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映画

2016年7月 3日 (日)

映画「日本で一番悪い奴ら」

 2002年7月、北海道警の警部が、覚醒剤取締法違反と銃砲刀剣類所持取締法違反で逮捕された日本警察史上、最大の不祥事「稲葉事件」を題材にした綾野剛主演の映画「日本で一番悪い奴ら」(白石和彌監督)を新宿バルト9で観て来ました。

 主人公は大学柔道部で活躍して道警に拝命し、機動捜査隊に配属された諸星(綾野剛)。先輩刑事から「犯人を挙げて点数を稼げ」と諭された諸星は、裏社会に入り込みS(スパイ)を得ることで、目覚しい拳銃摘発の成果を挙げていきます。しかし、上司からの無理な要請に応えるため、暴力団との癒着、違法捜査、覚醒剤密売へと手を染め、ドツボにはまっていきます。

 諸星のモデルとなったのは、元道警警部で、本作の原作「恥さらし」の著者、稲葉圭昭さん。映画化する上で「味付け」はされていると思いますが、事実に基づいて描かれています。主演の綾野剛は、1970年代後半の探偵ドラマ「俺たちは天使だ!」に主演していた沖雅也をきな臭くしたような感じで、味わい深い好演を見せています。 

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 私は2011年に「恥さらし」が発売されたときに札幌で稲葉さんを取材。直接ご本人から壮絶な物語の背景をお聞きしました。まさに事実は小説より奇なり。これまで見てきた刑事ドラマが安っぽく感じるほどの話を聞き、衝撃を受けました。これまでにも警察の実態を知るためにはまずノンフィクション作品としての「恥さらし」を読むべきだと勧めてきましたが、まさか5年後にエンターティメント映画になるとは想像していませんでした。

 稲葉さんも映画化には全面協力されて、綾野剛さんともお会いしたそうです。不覚にも私は気がつかなかったのですが、実は稲葉さんご本人も映画の中で一瞬だけ出演されています。

 上映後には白石監督と高級クラブのホステス役を演じた矢吹春菜さんのトークショーがありました。綾野さんとの大胆な濡れ場があるのですが、白石監督によればトークショーの中で台本にはセックスシーンはなかったとのこと。「綾野君とどうするか話していたら『俺、セックスしたい』と」。上映後の暴露話は映画に劣らぬほどの衝撃でした。

http://www.nichiwaru.com/

2016年5月 9日 (月)

「カルテル・ランド」

 渋谷のシアターイメージフォーラムでメキシコ麻薬戦争を取材したドキュメンタリー映画「カルテル・ランド」を鑑賞。月並みな言い方ですが、これは衝撃の作品です。本当にこれがドキュメンタリーなのかと疑ってしまうほどの激しい銃撃戦。これぞ危険地取材です。撮影した監督のマシュー・ハイネマン氏に拍手を送りたいと思います。 http://cartelland-movie.com/

 メキシコ麻薬戦争とは、無法地帯の下、麻薬カルテルの縄張り争いや、政府との武力紛争を言います。この10年で12万人以上の死者が出ているとのことなので「戦争」と言っても何かの比喩ではありません。まさに戦争ドキュメンタリー映画です。

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  監督はこの麻薬戦争の最前線であるメキシコ、ミチョアカン州に乗り込み、麻薬を製造している「テンプル騎士団」のメンバー、自警団、翻弄される市井の人々、腐敗した警察・政府を直接取材しています。一般市民を巻き込んでの殺戮が横行。警察などあてにできるわけがなく、あるインテリの町医者が市民たちとともに自警団を結成します。ドキュメンタリーはこの男性医師を中心に展開するのですが、無法地帯の現実とはかくもむごいのか、と唖然としてしまいます。正義とは一体どこにあるのか。深い余韻に浸ってしまいました。ドキュメンタリー映画が好きな方には絶対にお勧めです。

2016年4月28日 (木)

