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2020年7月11日 (土)

「バッティングピッチャー 背番号三桁のエースたち」

今春、文庫化された「バッティングピッチャー 背番号三桁のエースたち」(澤宮優著、集英社文庫)を読みました。

 打撃投手とも呼ばれるバッティングピッチャーとは、試合には出ず、打撃練習のために投手を務める日本球界独自の専門職です。松井秀喜、清原和博、イチロー…。誰もが知っている名選手のパートナーを務めてきた打撃投手に視点を向けることで、スラッガーたちの新たな一面が浮かび上がってきます。

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 著者の澤宮優さんは「日の当たらない場所で一生懸命生きている人に光を当て」ることをモットーとするノンフィクション作家。本書も、その視点から球界を描いた異色の傑作です。球界に限らず、裏方というのは多くを語らないのが世の常。実は語るに値するものを持っていることに、本人は気がつかないものです。それを掘り起こすことこそ、ノンフィクションの書き手の仕事と言って良いでしょう。

 一読して感じたのは、打撃投手というのは、打者に合わせる受け身の姿勢ではなく、主体性のある専門職であるということです。必ずしも、打者にとって打ちやすい球を投げるだけでなく、時には打者に弱点を気づかせるために投げることもある。それは言葉で伝えるよりも、より効果的な場合があるはずです。

 打者にしてみれば、言葉による助言を受けるのではなく、自ら「気づく」という能動的な精神作用をもたらすことができるのでしょう。言語を超えたコミュニケーションにより、他者に変革をもたらす「打撃投手」は、球界に限らず、社会の至るところに必要な存在ではないか、と感じました。

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コメント

 先輩、お久しぶりです。
 コメントを頂き、ありがとうございました。裏舞台に視線を向けてこそ、華やかな世界の真実が見えてきますよね。石原豊一の本は存じませんでしたが、面白そうですね。調べてみます。

ご無沙汰、私も読みました。この方の前作も読んでます。こういう華やかな世界の表に出て来ない裏側の話というのが結構好きで、戦力外通告絡みの本とか結構読みました。どんな世界でも夢を追いかけるというのはある種の「覚悟」が必要なんだな、というのが良く分かりました。ご存知かわかりませんが、少し前に読んだ「もうひとつのプロ野球―若者を誘引する「プロスポーツ」という装置―」(白水社 石原豊一著)、これもすごい興味深い話でした。プロへの夢を諦めきれない若者達の厳しい世界を描いた話です。お薦めします。

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甲斐毅彦

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