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映画

2020年7月28日 (火)

「日本人の忘れもの フィリピンと中国の残留邦人」

 ポレポレ東中野で公開中のドキュメンタリー映画「日本人の忘れもの フィリピンと中国の残留邦人」(脚本・監督、小原浩靖)を観てきました。

 太平洋戦争の敗戦後、フィリピンと中国(当時の満州地方)に置き去りにされた残留邦人の今を追った作品です。父親はフィリピンゲリラに銃殺され、母親は山奥に逃げ込み、今もなお無国籍状態に置かれたフィリピン残留日本人二世。1970年代にやっと帰国が叶うも、言葉の壁による差別と貧困に苦しんで来た中国残留孤児たち。

 すでに80歳を超える高齢者となった彼女、彼らの表情からは時代に翻弄された「侵略戦争の爪痕」を感じずにはいられません。

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 ここまで人間は献身的になれるのか、と感嘆したのは、フィリピン残留邦人の日本国籍取得のために奔走する河合弘之弁護士と、同氏が代表理事と務めるフィリピン日系人リーガルサポートセンターのスタッフたちの姿です。撮影時の時点での調査で残留2世の邦人は1069人。しかし、父親の名前すら曖昧になってしまっている場合は少なくなく、国籍取得の法的な手続きを進めることは容易ではありません。

 戦争という国策が生んだ悲劇。映像の中で東南アジア研究を専門とする清泉女子大の大野俊教授は「本来は政府が支援すべき」と指摘しています。当事者たちはすでに高齢になっており河合弁護士も、政府が望んでいるのは「問題の解決ではなく問題の消滅ではないか」と懸念しています。

 だからといって作品では「政府∥悪」という単純な図式では描いていません。70年代には中国残留孤児の存在をマスメディアが大々的に取り上げることにより、政府も調査に着手し、帰国が実現しました。フィリピンの残留邦人の問題も志のある政治家が支援に乗り出しています。

 まずは私たちがこの悲劇を知り、そして共有すること。残された時間で前に薦めるには、そこから始めるしかないように思いました。
https://wasure-mono.com/

2020年6月16日 (火)

映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」

 ポレポレ東中野が上映再開。早速新作ドキュメンタリー映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」(大島新監督)を観てきました。首相・安倍の「桜を見る会」を追及する質疑で知られる小川淳也衆院議員(当選5期、四国比例)を初出馬した2003年から追った作品です。

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 東大法学部を出て総務省に入るも、官僚に失望して政界へ。しかし、霞が関も、永田町も志だけではままならない。誠実だが、愚直とも言える一議員を通じて政界の現状を描き出しています。

 あえて単純化してしまえば、小池百合子都知事とは対照的な政治家と言えるかもしれません。この昨品は、小池氏の「排除発言」後に小川議員が翻弄されるところが最大の見どころと言っても良いでしょう。

 東京都民には都知事選の前にお勧めしたい映画。都民以外の方にも是非観て欲しいと思います。

2020年1月10日 (金)

ドキュメンタリー映画「さよならテレビ」

 ポレポレ東中野でドキュメンタリー映画「さよならテレビ」を観てきた。この映画が2020年の最高傑作であることは間違いないだろう。


 この作品は「ヤクザと憲法」をはじめとするタブーと忖度なしのドキュメンタリーを撮り続けきた東海テレビの圡方宏史監督と阿武野勝彦プロデューサーによるもの。今回カメラを向けたのは身内であるテレビ局内だ。突然、局内で企画書を配り、仕事仲間に対して、これから取材対象となってもらうと通告するところから始まる。

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 メディアが自己開示をする以上、そこに忖度があっては意味がない。困惑するスタッフたち、苛立ちを隠さず、撮影を止めさせようとするデスク。普通ならここで企画倒れとなるはずだが、驚くべきことに、こうして劇場で公開されている。


 社会科見学に来た子どもたちには「弱い人を助ける」「権力の監視」と報道の使命を説きながらも、現実には視聴率競争に追われる局員たち。働き方改革が叫ばれる中で、休めと言われても現実的には休めようはずがない。まさに「薄っぺらいメディアリテラシーは、もうたくさん」なのだ。この現実を見てみろよ、ということなのだ。


 私には契約記者として雇われて、1年で切られてしまったワタナベ君にも感情移入できたし、管理職を経験している立場としては、ミスをやらかしたワタナベ君を叱りつけるデスクの気持ちも分かる。報道に携わる者は皆、血の通った人間なのだ。


