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2018年3月24日 (土)

「君たちはどう生きるか」

 漫画版が170万部を超えるベストセラーになっている「君たちはどう生きるか」(吉野源三郎著)を原作の岩波文庫で読みました。

 この本は大学3年生の時に勧めてくれた知人に頂いたのですが、あまり読む気にならず、ほったらかしにしていました。それから27年。ブームに火が付いているのを機に読んでみたのですが、これはやはり学生のうちに読んでおくべき本でした・・・。

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 この本が刊行されたのは日中戦争の発端となった盧溝橋事件が起きた1937年。軍国主義が勢いを増し、泥沼の戦争、そして破滅的戦争へと突き進んでいく時代でした。言論統制が厳しくなる中で「せめて子どもたちには、時勢の悪い影響から守りたい」という願いを込めて書かれた本なのです。

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 主人公は旧制中学校に通う15歳の「コペル君」。学校でのいじめや同級生間の家庭の「階級」の格差と向いあう中で、コペル君は悩みます。その悩みを受け止める「叔父さん」との対話で、コペル君は成長していきます。

 テーマは、価値観や立場が違う「他者」とどう共存し、どう共生していくかということ。80年以上前に書かれたとは思えないほど現代的なテーマであり、未来を背負う子どもたちへの愛情が全編にほとばしっています。

 排外主義的な風潮が高まり、時勢が80年前と似ているとの分析もある中で、この本が注目され、読まれていることは救いのような気さえしてきます。

2018年3月11日 (日)

「魂でもいいから、そばにいて 3・11後の霊体験を聞く」

 
 3・11から7年。昨年感銘を受けた「魂でもいいから、そばにいて 3・11後の霊体験を聞く」(奥野修司著、新潮社)を読み返しました。

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 東日本大震災の被災地で、死別した人と再会できたような不思議でかけがえのない体験をした遺族は少なくありません。本書は「ナツコ 沖縄密貿易の女王」で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した奥野さんが3年半にわたって毎月のように被災地へ通い、その一つひとつの体験を聞いて、検証したノンフィクションです。ここに記された体験には「霊」が連想させるようなしらじらしさ、胡散臭さが全くありません。

 津波に流された遺体が、遺族と再会したときに涙を流したという話は、実際によくあり、私も被災地取材をしたときに娘さんを亡くした男性から直接聞いたことがあります。

 

2018年3月 8日 (木)

「三陸海岸大津波」

  「3.11」からまもなく7年。津波による被災現場での取材をするにあたって、私にとっての津波の基本書「三陸海岸大津波」(吉村昭)を読み返しました。

 宮城、岩手、青森の3県にわたる三陸海岸が大津波に曝されたのは、今回が初めてではありません。明治以降では明治29年(1896年)、昭和8年(1933年)、昭和35年(1960年)と3度に渡って、多くの人命が奪われる悲劇に見舞われています。

 これまでの津波の被害を体験者の証言や文献で、再現したこの記録文学は、是非一読をお勧めしたいと思います。

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  吉村昭氏の作品は、大学4年のときに、多くの犠牲者を出しながらも国策として工事が貫徹された黒部ダムのトンネル工事を描いた作品「高熱隧道」(新潮文庫)を読んで以来、ファンになりました。最近では「桜田門外の変」が映画化されています。

 緻密な調査で史実を掘り起こすのが、吉村氏の作品の特徴だと思いますが、三陸津波による悲劇を記したこの作品は今こそ読むべきではないでしょうか。

 これを読めば、大変悲しいことですが、津波による悲劇は繰り返されていることがよく分かると思います。2万6360人が亡くなった明治三陸津波は、105年前の出来事であるにも関わらず、人間が津波に翻弄される様子は同じです。自然災害は常に想定外。いかに文明が発達したところで、人間は自然に打ち勝つことはできないのではないか、と考えさせられます。

 今回の大津波で、甚大な被害が出た宮古市の田老地区は明治、昭和の大津波でも最大の被害者が出た区域。昭和津波の様子は、当時の子供たちが書いた作文と生存者の証言でリアルに再現されています。

 「万里の長城」の異名で呼ばれていた宮古市の防潮堤は、これまでの凄惨な災害を経て数十年の歳月をかけて作られたものです。世界最大規模とも言われていました。

 田老町を訪れた吉村氏は防潮堤についてこう記しています。「堤は高く、弧をえがいて海岸を長々とふちどっている。町の家並は防潮堤の内部に保護されて、海面から完全に遮断されている、町民の努力の結果なのだろうが、それは壮大な景観であった」

