ブログ報知

スポーツ報知ブログ一覧

« 「崖の上のポニョ」を見て(中) | メイン | 「鳥の巣」という映画を見て »

2008年7月26日 (土)

「崖の上のポニョ」を見て(下)

 公開から1週間。動員も好調とのこと。
製作に携わった関係者は、ひとまずホッとされたでしょう。
大ヒットに求められるのは何より動員の持久力ですから、持続具合が気になるところです。
実際に見に行った知人は、劇場内で子供たちが目を輝かせながら声に出して反応する光景が新鮮だった、と話していました。

 確かにマスコミ試写でこのような反応は、見られません。
もっともポニョは腕組みしながら、見るものではないでしょうが。
子供たちを楽しませながら、大人にも迎合することなく作られたはずです。
登場人物の描き方で、個人的に気に入っているのは「女は強し」が随所に見られることです。

 念願の人間界に来たポニョを助ける5歳の少年・宗介の一家は母をリサ、父を耕一と呼びます。
呼び捨てが教育的に良いのかどうか、など少し物議をかもしているようですが、私は逆にうらやましく思います。
あのファミリーは年齢に関係なく、それぞれ一個人として互いを尊重し合っているからです。

 人面魚みたいな怪しい生き物を突然子供が拾ってきたというのに、母親は「気持ち悪い! 捨てなさい!」とも言わず、息子の気持ちに任せ、保育園に連れていっても特に反対しない。
立派な母だと思います。
 言葉を発しなくても、宗介の表情やその一挙一動で性格がよく伝わってきます。
頭の形がよく似ていると思うのですが、これは宮崎駿監督の分身も含んでいるのではないでしょうか。

 まだ幼い宗介は、リサの心を驚くくらい理解しています。
航海から戻るはずの夫の帰宅が伸び、ぶんむくれている母のショックを大人以上に分かっています。
本当なら、母親以上にショックなのは宗介かもしれないのに、5歳の少年は母に包容力ある優しさを見せます。
この強固な信頼関係があるから、嵐の中でもリサは息子を置いたまま、高齢者が暮らす「ひまわりの家」に向かうのです。まだ子供だから、という言葉はあてはまりません。

 その前に出てくる、いったん帰宅する途中の暴風雨の場面。
強風にあおられ、宗介が海に投げ飛ばされた瞬間、リサは反射的に息子の腕をギュッとつかみます。
まるでCMにあった「ファイト、一発!」みたいな。相当な腕力を必要とする動きです。
実はリサの肝っ玉母さんぶりはまだまだありますので、ゆっくり観察してみてください。

 宗介が通う保育園でも「女は強し」です。
宗介は「クミコちゃん」など必ずちゃんを付けるのに、女の子たちは、みんな「そーすけ、そーすけ」と呼び捨て。ポニョもそう呼びます。
保育園に着き、女の子から遊びに誘われても、宗介はポニョを守ることで頭はいっぱい。
話しかけてくる人々に「いま忙しいんだ」を連発します。
本人は真剣そのものですが、幼い子供がこの言葉を放つことの、おかしみがあります。

 封切り前、ポニョは自分勝手で「わがまま」とも紹介されました。
私はそう思えません。
親しみも愛情もストレートにぶつけてくる。純粋な頼もしさを持ち合わせています。
宗介が思わず面食らうチュ~のシーンなどは特にそうでしょう。
互いに一目惚れで相思相愛になり、喜怒哀楽と辛苦を冒険の過程で共有します。
立派なラブストーリーでもあるのです。

 宗介は人一倍シャイな一面があります。
でもポニョに「ぼくが守ってあげるからね」と言いながら、一度約束破ってしまった悔恨が、彼のその後を大きく変えていきます。

 かえるの卵のように無数に出てくる「ポニョのいもうと達」の存在も忘れてはなりません。
なぜか全員が女の子というのも強烈!ですね。
この妹たちが姉の気持ちをものすごく理解していて、体は小さいのに頼もしい。
宗介とポニョが再会を果たす時、ポニョは荒波をダッシュしていますが、
波のひとつひとつは魔法を使った「いもうと達」の化身なんですね。
涙ぐましい姉妹愛も描かれているのです。

 少し話は変わりますが、今作をつくる過程で宮崎駿監督はワーグナーの「ワルキューレ」全曲盤を聞いていたといいます。
理由は「アドレナリンが出るから」だそうです。
私も巨匠をまねてみようと、奮発して7200円のCD4枚組完全盤を買い求め、
いまそれを聴きながらこれを書いています。
はい?アドレナリンですか?
うーん、チョロチョロと出ている気がしないでもありませんが、まだ何とも…。
凡人の感性にはあまり効果がないのかも…。

 幼い子供たちの集中力を配慮して、エンドロールが非常に短いのも特徴です。
あっという間です。
でも無数に携わった人の名前が並んでいます。
よく見てみると名前の頭にその人にちなんだ絵が描かれてあります。
見終わって余力のある人は知ってる名前を見つけたら、
その人にどんな絵があるかチェックしてみてください。

私はジブリを仕切るプロデューサー鈴木敏夫氏の名前に、がま口財布が描かれてたのが、あまりにも現実的でシニカルで、妙に受けてしまったのでした。

トラックバック

このページのトラックバックURL:
http://bb.lekumo.jp/t/trackback/235990/14143805

このページへのトラックバック一覧 「崖の上のポニョ」を見て(下):

コメント

ワルキューレ・・・うん!「急き立てられる」曲だす。
この曲に追っかけられるパニックディスオーダーの人が書いた本を読んだことがあります。発作のたびにこの曲が大音響で聞こえてくるそうな・・・。すごい曲なのですね。
ぽにょ、まだ見られてない。うちのねえさんの文章を読むととってもとっても見たくなりますよ。細部までとくとみるぞ!

観てきました。ポニョ。ねえさんの言うとおり、いろんな示唆を含んだ映画で、見逃せないシーンの連続でした。社会的な問題がもりだくさんすぎて、ポニョのハム好きにまでなにか意味があるのかと思ってしまった。食品添加物問題とか・・・。
まず、とても驚いたのが、主人が育った広島の福山の港、あたしが育った呉の海にあまりにも酷似した風景!思えばあたしたちが幼少の折から、すでにソフランの容器は海にうかんでおりました。それでも悲しいほど美しい日本の海。それからやはり「女性」ですね。保育園でも、老人ホームでも、海の中でも、はっきりとした「個」を持つ女性たち。なにしろ、でかい!ポニョの母!天海ゆうきさんの声って女神の声だったのですね!あの左右対称の美しい顔にあの声があまりにもぴったりだったことに感激しました。

コメントを投稿

コメントは記事の投稿者が承認するまで表示されません。

見出し、記事、写真の無断転載を禁じます。Copyright © The Hochi Shimbun.