 もっとも心に残ったのは、「共謀罪」法案の危険性をなんとか視聴者に伝えようとする中年の契約記者、サワムラさんの悪戦苦闘ぶりだ。地方紙や業界紙を渡り歩き、自らもミニコミ紙を作るなどしてたどり着いたのが今の職場。その自宅には、ジャーナリズム、メディア関連の書籍がズラリ。学生時代には、本多勝一のジャーナリズム論や鎌田慧のルポを読み、その原点から離れられず、現実の中で何年も、何年ももがき続けている。

 サワムラさんの苦悩は、まさに私自身の苦悩に他ならない。これを描き出してくれた圡方監督と阿武野プロデューサーに心から拍手を送りたい。本当に感動した。

2019年11月18日 (月)

映画「iー新聞記者ドキュメントー」

 森達也監督の新作ドキュメンタリー映画「i―新聞記者ドキュメント―」を新宿ピカデリーでを観て来ました。

 これまでオウム真理教信者や音楽家・佐村河内守氏の日常を撮影し、作品化して来た森さんが今回、被写体に選んだのは東京新聞社会部記者の望月衣塑子記者。官邸会見で菅官房長官を質問攻めし、官邸側も「質問が「事実に基づかない質問を繰り返している」などと反撃に出たことで世に知られるようになった記者です。

 映画では、その果敢な取材ぶりに圧力がかけられる様子、望月さんへ向けられる声援とバッシング、脅迫の実態が収められています。

 そして菅官房長官に質問を浴びせる望月さんを撮影するため、官邸に入ろうとした森さんがぶつかった厚い壁…。

 率直な感想として、とても社会的なメッセージが強いにも関わらずまったく教条的ではなく、エンタメ映画として観られるほどの面白さでした。ドキュメンタリー映画ではあり得ないような森さんならではの新手法もあります。平日の昼間にも関わらず、ほぼ満席。ぴあ映画初日満足度ランキングで1位だというのも、納得できる作品でした。

https://i-shimbunkisha.jp/

 そもそも、現実の新聞記者というのは、有能であったとしても、報道番組のキャスターなどに転身しない限りは、まず絵になり得るような存在ではありません。リクルート事件、最近では森友事件のようなスクープをものにした記者でさえ、新聞業界以外ではまったくの無名人です。

 それでも望月さんには、森さんに「撮りたい」と思わせるだけの強烈なインパクトがあったのでしょう。そしてこうしてドキュメンタリーの主人公になってしまうわけですから、やはり現在の日本の新聞業界の中では記者として特異な存在になってしまっているのだと思います。作品の中での森さんの「そもそも何で自分は望月さんを撮っているんだろう」という自問が、この映画の核心のように思いました。

 政治であれ、社会であれ、経済であれ、あるいはスポーツであれ、いかなる対象でも記者が取材対象と馴れ合って良いはずがありません。記者会見の場で事実を問いただすのは、本来当たり前のことであって、望月さんはその当たり前のことをしているに過ぎないはずなのです。

2019年9月30日 (月)

映画「帰れない二人」

渋谷のル・シネマで中国映画「帰れない二人」(ジャ・ジャンクー監督)を観ました。

 山東省の裏社会で生きるヤクザ者の男とその恋人の物語なんですが、舞台が2001年から始まり、北京五輪開催、三峡ダムの完成、経済の急成長など現代の中国の姿が映し出されています。

 ストーリーそのものよりも、私にはその情景の方が興味深く感じられましたし、制作者の意図もそこにあるようです。中国の映画にはいまだに検閲があり、表現者にとっては締め付けをどうすり抜けるかという努力を常にしなくてはならないようです。

 それにしてもモウモウと煙る喫煙のシーンが非常に多く、画面を観ているだけで煙たく感じるほど。ある意味で「コミュニケーションは煙草でとる」という従来の中国の姿を映し出しているのだな、と思いました。

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2019年5月14日 (火)

映画「記者たち 衝撃と畏怖の真実」

 吉祥寺のアップリンクで米映画「記者たち 衝撃と畏怖の真実」(ロブ・ライナー監督)を観てきました。2003年、ブッシュ大統領が強硬したイラク戦争の裏側を暴こうとした記者の奮闘を描いた実話に基づく作品です。

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 9・11の悲劇の2年後、ブッシュ大統領が強行したのがバグダッド爆撃に始まるイラク侵攻。その口実となったのが、イラクが保有しているとされた「大量破壊兵器」でした。主要メディアが、この戦争を支持する中で、ナイト・リッダー社の記者たちは、「大量破壊兵器」の有無ではなく、政府方針が「イラク侵攻」ありきだった事実をつかみ、報道に踏み切ります。

 時代が変わってトランプ政権となった今、米国では政府によるメディア攻撃は、ブッシュ政権時代以上に強まっているように思います。 もちろん、極東のこの国も。北方領土返還をめぐり「戦争をしないとどうしようもなくないか」などと口走る国会議員が存在するのは恐るべきことですが、このような映画が好評を得ているのは救いのように思えます。

