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2020年10月16日 (金)

「選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子」

 読みそびれていたノンフィクション作品「選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子」(河合香織著、文藝春秋)をやっと読むことができました。2019年の大宅壮一ノンフィクション賞と新潮ドキュメント賞のダブル受賞作。

 2011年、当時41歳の女性が、函館市の病院で受けた出生前診断で、医師から「異常なし」と伝えられていたが、生まれてきた男児はダウン症だった―。母親は誤診した医師と病院を相手に民事訴訟を起こしますが、提訴したことに対する母親への批判も巻き起こります。母親が提訴した真意は、いったい何だったのか。断片的な報道では、決して伝わらない真相に迫った大変な力作です。

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 障害がある子は産むべきなのか、中絶すべきなのか。それを決められるのはいったい誰なのか。著者は、この「命の選択」という局面に立たされた、母親をはじめ当事者たちを粘り強く取材。誰もが口が重くなるのが当然の題材でしょうが、それを聞き出していくことができたのは、想像を超える取材者の熱意と真摯な姿勢があったからではないでしょうか。

 生命倫理の観点からみても、法の観点からみても、もちろん明確な答えが出るわけではありません。誰かを悪者にして解決する問題でもありません。答えがないからこそ考え続けなくてはいけないテーマなのかもしれません。

 一人のノンフィクションファンとしては、一昔前に比べれば出版ジャーナリズムが苦境に立たされる中で、これだけの重厚なテーマに独力で迫られる書き手が健在であることが嬉しかったです。

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甲斐毅彦

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