「オマールの壁」

  4月16日から上映されているパレスチナ映画「オマールの壁」(ハニ・アブ・アサド監督)を渋谷アップリンクで観てきました。  パレスチナのパン職人の青年オマールと分離壁の向こう側に住む美女ナディアとの「パレスチナ版ロミオとジュリエット」。占領下での暮らしを打開しようと行動に出たオマールは、イスラエル兵殺害容疑で捕えられ、終身刑かスパイになるかの選択を迫られるというストーリーです。もちろんフィクションですが、今のパレスチナを生きる若者たちの描き方にリアリティーを感じられました。100%パレスチナ資本で作製されたとのこと。主人公の心理描写も見事で、完成度の高い作品でした。複雑なパレスチナ問題について考えるきっかけとなるかもしれません。お勧めです。

http://www.uplink.co.jp/omar/

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2016年4月27日 (水)

山河ノスタルジア

  渋谷のル・シネマで中・日・仏の合作映画「山河ノスタルジア」(ジャ・ジャンクー監督)を観ました。

 急速に経済が発展し、格差が生まれ、拝金主義が蔓延る中国の現在を山西省のある一家を通じて描いた秀作でした。 過去(1999年)、現在(2014年)、未来(2025年)の三部構成。

 小学校教師の女性タオは、炭鉱労働者と実業家2人の男性の求愛を受け、実業家と結婚し、息子をもうけるが、離婚。タオは息子の将来を思って財力がある前夫に息子を渡す。離れ離れになた息子とは父親の葬儀で一度だけ再会を果たす。そして2025年。前夫に連れられ、オーストラリアに移住した息子は英語を話し、中国語は忘れてしまっていた。激流にもまれる中国で暮らす人々にとっての家族、アイデンティティー、郷愁を見事に描いているように思えました。世界中どこへ行っても出会う中華民族。彼らはいったい何を考えて暮らしているのか、と素朴な疑問を感じることが今までもありましたが、この作品はひとつの視点を示していると思います。 http://www.bitters.co.jp/sanga/

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2016年4月22日 (金)

映画「スポットライト 世紀のスクープ」

  4月15日に公開された米映画「スポットライト 世紀のスクープ」を観てきました。
 2002年1月、ボストンの地方紙がものにした一大スクープ(2003年度のピュリツァー賞)を題材とした作品です。


 ボストンとその周辺で連続して起きていたカトリック司祭による児童性的虐待。4人の取材班が、権威を頼みに教会が組織的に隠蔽していたことを暴きだすストーリーです。
当事者から話を聞きだす困難さやウラが取れてパッと視界が開けるような展開にはリアリティーが十分にあり、新聞の存在感を感じさせる作品でした。
 ただし、私は新聞記者の原動力はあくまでも好奇心であり、必ずしも正義ではない(正義ならそれにこしたことはないけど)と思っています。映画だけに大分かっこよく描かれているなとは思いましたが、お勧めできる映画でした。

http://spotlight-scoop.com/

2016年3月13日 (日)

袴田巌 夢の間の世の中

 死刑囚として48年の獄中生活を経て、2014年3月27日に再審が決定し、即日釈放された袴田巌さんを追ったドキュメンタリー映画「夢の間の世の中」(金聖雄監督)をポレポレ東中野で観て来ました。

 「袴田事件」は長らく私にとっても関心事だったので、再審決定後に取材しましたが、長い月日をかけてありのままの袴田さんを映した本作品を観て、今まで見えていなかったものが見えてきました。途轍もなく長い獄中生活の中で袴田さんの頭の中には現実ではないもう一つの世界が出来上がってしまった。失われた時間は戻らず、きれい事だけでは語れない現実。是非観るベき作品だと思います。そして、袴田さんには、毅然として闘い抜いた姉の秀子さんという存在がついていたことが奇跡のようにも感じられます。

http://www.hakamada-movie.com/

2016年1月18日 (月)

映画「ヤクザと憲法」を観て

といポレポレ東中野で上映中のドキュメンタリー映画「ヤクザと憲法」を観てきました。これはもうとてつもない傑作です。とにかく観るべき作品です。

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 ドキュメンタリーファンはもちろん、ヤクザって本当はどんな人たち?という興味本位、怖いもの見たさの方にもお勧め。本物のヤクザさんの事務所に入り込んで彼らの日常を撮影した類例のない作品です。監督をはじめとする製作者の勇気、実行力に敬服するとともにカメラ取材を受け入れた「二代目東組」の皆様にも拍手を送りたいと思います(とは言いながらも実際に接してみたいとはやはり思わないわけですが・・・)

