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2020年7月17日 (金)

「ルポ百田尚樹現象 愛国ポピュリズムの現在地」

 ノンフィクションライター、石戸諭さんの新刊「ルポ 百田尚樹現象 愛国ポピュリズムの現在地」(小学館)を読みました。百田氏と言えば「海賊とよばれた男」や「永遠の0」などの万人に感動を呼び起こす名作小説の書き手である一方、ツイッターで「反日」を叩く過激な発言を繰り返すことで知られています。そのギャップは、いったい何なのだろうか。百田氏本人だけでなく保守派の論客たちへのインタビューを通じて、ベストセラー作家の本質に迫ったノンフィクション作品です。

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 石戸さんは、「現象としての百田尚樹」が誕生する土壌ができた転換点を1996年としています。「自虐的」な歴史教育を見直そうと藤岡信勝氏を中心に「新しい歴史教科書をつくる会」ができ、「自虐史観」なる言葉が誕生しました。さらに西尾幹二氏、小林よしのり氏ら保守派の論客が、自らの歴史観を説いた大著を出版し、大きな反響を呼びました。百田氏は、彼らが作り出した土壌の上に立っていると見て良いと思いますが、その上で百田氏が巻き起こした反響は「新しい現象」であるという鋭く分析しています。

 石戸さんは「リベラル派」の立場と言って良いと思います。その上で、あえて対極的な立場に立つ百田氏らのインタビューを試みた思いは、終章に綴られた以下の言葉に集約されているように思います。

 「今は論戦そのものがなくなり、左と右を始め、さまざまな分断線が引かれ、お互いの行き来がないままに党派で固まり「論」を重ねる場ごと消滅しつつある。その結果起きるのは、集団極性化であり、より過激になっていく言葉のぶつけ合いだ。」

 価値観が違う者同士が対話し、議論をすることは、いつの時代でも必要であり、もちろん現在もそうでしょう。その上で、私たちが認識して置くべきなのは、自己の価値観とそぐわない「事実」を突きつけられても、個々の人間が持っている価値観というものは、そう簡単には変わらないという厳しい現実なのかもしれません。

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甲斐毅彦

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