2019年4月29日 (月)

映画「アレッポ 最後の男たち」

 ロシア軍による空爆に曝されるシリア市民を撮影したドキュメンタリー映画「アレッポ最後の男たち」(監督・フェラス・ハヤード、104分)を渋谷のシアター・イメージフォーラムで観てきました。

 無差別爆撃により、コンクリートの中に生き埋めになるのは小さな子どもを含む一般の市民たち。作品は自らの命を顧みずに、その救出作業を行う男性を中心に描いています。

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 米軍による空爆下のバグダッドを撮影した綿井健陽さんの「Little Birds~イラク 戦火の家族たち」を観たときにも感じましたが、どんなに優れた平和論も、犠牲となる市民を撮影した一篇の映像作品にはかなわない。本作でも、それを強く感じさせられました。空爆の主がアメリカであろうと、ロシアであろうと、そこに正義などあるはずがない。

 イメージフォーラムは、先日封切りになった慰安婦をテーマにした「主戦場」の行列ができていましたが、「アレッポ」も満席でした。GWに遠出しない関東の方には是非お勧めです。

2019年3月22日 (金)

映画「新宿タイガー」

 新宿へ出掛けた時に、虎のお面とピンクのかつらをかぶり、ド派手な花柄の衣装を着て新聞配達をしている奇怪な人物を目撃したことはありませんか?


 この姿で40年以上、新宿を闊歩して来た男性を主人公にしたドキュメンタリー映画「新宿タイガー」が22日からテアトル新宿で公開されます。監督はフリーランスのTVディレクターとしても活躍する佐藤慶紀氏(44)。

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 東京・中野区で育った私自身が新宿タイガーを見て度肝を抜かれたのは80年代後半、高校生の頃でした。正体の原田吉郎さん(71)は、これまでに何度かメディアの取材は受けていたので、素顔は知っていましたが、情報は断片的でした。何のためにこんな格好をしているのか。単に目立ちたがり屋なのか。それとも思想があるのだろうか。ついにドキュメンタリー映画ができると聞き、長年の謎が解けるのではないかという期待を持って試写会に行って来ました。


 その素顔は美女と酒と映画を愛する純粋な人物。交流のある美女たちと日替わりでゴールデン街でグラスを傾け、語らう背中から伝わって来るのは、人生をどこまでも楽しもうという自由な精神です。
 原田さんは1948年、長野県出身。67年に上京して大学に入学しますが、69年に中退。タイガーのお面をかぶり始めたのは72年頃。75年に新聞配達を始め、44年経った今も続けています。


 知りたいのは、お面をかぶり始めた理由です。映画の中での原田さんの答えは、神社のお祭りで売られている虎のお面を見たときに「オレ、新宿の虎になる」と思ったとのこと。でもどうして? 「直感に理由はない」。これ以上多くは語ろうとはしませんでした。


 原田さんが上京した60年代後半は、新宿が若者文化の中心地でした。ベ平連のフォークゲリラが西口広場に集い、68年には過激派と機動隊が衝突する新宿騒乱が発生。そんな中で、新宿の街づくりの中心人物だった紀伊國屋書店の創業者・田辺茂一氏が「新宿メディアポリス宣言」を発表しました。メディアと一体化して新しい街づくりをしようという構想は、まもなくスタジオアルタを生み出し、フォークゲリラは姿を消していきました。


 ただし、原田さんは学生運動には関わっていないと言います。この頃、原田さんが夢中になっていたのは映画。とりわけ当時大ヒットしていた「唐獅子牡丹」には夢中になったとのことです。男は黙ってサッポロビール。原田さんは、黙って「虎」になることを選んだのかもしれません。

 40年以上の歳月が経ち、変わり続ける新宿で、変わらずに「虎」であり続けるのは、なぜなのだろうか。映画を見終わった後は、ずっと問いかけられているような気持ちになりました。

2018年12月 3日 (月)

ドキュメンタリー映画「選挙に出たい」

 中国から日本に帰化して2015年の統一地方選で、新宿区議選に出馬した、歌舞伎町案内人・李小牧氏(58)の選挙活動を密着取材したドキュメンタリー映画「選挙に出たい」が12月1日から東京・中野区のポレポレ東中野で公開されています。ぎこちなさが残る日本語で街頭演説する李氏は、批判や罵声を浴びるのを覚悟で、なぜ無謀とも言える挑戦をしたのか。多様化が進む日本社会の民主主義のあり方を独自の視点から見つめた作品です。

