「沢村忠に真空を飛ばせた男」
「講談社 本田靖春ノンフィクション賞」の受賞作「沢村忠に真空を飛ばせた男 昭和のプロモーター・野口修評伝」(細田昌志著、新潮社)をやっと読み終えました。
二段組み560ページの超大作。1月の読書時間はほぼこの1冊を読み切るのに費やしてしまいましたが、それだけの価値があるノンフィクションでした。
「キックの鬼」の異名で1970年代に活躍したキックボクサー・沢村忠。必殺の真空飛び膝蹴りで、タイから来たムエタイの猛者をバッタバッタとなぎ倒し、国民を熱狂させた格闘家です。しかし、そのすべては本当に真剣勝負だったのだろうか。もし、そうでなかったとするならば、なぜだったのか。
本書の主人公は、沢村ではなく、沢村や歌手の五木ひろしを生み出したプロモーターの野口修です。父で、戦前のボクサー、ライオン野口(野口進)にまで遡って、その生い立ちから辿っていく本書は、一部の芸能史も含む、戦後のプロ格闘技興行史なのですが、それを柱に、知られざる政界やフィクサー、裏社会の逸話が散りばめられており、全く飽きるところがありません。
読み終えて、最も感じたことは、日本のプロ格闘技興行というのは、野口修という人物のパーソナリティーが今も色濃く反映されているのではないか、ということでした。
格闘技ファンはもちろんですが、そうでない人にも是非お勧めしたい。放送作家である著者はこの一冊の取材・執筆に10年を費やしたそうですが、それだけの価値があるノンフィクションです。
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