 その一方でこうも記しています。「しかし、自然は、人間の想像を越えた姿を見せる」」「そのような大津波が押し寄せれば、海水は高さ10メートルほどの防潮堤を越すことは間違いない」「しかし、その場合でも、頑丈な防潮堤は津波の力を損耗させることはたしかだ。それだけでも、被害はかなり軽減されるにちがいない」

 そして、3月11日の大津波。町民の努力の結晶たる巨大防潮堤は、打ち砕かれました。私も4月10日に現地へ行ってまいりましたが、二重構造になっている堤防の海側は水圧で粉砕されてしまいました。

 吉村氏が予想していたとおり、確かに防潮堤は、津波の力を損耗はさせたでしょう。それでもこの田老地区だけで230人以上の死者が出ました。吉村氏は故人ですが、この惨状をもしご覧になったらどう思われたでしょうか。

 大津波が再び、三陸海岸を襲うことは間違いはないでしょう。これまでよりも高く、頑丈な潮堤を造ったとしても、自然の力に勝てることはないでしょう。これは三陸で暮らしている方々の方が、私などよりも身にしみて分かっていらっしゃることです。

 田老地区で家屋を流され、避難所生活をしている60代の女性に聞きました。それでも、風光明媚で海の幸に恵まれたこの土地から離れたくない、とおっしゃっていました

 「命が助かったんだもの。贅沢は言えない。今度は少し高台に住めばいい。津波とはうまく付き合っていけばいい

 津波はいつか来るもの。宿命を受け止めて、この地に住み続ける。それが三陸の人々の姿であり、生き方なのでしょう。私は復興後も、新天地を求めることなく、この土地での暮らしを続けることを選ぶ方が多いような気がします

2018年2月27日 (火)

平昌五輪開催地の名所紹介

 平昌五輪が終わり、いよいよ江陵を離れます。 江陵を出る前に朝鮮儒学ゆかりの名所「鳥竹軒」に立ち寄りました。朝鮮儒学の代表的学者、李栗谷とその生母・申師任堂の生家。

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  二人は5000ウォン札と5万ウォン札の肖像画になっています。儒学に関して似た観光施設は日本にはないと思うので訪れることができて良かったと思います。

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 北朝鮮の「美女軍団」も休暇の日には、ここを訪れて散策したことが韓国では話題になりました。

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2018年2月10日 (土)

石牟礼道子さんを悼む

 水俣病で苦しむ人々の姿を世界に伝えてきた石牟礼道子さんの訃報を聞いてショックを受けました。「苦海浄土」は、水俣の風土と苦しむ人々の声を素晴らしい文章でつづった不朽の名作。第1回大宅壮一ノンフィクション賞に選ばれましたが「苦しむ人の話を書いた私が表彰されるのはおかしい」と辞退されたお話が心に残っています。謹んでご冥福をお祈りいたします。Photo

2018年1月26日 (金)

「野中広務 差別と権力」を読み返す

 野中広務元官房長官が92歳で死去。私は本人を取材したことはなかったのですが、ジャーナリスト・魚住昭さんによる評伝「野中広務 差別と権力」(講談社文庫)を12年ぐらい前に読んで、その壮絶な人生に強い衝撃を受けました。

 政敵はあらゆる手段を駆使して叩き潰す一方で、社会的弱者に対する温かい眼差しを失うことはなかった。その背景として野中氏に出生から生い立ちに迫った力作です。

 エピローグでは記事を月刊誌に掲載後、野中氏が涙をにじませた目で魚住さんを睨み付け「私の家族がどれほど辛い思いをしているのか知っているのか。そうなることが分かっていて、書いたのか」と猛抗議する場面があります。

 野中氏の怒りも分かるし、差別をなくすためという信念があって書ききった魚住さんの気持ちも分かる。取材対象との距離のとり方について、深く考えさせられたノンフィクションでした。野中氏を偲んで今夜読み返してみようと思います。

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2018年1月17日 (水)

「ふたご」直木賞受賞ならず

 

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 「セカイノオワリ」のSaori、藤崎彩織さんの「ふたご」(文藝春秋)が直木賞候補にノミネートされたので、受賞に備えて読みました。結果は落選となりましたが、選考委員の伊集院静さんは才能と感性を評価していました。
 
 舞台は東京の東急・池上線沿線。ヒロインの夏子は、同じ中学の一学年上の月島に恋慕し、ともに音楽の道を歩み出す。自分のことを「ふたご」のように思っている月島に夏子は、何かと振り回されてばかりだが、夏子も「同じ胎盤から栄養分を分かち合うふたごのように、これから起こる楽しいことや大変なことの、何もかもを共有していける」と信じるようになります。これは「セカオワ」の結成に至る実話を題材としているようです。...

