『「トランプ信者」潜入一年』
ユニクロやamazonなどの労働現場に潜入し、その実態を明らかにして来たジャーナリスト、横田増生さんの最新刊『「トランプ信者」潜入一年』(小学館)を読み終えました。
トランプとバイデンが争った2020年の米国大統領選。著者はトランプ陣営の共和党の選挙ボランティアスタッフとなり、「トランプ信者」たちの実像を地べたから取材しました。
ジャーナリストであることがバレぬように、身分証明書としての運転免許証を現地で取得するという念の入れよう。トランプ赤帽をかぶって1000軒以上の戸別訪問をこなし、「議事堂襲撃」では、警官の催涙スプレーを浴びるという受難も。反トランプ派からは中指を立てられ、身の危険を感じてからは防弾チョッキやガスマスクを装着しての取材となりました。そして内側から見えてきたのは、副題の「私の目の前で民主主義が死んだ」という現実でした。
事実確認(ファクトチェック)をすれば、荒唐無稽だと分かるはずの陰謀論を吹き回し、不都合な事実を「フェイク」と片付けてしまう「トランプ信者」たち。こうした類の人々いるのは、もちろん米国だけでなく、言うまでもなく私たちに身近なところにもいるでしょう。横田さんが取り組んだテーマは、民主主義の危機という世界的な問題の象徴だったのではないか、とも思えてきます。
私は潜入取材といえばルポライター鎌田慧さんの「自動車絶望工場」を思い出します。今、この取材手法をとる日本の第一人者は横田さんでしょう。是非、英訳して米国の人々にも読んでみて欲しい渾身のルポです。
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