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2020年8月

2020年8月27日 (木)

「ルポ 技能実習生」

 ジャーナリスト澤田晃宏さんの「ルポ技能実習生」(ちくま新書)を読みました。
 1993年に導入された技能実習制度は、「技能実習」や「研修」の在留資格で日本に在留する外国人が報酬を伴う技能実習、或いは研修を行う制度。ですが、その制度名は名ばかりで、劣悪な労働環境に置かれるケースが非常に多いのです。 

 以前はこの制度の利用者の出身国で最も多かったのが中国だったのですが、現在は「労働力輸出」を国策としているベトナム。澤田さんはベトナム現地も綿密に取材し、その実態を明らかにしています。

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 彼らにとっては平均年収の3倍以上となる100万円ほどの借金を背負ってでも来日してた彼らが目指すのは「300万円貯金する」こと。夢をかなえて故郷に家を建てる人もいれば、悪徳ブローカーの餌食となる人や失踪してしまう人もいます。

 読んでいてうんざりするのは現地の送り出し機関が、日本の監理団体に巨額の賄賂を送るのが当たり前になっているというの極めて不健全な構図。そのツケを背負わされているのが末端の「実習生」になっているという現状です。

 澤田さんは、日本と同様に労働力を外国人に依存している韓国も現地取材。韓国にも様々な課題はあるのですが、ベトナムなどから働きに来る彼らに対する待遇は、韓国のほうが良いということは間違いがないようです。

 日本で暮らしているとなかなか分かりませんが、すでに韓国や台湾との外国人労働者の人材獲得競争に突入しています。日本は外国人労働者を選ぶのではなく、彼らから選ばれる時代になってきていると言えるでしょう。

 この大きな変化にも気がつかず、いまだにアジア諸国から働きに来ている人たちに対して見下すような待遇をすることは、愚の骨頂と言うべきなのかもしれません。

2020年8月20日 (木)

「ロボジョ! 杉本麻衣のパテント・ウォーズ」

新刊「ロボジョ! 杉本麻衣のパテント・ウォーズ」(稲穂健市著、楽工社)を読みました。

 主人公は大学工学部に通う女子大生、杉本麻衣。自らロボット研究会を創設し、「お手伝いロボット選手権」で優勝したことから「ロボジョ」と呼ばれる。ロボット搭載用のさらに画期的な技術開発に挑み、成功するのですが、その知的財産を横取りしようとする怪しげな輩が現れ始め…。

 実際の企業間でしばしば起こるパテント・ウォーズ(特許戦争)を題材としたライトミステリーノベル。ところが普通の小説とは違う点は小説でありながらも、特許権、商標権、意匠権、著作権といった知的財産権の入門書となっているところです。

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 著者で東北大研究推進・支援機構特任准教授の稲穂健市さんは、知的財産権の啓発活動の第一人者として活動している弁理士。ミステリーとして違和感がないストーリーなのに、読めば知財の全体像と現代的な課題点までが分かってしまう。知識の整理用に、巻末には知財コラムが8本ついていて、しっかりメリハリもついています。

 実は変な発明や、おかしな商標に対して密かに興味を持っている私が、稲穂さんを知ったのはちょうど10年前。ペンネーム稲森健太郎名義で出版した「女子大生マイの特許ファイル」を読んだときでした。ビートたけし、ホリモンこと堀江貴文氏ら著名人が実際に出願した特許を題材にした本ですが、難しい話をこれだけ面白く書ける才能に驚き「これこそ知的エンターテインメントだ」と感嘆したものです。

 その後の著作もすべて愛読して来ましたが、最新作には、何としても広く、知財の面白さを伝えたいという工夫に満ちた力作です。

 2002年に当時の小泉純一郎首相が「知財立国」を宣言してまもなく20年になります。経済は失速し、産業の競争力では他のアジア諸国に抜かれつつある今の日本にとって知的財産が大切であることは言うまでもないことでしょう。

 私個人は産業であれ、文化であれ、社会に役立つか役立たないかはさておき、まずは一人ひとりが興味を持ったことをとことん追究し、新しいものを創り出そうとすることが、大切なのではないかと思っています。その前提として、知っておくべきことが、あっという間に楽しく学べるのが、この一冊です。

2020年8月 9日 (日)

「幻のオリンピック 戦争とアスリートの知られざる闘い」

新刊「幻のオリンピック 戦争とアスリートの知られざる闘い」(NHKスペシャル取材班、小学館)を読みました。昨秋放送されたNスぺも素晴らしかったのですが、約50分の番組ではとても収まりきらない秘話に満ちた、読み応え十分の一冊でした。

 1940年(昭和15年)、東京はアジアで初めての五輪開催地となるはずでしたが、すでに日本は中国との泥沼の戦争に突入しており、第2次世界大戦が激化していくという潮流の中で中止となっています。1932年のロサンゼルス五輪、続く36年のベルリン五輪などで活躍した日本代表選手の中で、戦火によって命を奪われたアスリートは取材班の調べによると37人。ある者は志願し、ある者は召集され、スポーツという活躍の場を絶たれた彼らは、戦地で何を思っていたのか。

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 東京での五輪が実現したのは「幻の大会」の24年後。1964年(昭和39年)でした。柔道、レスリング、体操、バレーなどで金メダルを獲得した日本勢の活躍はさることながら、人々の記憶に焼き付いているのは閉会式での「平和の行進」でしょう。国別ではなく、各国の選手が笑顔で入り乱れ、融和しながらフィナーレを迎えた。これは自然発生的に起きたのか、それとも「仕掛け人」がいたのか。本書の圧巻は、取材により、その真相に迫っているところです。

 それにしてもNHKでドキュメンタリー制作に携わる方々の企画力、取材力、構成力には、いつもながら敬服してしまうばかりです。埋もれた事実を掘り起こすノンフィクションの醍醐味が味わえる濃厚な一冊であることを保証します。

2020年8月 4日 (火)

「思考中毒になる!」

 自己啓発書的な書籍を読むことはあまりないのですが、「声に出して読みたい日本語」などのベストセラーで知られる明大教授、齋藤孝さんの新刊「思考中毒になる!」(幻冬舎新書)は、読んでなかなか考えさせられました。

 私自身のことですが、新聞記者になってからは「考えるよりもまず行動」というのが、自分自身の指針となっていました。ですが記者歴も24年になり、50代も目前に迫ってくるとなると、果たしてそれが正しかったのだろうか、と自問することが多くなって来ていたのです。

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 「行動」することは確かに重要ですが、自分の場合に当てはめてみると、熟慮に基づいた「行動」ではないだけに、空回りすることがあまりに多かったのではないか。

 より中身のある「行動」をするためには、まずは「思考」しまくることです。本書の長所は、そのために心がけるべきことが具体的な事例で埋めつくされている点です。

 齋藤さんが説かれていることに、もっと早く気づいて習慣化すべきだった! いやいや、何かを始めるのに遅すぎるなんてことはないはずです。早速今日から心がけたい。自分の頭で「思考」するという習慣を身に着けることは、より主体的に生きるということに他ならないのだと、感じています。

甲斐毅彦

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