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2011年4月23日 (土)

田中好子さんの訃報で

 田中好子さんの急死は、その一報に多くの人が「えっ!」と思わず声を出してしまうほどの衝撃だった。健康そうなイメージを与え続けていただけに、人知れず20年間もがんと闘っていたことにも驚かされた。心身ともにきつい中でも仕事をこなし、作品の役を演じながら、その一方で病を悟られまいと振る舞ったであろう女優魂に頭が下がる思いだ。

 残念ながら一度も取材する機会がなかった。キャンディーズ時代、小学生だった私はどちらかと言えば伊藤蘭が好きだった。スーちゃんは、どこか寂しそうな顔をしているように見えた。しかし、女優に転身してからの印象は違った。

 田中さんの映画で一番心に残っているのは「鏡の女たち」という吉田喜重監督の作品で、2002年にカンヌ映画祭でも上映された。背景として広島の原爆をテーマを扱いながら、田中さんは岡田茉莉子、一色紗英と血縁関係にあると思われる世代の異なる3人の女性が、ある過去に向かって時間の旅をするような内容だった。鏡を使ったショッキングなラストやこわくなるくらいの静ひつさに包まれた作品だった。

 田中さんは母子手帳を持って20年以上も失踪し、記憶を失って戻ってくるという難しい役どころ。女優としてのすごさを再確認した。この役に限らず、田中さんはいつも、セリフの行間の心理描写に秀でていて、そこに内包する力が強かった。そのためセリフがよりリアリティと力を持って伝わってきた。

 訃報に寂しさを覚えながら、いま強く思うのは映画やドラマの世界が、田中好子という貴重な女優を失ってしまった大きさのことである。

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