 月島が夏子にカッターナイフを突き付けるような場面もあり、これも実話に基づくのだろうか、と驚がくするような描写もあり、徐々に引き込まれていきました。ストーリーそのものに非凡さはありませんが、めくるめく紡ぎ出される言葉が、繊細でした。

 伊集院さんは「小説の形としては完成度が足りないんじゃないか。事実であるようなことが書かれている。物語はきれいにみえる、真実を書くと物事があいまいになって見えなくなる」と指摘。 その上で以下のようにアドバイスを送りました。

 「これまでに素晴らしい楽曲と出会ってきたように素晴らしい小説と出会うと、もっと素晴らしい作家になれると思う。作家のほうが(音楽家より)解散がないから楽ですから。作家だったら『世界が終わる』いうことはありません」

 さらに著名人が文学界に挑戦することに伊集院さんは肯定的でした。「藤崎さんが優れているのは)ものの見方。もう一点な斜めにならずまっすぐ見ようという前向きなところが感じられるのがよかったと思う。文学を高唱という発想はしない。いろな人が入ってくる、違う世界の人が入って来るのは素晴らしいことだと思う。我々はそういうものを非常に期待しています。プロ野球選手が入ってくれてもかまわない」

2018年1月16日 (火)

北太樹関、お疲れ様でした。

  元幕内・北太樹が引退。けがに悩まされながら戦いきった20年の土俵生活だったと思います。写真は彼がまだ幕下だった頃、私が撮影してみたもの。いずれは必ず幕の内で相撲を取る日が来るだろうと応援しながら見ていました。

 入門前には町田市の少年団でゴールキーパーをやっていたサッカー少年。気さくな人懐っこさがある好青年でした。彼がまだ「若い衆」だった頃に東京や名古屋で一緒に飲みに行ったのもよい思い出です。北太樹関、お疲れ様でした。第2の人生も素晴らしいものとなるようお祈りしています。

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2018年1月15日 (月)

センター試験 ムーミンの問題を解いてみました。

センター試験の地理Bで、ムーミンの舞台を問う問題が出たことが話題になっているので、解いてみました。「

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小さなバイキング ビッケ」と並列で、どちらがノルウエーで、どちらがフィンランドかを選ばさせ、さらに「いくらですか?」のノルウェー語とフィンランド語を選ばせる問題。 かなりの難問ですが、「ヴァイキング」が「ヴィク=入り江の人」が由来でノルマン人の別名であることを知っていれば、「小さなヴァイキング ビッケ」がノルウェーであることが判断でき、ムーミンがフィンランドであることが判明します。

 「いくらですか?」の識別はさらに困難。ノルウェー語がゲルマン語族、フィンランドがウラル語族であることを知っていれば、選択肢Aのほうがヨーロッパ言語的な特徴を感じられるのでAがノルウエー語と判断できるでしょう。思考力を問う意図で作られたのでしょうけど、あまり良問とは思いませんでした。

2017年12月 2日 (土)

「親鸞 大いなるみ手に抱かれて」

敬愛する東北の演劇人・大日琳太郎さんの芸能生活周年を記念した、ひとり芝居「親鸞 大いなるみ手に抱かれて」が、東京・代官山で上演されました。

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 親鸞聖人の息子、善鸞によるモノローグ(一人語り)ですが、1時間以上に及び、一人で語り続ける台詞はいったい、どうやったら覚えられるのだろうか。本当に上演中には善鸞が琳太郎さんに乗り移っているのだろうか。
 
 私は浄土真宗ではありませんが、立教大時代に宗教学の授業で鈴木範久教授が題材としたのが、親鸞聖人の弟子・唯円が師の教えを書き残した「歎異抄」でした。南無阿弥陀仏と唱えれば、誰でも極楽浄土に行けるという「他力本願」、悪人こそが救われるという「悪人正機説」は鎌倉時代の民衆にものすごい勢いで広まったわけです。
 
 息子・善鸞は、父の教えに背き、義絶されたわけですが、芝居はその独白という形で、僧侶であるにも関わらず肉食を認め、妻帯者となった父への疑念、憎悪、そして結局は捨てきれぬ愛情を語っていきます。
 
 上演後、涙を流しながらの琳太郎さんの舞台あいさつも印象的でした。長年介護し続けてきた93歳のお父様が今年ご逝去。琳太郎さんが、30周年の節目にこの題材を選んだ理由は少し分かった気がします。琳太郎さん、風が冷たくなっていく季節に心温まるお芝居をありがとうございました。

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甲斐毅彦

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