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2020年11月20日 (金)

「エンド・オブ・ライフ」

「Yahoo!ニュース|本屋大賞 2020年ノンフィクション本大賞」の受賞作「エンド・オブ・ライフ」(佐々涼子著、集英社インターナショナル)を読みました。
 著者の佐々涼子さんの本は、3・11で津波に呑み込まれた日本製紙石巻工場が再生するまでを追った「紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている 再生・日本製紙石巻工場」(早川書房)を読み、本物のノンフィクション作家であることは知っていましたが、今回の受賞作は圧巻です。

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 テーマは在宅での終末医療。人間の「命の閉じ方」を描いた小説は数多くあるし、その多くは実際の出来事を題材にしているとは思いますが、事実のみで構成された純然たるノンフィクションとなると、やはり読む者に伝わる重みが全く違います。
 主人公となった男性は、京都の訪問診療所で、数百人の終末期患者を看取ってきた看護師。看取りのエキスパートとも言える人物が、すい臓がんになり、余命宣告を受けます。多くの人の終末期を支えて来た人が、患者となり、支えられる側になった時、本人の心はどう揺れ動くのか。そして彼を支える家族は何を思うのか。
 在宅介護を受けていた著者自身の母のことや他の終末期患者のことも織り込みながら進める構成は独特で、ドラマや小説では、描かれることがない現実が伝わってきます。
 6年以上にもわたってこれだけ他者の生死の境目に踏み込んで来れたのは、医療機関や患者たちとの相当の信頼関係が築けたからこそでしょう。大手メディアではなく、一人の書き手だからこそ成し得たことなのかもしれません。
 「死」をテーマにノンフィクションの取材を進める中で、「生病老死」を避けられぬ宿命とする仏教に関心を深めていったという佐々さん。ただ、信仰を深めることまではできないという率直な宗教観にも深く共感しながら読みました。信仰というのは「信じよう」と思ってできるものではないのかもしれません。
 深く心に残るのは、最期を迎えた人が不治の病とどう向き合い、どう立ち向かったか。その姿を通じて、見守る人々の人生にどのような影響を与えたかということ。
 そこに押しつけはありません。人は好きなように、自由に生きていい。そのメッセージは万人の心を揺さぶるものでしょう。ここにノンフィクションが持つ力を実感しました。

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甲斐毅彦

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