 1992年に暴力団対策法が施行されて以来、ヤクザ人口は減少の一途をたどり、彼らにとっては「シノギ」も難しくなっています。そんな背景については山口組を長年取材している溝口敦さんのノンフィクションなどを通じて知っていたのですが、その実態を映像で見るとなると、やはりすさまじいものを感じさせられます。...  憲法で謳われている「基本的人権の尊重」には「ヤクザは別」などとどこにも書いていません。彼らの実態、置かれている立場を通じて日本社会の見えにくい風景が見えてくると思います。繰り返しますが、是非お勧めの作品です。

http://www.893-kenpou.com/

2015年12月 4日 (金)

「日本で一番悪い奴ら」

 2002年7月、北海道警の敏腕刑事、稲葉圭昭警部が、覚せい剤取締法違反容疑などで逮捕されたことをきっかけに道警の「やらせ捜査」や「銃刀法違反偽証」などの不祥事が明るみに出た「稲葉事件」が映画化されることが発表されました。

   映画「日本一番悪い奴ら」(白石和彌監督)。来年6月25日から全国ロードショーとなります。壮絶な事件の主人公となった稲葉刑事役を演じるのは、綾野剛。

http://www.nichiwaru.com/

  稲葉さんは2011年にノンフィクション回顧録「北海道警 悪徳刑事の告白 恥さらし」(講談社)を出版されたときに札幌でインタビューさせて頂きました。...    銃器対策のエースと呼ばれた敏腕刑事が、ノルマに追われる中で数多くの違法捜査に手を染め、警察組織に裏切られた挙句、覚せい剤に溺れ、転落していくまでのすべてが描かれています。

 単なる暴露本ではなく、絶望的に腐敗している警察組織への警鐘の書ともなっています。まずは是非原作を読んでみてください。私も映画を心から楽しみにしています。

 稲葉さんは現在、探偵事務所を開業してご活躍中です。私が観る限り、ご本人は綾野剛よりもイケメンですよ。

  

2015年5月24日 (日)

「国際市場で逢いましょう」

16日に公開された韓国映画「国際市場で逢いましょう」(ユン・ジェギュン監督)を早速観て来ました。期待を裏切らない素晴らしい作品。これはお勧めできます。

http://kokusaiichiba.jp/

 朝鮮戦争(1950~53)の避難民によって形成された釜山の国際市場で露店を営む一家の物語。離散家族となり、時代に翻ろうされる一家を描きながら朝鮮戦争、外貨獲得のために西ドイツ炭鉱への集団派遣、ベトナム戦争、そして離散家族との再会と韓国現代史を辿っていきます。ストーリーはフィクションとはいえ、韓国現代史の一大叙事詩と言えるでしょう。韓国で歴代2位の興行収入を記録したというのも納得できます。

 もう一つ1999年に「シュリ」で主演したキム・ユンジンが16年も経っているのにほとんど年をとっていないように見えたのが驚き。本編ではうら若い女性時代から老女となるまでを見事に演じきっています。

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2015年3月29日 (日)

「縄文号とパクール号の航海」

ポレポレ東中野で上映中のドキュメンタリー「縄文号とパクール号の航海(監督・水本博之)を観てきました。人類の足跡を辿る「グレートジャーニー」で知られる探検家、関野吉晴さんがインドネシア人漁師らとともにインドネシアのスラウェシ島から沖縄の石垣島までの4700キロを手造りの丸木舟で旅した記録を収めた作品です。

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 映画は九十九里浜で砂鉄を集め、舟を造るための工具を造るところから始まります。もちろん丸木舟にはエンジンなどはなく、動力は風が頼り。コンパスもなく航路は島影と星を頼りに決めていきます。
 古代人がやっていたわけだから現代人でもできるだろう、と言ってしまえば、そうかもしれませんが、実際にはそんなに簡単にいくはずがありません。まさに「グレートジャーニー」と呼ぶしかないこんな旅を実際にやってしまう人がいるというだけで感動してしまいます。そして日々、時間に追われて生活している自分が、いかに心の豊かさを失いつつあるか、ということをふと考えさせられました。会場には劇場には関野さん自身もお見えになり、あわせてトークショーも行われました。旅好き、探検好きは必見のお勧め映画です。

甲斐毅彦

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