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 私自身も15年に区議選に出馬した李小牧さんを取材したのですが、本作の中国人女性監督のケイヒさんとは、その時に知り合いました。撮影から発表まで3年かかったわけですが、長年心血を注いだにふさわしい素晴らしいドキュメンタリーに仕上がっています。

 ベストセラーになった「歌舞伎町案内人」の著者として知られる李氏は、出馬の2か月前に日本国籍を取得。民主党(当時)の推薦を得て、無所属で新宿区議選に挑みました。ですが、言葉の壁や習慣の壁は、簡単に克服できるものではありませんでした。映画では李氏本人も予想していたとおりの悪戦苦闘ぶりが、克明に撮影されています。

 新宿区内での街頭演説終了後、休憩のために入った喫茶店で「よろしくお願いします」と頭を下げる李氏に、高齢の女性店主は遠慮ない言葉を浴びせかけます。「外国から来た2世、3世なら分かるけど1世は絶対にダメ。帰化したばかりでしょ。政治家としてちょっと信用できないわ」。それでも負けずに街頭活動する李氏。「帰れ!」と罵声を浴びせられることも。他の候補者と小競り合う場面もあります。

 私が取材した時、李氏は当時出馬の理由をこう説明していました。「これこそが自由です。褒められるばかりが民主主義ではない。中国では自由に立候補することさえできない。もし、外国から来た私が当選できたのならば日本は本当の民主主義の国です」。日本在住のケイヒ監督は、そんな李氏に興味を持ち、カメラを回し始めたのでした。

 「李さんが面白い人だったので、撮ればストーリーができると思いました。初めて会ったその日に撮影を始めました。言い間違える日本語は直してあげたいぐらいで、その時も無所属のことを『ムシュゾク』と言ってましたが…(笑)」

 撮影後、1年かけて編集したケイヒ監督は、作品を山形国際ドキュメンタリー映画祭に出展。外国からの移住者が急増しつつある日本社会で暮らす日本人に対して「他者」との共存のあり方を問いかける作品は高く評価され、山形での上映では満席となり、10人以上が立ち見となりまた。

 「映画は楽しみながら観ていただきたいです。(作品に込められたテーマは)外国人の移民問題や若者の政治への関心などいろいろありますが、どこかに自分にとって関心があるポイントになるところがあったら、そこを考えて頂ければ」

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 ケイヒ監督は中国・河北省出身。中国の大学で日本語を専攻し、ジャーナリストを志して2005年に来日しました。北大大学院の国際広報メディア・観光学院で学んでいる時に、中国の三峡ダムの建設の背景や立ち退きの現実を描いたドキュメンタリー映画「長江にいきる 秉愛(ビンアイ)の物語」(馮艶=フォン・イェン=監督)を鑑賞し、衝撃を受けたそうです。

 「自分は映像の道が好きかも、と。卒業制作でもドキュメンタリーを作りました」。メディア修士号取得後は、番組制作会社のテムジンに入社。アシスタントディレクターをやりながらドキュメンタリー作りを学び、さらに13年には英国の大学院に留学して映像制作を学んだ。日本に戻り、そろそろ「初監督作品を」というタイミングで出会った被写体が、出馬を目指している李氏でした。その選挙の結果は落選。現実はやはり厳しいものでした。

 「撮影を続けながら李さんの変化はカメラを通して見えてきました。選挙の過程や結果よりも李さんが選挙活動を通じて、世の中に提示した問題が大事だったのではないか、と撮り終えた今は思っています」

2018年10月18日 (木)

映画「僕の帰る場所」

 ポレポレ東中野で日本・ミャンマーの合作映画「僕の帰る場所」(藤元明緒監督)を観てきました。東京在住のミャンマー人家族。夫は入国管理法違反で検挙されてしまい、妻が幼い子2人を食べさせています。妻は日本での生活に不安を感じ、子供2人を連れてミャンマーへ帰るのですが、子供たちにとっては、まさにそこは言葉も通じない「外国」。在日外国人家族を取り巻く社会背景を描いた秀作でした。

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 実話に基づいて、実際のミャンマー人家族が役者として再現した作品なのですが、ドキュメンタリー映画を観ているような錯覚に陥りました。というのは、彼らが演じているというにはあまりにナチュラルで、特に幼い子供たちは演技しているように思えなかったからです。

 上映後にプロデューサーの渡邉一孝さんにお聞きしたら、モデルになった一家は、本当に夫(父親)と離れて生活しているらしく、子供たちは実生活とダブらせるようにうまく仕向けていたとのこと。つまり、子供たちは演じているのではなく、素の状態のままだったそうで、その点にとても驚かされました。

https://passage-of-life.com/

甲斐毅彦

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