「ルポ 技能実習生」
ジャーナリスト澤田晃宏さんの「ルポ技能実習生」(ちくま新書)を読みました。
1993年に導入された技能実習制度は、「技能実習」や「研修」の在留資格で日本に在留する外国人が報酬を伴う技能実習、或いは研修を行う制度。ですが、その制度名は名ばかりで、劣悪な労働環境に置かれるケースが非常に多いのです。
以前はこの制度の利用者の出身国で最も多かったのが中国だったのですが、現在は「労働力輸出」を国策としているベトナム。澤田さんはベトナム現地も綿密に取材し、その実態を明らかにしています。
彼らにとっては平均年収の3倍以上となる100万円ほどの借金を背負ってでも来日してた彼らが目指すのは「300万円貯金する」こと。夢をかなえて故郷に家を建てる人もいれば、悪徳ブローカーの餌食となる人や失踪してしまう人もいます。
読んでいてうんざりするのは現地の送り出し機関が、日本の監理団体に巨額の賄賂を送るのが当たり前になっているというの極めて不健全な構図。そのツケを背負わされているのが末端の「実習生」になっているという現状です。
澤田さんは、日本と同様に労働力を外国人に依存している韓国も現地取材。韓国にも様々な課題はあるのですが、ベトナムなどから働きに来る彼らに対する待遇は、韓国のほうが良いということは間違いがないようです。
日本で暮らしているとなかなか分かりませんが、すでに韓国や台湾との外国人労働者の人材獲得競争に突入しています。日本は外国人労働者を選ぶのではなく、彼らから選ばれる時代になってきていると言えるでしょう。
この大きな変化にも気がつかず、いまだにアジア諸国から働きに来ている人たちに対して見下すような待遇をすることは、愚の骨頂と言うべきなのかもしれません。
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