当に相応しいのか。是非、彼女たちも、この本を読んでみるべきだと思います。

2020年6月16日 (火)

映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」

 ポレポレ東中野が上映再開。早速新作ドキュメンタリー映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」(大島新監督)を観てきました。首相・安倍の「桜を見る会」を追及する質疑で知られる小川淳也衆院議員(当選5期、四国比例)を初出馬した2003年から追った作品です。

Photo

 

 東大法学部を出て総務省に入るも、官僚に失望して政界へ。しかし、霞が関も、永田町も志だけではままならない。誠実だが、愚直とも言える一議員を通じて政界の現状を描き出しています。

 あえて単純化してしまえば、小池百合子都知事とは対照的な政治家と言えるかもしれません。この昨品は、小池氏の「排除発言」後に小川議員が翻弄されるところが最大の見どころと言っても良いでしょう。

 東京都民には都知事選の前にお勧めしたい映画。都民以外の方にも是非観て欲しいと思います。

2020年6月 1日 (月)

「資本主義と闘った男 宇沢弘文と経済学の世界」

 ジャーナリスト、佐々木実さんの大著「資本主義と闘った男 宇沢弘文と経済学の世界」(講談社)を読み終えました。

 日本で最もノーベル経済学賞に近いと言われた宇沢弘文の評伝。一人の理論経済学者の生涯を辿る638ページのノンフィクションですが、退屈する要素は全くありませんでした。

Photo

 白く長い髭がトレードマークだった宇沢は180センチの長身。幼い頃は怪力で鳴らし、毒ヘビを手づかみして振り回すような豪傑だった。戦時中に過ごした禅寺で曹洞宗の教えの影響を受け、旧制一高時代にはラグビーに熱中。数学が抜群に得意で東大の数学科へ。河上肇の「貧乏物語」を読んだのをきっかけに経済学に転向しました。

 学者としては主に米国で活躍した宇沢は後に、水俣病などの公害や地球温暖化問題、三里塚闘争へと向かい合ったことで知られています。「世界的な理論経済学者がなぜ」というのが私の疑問だったのですが、本書ではマルクス経済学、新古典派経済学、ケインズ経済学に触れていく中で、宇沢が自らの進む道を決めいき「社会的共通資本」という概念を創り出していく過程が見事につづられています。

 市場が急拡大にすることにより非市場とのバランスが崩れ、その歪みから生じたものが公害である。経済分析とは陽が当たらない陰の領域をもカヴァーするものでなくてはならない。これが宇沢が導き出した経済学の使命だったのです。

 この本を読む利点の一つは、近代から現代にかけての経済学史の流れが、すんなりと分かるということ。もう一つは、現在私たちの身が置かれている新自由主義とはいかなる過程で生まれ、どのような毒を含んでいるかも知ることができるという点です。

 私自身、安倍政権が推し進める「アベノミクス」に右脳で疑念を抱いていましたが、本書を読んで左脳で裏付けられたように感じています。

 佐々木実さんは長年政権のブレーンを務めてきた竹中平蔵の実像で迫った「市場と権力」という名著もあり、こちらも早く読んでみたいと思っています。

甲斐毅彦

2020年9月

    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30      

最近のトラックバック

見出し、記事、写真の無断転載を禁じます。Copyright © The Hochi Shimbun.