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2020年9月17日 (木)

「チョンキンマンションのボスは知っている アングラ経済の人類学」

 今年の大宅壮一ノンフィクション賞の受賞作「チョンキンマンションのボスは知っている アングラ経済の人類学」(小川さやか著、春秋社)を読み終えました。

 香港に棲むタンザニア人ビジネスマンの生活を追った異色のノンフィクションです。交易人、難民を巻きこんだ独自の互助組合、信用システム、シェア経済など、その仕組みは、部外者にとっては複雑怪奇。アフリカの零細商人の商慣習や商実践を研究してきた文化人類学者の著者が、カオスな複合ビル、チョンキンマンション(重慶大厦)のボスを中心に、その実態の解明に挑んでいます。

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 成熟したシステムがあるわけではなく、出入りする人間の多くは個性的で、いいかげん。助け合いや交易も「ついで」によって行われる。必ずしも信頼し合っているわけではないのに、うまく調和している彼らのコミュニティーは、厳格で閉塞感のある日本社会で暮らす私たちにとっては、多くのことを考えさせる要素は含まれていると思います。

 ざっくりいうと、在香港タンザニア人のコミュニティーは「異なる相手と緩やかにつながり、他者の多様性が生み出す偶発的な応答」から生じるものに期待している共同体と言えるようです。これは無意識に考えていたSNSの活用法に似ており、はっとさせられました。

 文章にはユーモアがありながらも、学術色が濃く残る作品でした。フィールドワークが不可欠な文化人類学とノンフィクションやルポルタージュはもともと親和性が高いと思いますが、本書は研究者が挑んだノンフィクションの見事な成功例だと思います。

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甲斐毅彦

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